アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
【那須】 箱庭山岳は絶景の嵐 後編
2020年12月11日みなさま、こんにちは。 日光国立公園 那須管理官事務所の善養寺聡彦です。
前回は那須の最も基本的な登山ルート、
ロープウェイ山頂駅発の茶臼岳・朝日岳登頂 の、前半を紹介しました。
(ロープウェイ山頂駅 - 茶臼岳山頂 - 峰の茶屋避難小屋 - 恵比須大黒)
今回は、《 恵比須大黒 - 朝日岳山頂 - 峰の茶屋避難小屋
- 無間地獄 - 牛ヶ首 - ロープウェイ山頂駅 》
の区間を紹介します。
※ 写真は様々な季節のものを使用しています。
峰の茶屋避難小屋から朝日岳山頂に向かう途中は岩場が多く、注意が必要です。鎖場もあって、慣れない人にはやや不安かもしれませんが、慌てずにゆっくり進めば大丈夫です。
両手が十分使えるように身支度し、足回りなど装備はきちんと調えてください。
いくつかの岩場を渡るとやがて「朝日の肩」に出ます。
朝日岳頂上はもうすぐです。
【 朝日の肩から朝日岳を望む 】
◎ 朝日岳は見る場所によって様々に姿を変えます。
いよいよ朝日岳山頂。ここに立つと、
北は 那須連山を望み、
西は 裏那須の山々、
南から東に 那須野ヶ原が広がり、
そして南隣には、
【 茶臼岳 那須の盟主です 】
左手には広大な那須野ヶ原が広がっています。
ここから茶臼岳を見ると、溶岩ドームであることがよく分かります。
さて朝日岳を後にして、峰の茶屋避難小屋に戻り、そこから再び茶臼岳周回線に入って茶臼岳を一周します。
【 茶臼岳の西側はトラバース道 】
茶臼岳の西側はとても崩れやすく、大雨の後は登山道のどこか数カ所様子が変わってしまいます。細かなメンテナンスの必要な歩道ですが、多くのボランティアの方々のお力で支えられています。
そんな厳しい環境の中でも、ガンコウランやウラジロタデ、ミヤマニンジンなどが生育し、季節ごとに彩り豊かな装飾をしてくれます。
【 ミヤマニンジン 9月中旬 】
岩場に白い花が咲き、同時に果実が赤く色づいて、とても目を引きます。
※那須も含めた日光地域ではシラネニンジンが有名だと思いますが、茶臼岳周辺には、シラネニンジンによく似たミヤマニンジンもあります。ミヤマニンジンは花の白と果実の赤のコントラストが特徴のようで、私はとても気に入っています。是非、逢いに来てください。
トラバース道を進んで行くと、何やら白い煙が上がっているのが見えてきます。1881年(明治14年)の小噴火で形成された無間火口から上がる噴気です。
【 無間地獄(無間火口) 】
火口形成以来、耐えることなく噴気をあげていて、その後も降灰を伴う微噴火を繰り返しています。(1963年の微噴火以降は、噴火は観測されていません。)
無間地獄に近づくと、ゴー、ゴッゴーという音が聞こえてきます。強い硫黄の臭いもしてきます。まさに自分が活火山の上に身を置いていることを実感します。噴気は、茶臼岳のあちこちで見られます。
無間地獄を過ぎると、右手下に平らな所が広がっているのが見えてきます。姥ヶ平です。ここは紅葉の名所として有名です。
【 姥ヶ平 10月初旬 】
紅葉の時期には人の渋滞が発生します。ロープウェイの駐車場への道も渋滞しますので、ご注意ください。
姥ヶ坂の入り口を過ぎるとすぐに牛ヶ首に着きます。ここはミネザクラの群落のある日の出平への分岐になりますが、今回はそちらへは行かず、ロープウェイ山頂駅方向に向かいます。
やや起伏のあるトラバース道を進みます。左手には茶臼岳の溶岩ドームが様々な様相に変化し、右手には那須野ヶ原が次第に広がって見えてきます。
この道の途中で仰ぎ見る茶臼岳のドーム、この姿に私は畏怖の念を感じます。
山の、自然の経歴の前にあって、人の知識・経験の至らなさ感じる場です。
トラバース道はやがて茶臼岳山頂に向かう歩道に合流して周回路一周が終わります。ここからロープウェイ山頂駅に戻っておよそ半日の登山終了です。
どうでしょう。絶景でお腹いっぱいになりましたか?