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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

仙石原湿原のニホンジカ対策

2021年04月27日
箱根 高木俊哉

AR日記をご覧の皆さま、こんにちは。

箱根事務所の高木です。

最近は暖かい日が続いています。

動物達もすでに活動を始めていますが、事務所の周りではこんな光景が広がっています。

このめちゃめちゃに掘り返したような跡はイノシシでしょう。

穴の深さは30cm以上もあり、他には木の根が浮いていたり歩道に土が溢れ出たりしている箇所もありました。

ビジターセンターも隣接していて昼間は人の営みがあるこの場所でも、こんなにも色濃く痕跡があることを考えると少し怖く感じます(ビジターセンターではイノシシとの遭遇に対して注意喚起を行っています)。

さて、動物の問題と言えば、箱根地域では仙石原湿原を守るために植生保護柵が設置されています。

シカなどによる採食や踏みつけによって、トキソウやモウセンゴケなど希少な湿原性植物を絶やしてしまわない様に、湿原を管理するための金網が仙石原の植生保護柵=シカ柵なのです。

現在は一部区間で未設置となっていますが、今後は柵を増設して湿原を一周させ完全に内部への侵入を防ぐものとする計画になっています。

このシカ柵の点検と補修を先日実施しましたので、ここでお話をさせて頂きます。

まずは現在のシカ柵の様子から。

支柱を軸として金網のパネルを連結させてあり、また柵下部には(写真では確認できませんが)スカートの様に斜めに張ったスカート部があります(スカート部によって水平面積を増やすことで、シカを寄せ付けにくくするという効果もあるようです)。

▲柵の様子(柵奥側が仙石原湿原内)

写真中央の柵が大きくへこんでしまっています。

これは恐らくシカによるアタック(衝突)が原因と考えられます。

好んでアタックをしているわけでは無いでしょうが、箱根地域で増えつつあるシカも自然の中で移動をするためにこの経路は避けて通れないのかもしれません。

それを裏付ける様に、付近の山と行き来する様子がモニタリング用に設置しているセンサーカメラで撮影されています。

▲仙石原湿原内で撮影されたニホンジカ

こちらは今回の点検で最も破損のひどかった金網を上から撮影した写真です。

衝撃で柵の針金の溶接が外れてしまっています。

1回のアタックでこのようになったわけでは無いと思いますが、その衝撃の大きさを物語っています。

このような破損は、溶接が外れて防護の機能を失った金網の隙間から動物が侵入することに繋がってしまいます。

そのため、今回は新しく溶接ではなく針金をクルクルと回し、撚った様に作られている金網を試験的に設置してみました。効果のほどはまだわかりませんが、柵そのものの破損が少なくなるよう期待をしています。

▲撚って合わされた針金

ところ変わって、南アルプス国立公園内(北岳や仙丈ヶ岳など一部の地域)では、ポリエチレン素材のネットを使用している様です(とは言っても、ステンレス線も編み込まれているので噛みちぎることが出来ない対策を取っています!)。

一口にシカ柵と言っても、設置の方法や素材等色々なものがあり、状況に合わせたシカ柵を作ることが大事だと言えそうです。

(関連記事はこちら:南アルプスとニホンジカ問題 その3