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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

警戒心をもって

2021年07月15日
奥多摩 小林真弥美

みなさん、こんにちは。

奥多摩自然保護官事務所の小林です。

部屋に入ってきたハクセキレイの幼鳥を逃がした日の帰りに、

スズメの幼鳥の亡骸を拾った小林です。

今回は、最近の巡視で出会った秩父多摩甲斐国立公園の住人、5名を紹介したいと思います!

1番目の住人「アナグマ」

巡視の帰り道にばったり会いました。

秩父多摩甲斐国立公園には、本州に生息する哺乳類の代表的な種がほぼ生息しています。

その中でも奥多摩には44種類が生息しているとされ、本州の生息数(59種)の約75%だそうです!

掘った穴にした、ほやほやのフンは見たことがあったのですが、

アナグマ本人を見たのは初めてでした。愛くるしいですよね。

しばらく離れて待っていたのですが、逃げ込んだ岩場からなかなか出てこないので様子を見てみると・・

寝てるーーーーー!!

近くには土を掘り起こした跡が長く続いていたので、お腹いっぱいで満足しちゃったんでしょうか?

それにしても警戒心がなさすきる!逆に心配!

2番目の住人「キクイタダキ」

亜高山帯の針葉樹林に生息する、日本で最小の鳥です。

頭のてっぺんが黄色いので、「菊戴」と書きます。そのまま・・

普段は木の上の方から鳴き声がするだけで、姿がなかなか見られないのですが、

巣作りの時期は目線の高さくらいまで降りてきてくれて、

苔や蜘蛛の巣などを必死に集めているので見ることが出来ました!!

3番目の住人「ヒガラ」

頭を振り乱して紐をつついて、近づいても全然逃げず、巣材を作り出していました。

巣材としては確かに丈夫ですよね。賢い。

こちらも亜高山帯の針葉樹林に多い鳥ちゃんです。

亜高山帯。キクイタダキの時にも出てきた言葉ですね。

※亜高山とは、(本州では)1700m~2500mの間の植物の分布帯のこと。

秩父多摩甲斐国立公園では、主に主稜線上で亜高山性針葉樹林が広く分布しているので、

鳥たちの種類も、亜高山帯を好む種類が多くなるんですね。

4番目の住人「エゾハルゼミ」

ん?植物?・・・と思いきや、このユモトマムシグサの仏炎苞(にょきっと出ている筒状の部分)に

しがみついている茶色い物体・・・(クリックで拡大できます。)、

エゾハルゼミの抜け殻です。かわいいですよね。

秩父多摩甲斐国立公園の山で聞くセミの声は、街でよく聞くアブラゼミやミンミンゼミの声と違って、

夏のジリジリとして暑苦しさを感じさせません。

なぜなら!セミの種類が違うからです!!

街と山では標高が違えば季節も違う!紅葉も山の方から始まりますよね?

セミも同じです。

エゾ"ハル"ゼミは名の通り、夏前の5月から鳴き始め、

本州では標高が高いブナ帯に生息しています。

セミによって、好む木の種類が違うので、

標高差に応じた公園内の豊かな植生が、生きものの多様性を生んでいるんですね。

すばらしい!

5番目の住人「サンコウチョウ」

見返りサン。

実家の掛け時計の12時のところにサンコウチョウが書かれていて、

「月日星ホイホイホイ」って鳴くんやで、と言い聞かせられ、

見たい見たいと思ってきたこの人生、やっと会うことができました!

実際に聞くと、「ジェッ、ギーポイ、ジーズッ、ホイホイホイホイホイ」という感じです。

「ホイホイ」は3回だけ、って決まって鳴くわけじゃないんや、と知りました。

公園内では、5月から6月にかけて、民家に近い雑木林や人工林の上の方から声が聞こえてきます。

このような場所が多い、規制の少ない普通地域でも、

サンコウチョウがいるというだけで守るべき価値が上がりますね!

以上、最近出会った5人の住人たちを紹介させて頂きましたが、

どの住人に会いたくなりましたか?

全員ですか?

そうだと思いました。

サンコウチョウはもう鳴いていないので、声なくして探すのは難しく、秋には渡ってしまいます。

エゾハルゼミも梅雨明けには鳴きやんでしまうので、

また来年にでも会いに来てください!

その頃にはコロナが治まっていることを願います。