アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
海と陸と空の間にある花畑 (伊豆諸島地域)
2021年07月26日こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
日差しが強い日々が続くと海に入りたくなるものですね。
伊豆諸島へ来るまでは海の近くに住んだことがなかったので、その感覚が今一つ分からなかったのですが、伊豆諸島のおかげで山っ子だったわたしは海っ子にもなれそうです。
さて、海に行った時、崖や砂浜や海岸線で色鮮やかな花を見た記憶はありませんか?
海に気を取られて中々周りの植生を感じる機会はないかもしれませんが、海岸線・砂浜・崖などは、様々な種類の花が咲く場所でもあるのです!
- ▲ ハマカンゾウ、ハマゴウ、ハマナタマメなどからなる花畑
- 2021年6月撮影 三宅島(富賀浜)
海辺の花々から四季を感じられるのも、島生活が好きな理由のうちの一つです。
このように海岸沿いに生える特徴的な植物を「海浜植物」や「海岸植物」といいます。
色・形・匂いなど多種多様です。
島によっても見られる海浜植物が少しずつ異なります。
- ▲ イワタイゲキ 2021年3月撮影 神津島(名組湾)
▲ 白い海浜植物4種
- 左上:シマホタルブクロ 2021年6月撮影 三宅島(富賀浜)
- 右上:ハマユウ 2021年6月撮影 三宅島(大久保浜)
- 左下:マルバアキグミ 2021年4月撮影 大島(トウシキ)
- 右下:ハマボッス 2021年4月撮影 大島(トウシキ)
- ▲ スカシユリ 2021年6月撮影 三宅島(富賀浜)
そんな伊豆諸島を代表する海浜植物のうちの一つが「ハマカンゾウ」です!
6月から7月にかけて橙色の花を辺り一面に咲かせます。
学名の「Hemerocallis fulva var. littorea 」はラテン語で、「hemerocallis = 一日の美」・「fulva = 黄褐色」・「littorea = 海辺」、すなわち「海辺にある一日咲きの黄色っぽい花」という意味。
実際には色は黄色っぽいものから赤っぽいものまであります。
大島では特にサンセットパームライン沿いに多く見られますよ。
空や海の青になんとも映える色合いですね!
▲ ハマカンゾウ 2021年7月撮影 大島(サンセットパームライン)
- ▲ ハマカンゾウ 2021年7月撮影 大島(サンセットパームライン)
日差しが強く、常に潮風に晒され、栄養素も貧しい環境である海岸線。
そんな場所で育つ海浜植物の多くは独自の進化を遂げています。
例えば、海浜植物の葉っぱは分厚く光沢のあるものが多く、潮風による過度な水分の蒸発を防いだり塩害から守ったりする役割を果たしています(スカシユリ、ハマナデシコなど)。
また、一般的に植物の光合成は昼間に行われますが、海岸のような厳しい環境では、昼間に気孔を開くと水分を多く失ってしまうため、夜間に二酸化炭素を取り込み昼間に光と反応させ糖を作り出す種もいます(イワタイゲキ、タイトゴメなど)。
他にも、多くの種は背丈が低いのに加え地下茎という横に這うような根を持っており、海風に飛ばされにくい構造をしています(ハマゴウ、ハマヒルガオなど)。
サンセットパームラインをはじめとする伊豆諸島の海岸線の多くは特別地域に指定されており、景観や生物の保全が図られています。
そのため植生が残る海岸線も多く、1年を通してあちこちで様々な種類の海浜植物を見ることが出来ます。
火山列島である伊豆諸島の海岸線は、火山活動による陸地の成長と波による陸地の浸食を何度も繰り返しながら形成されてきた、特別な場所でもあります。
前回の海鳥の日記でもお話ししましたが、伊豆諸島に来てから海に近くなったのもあり、今まであまり興味のなかった海の生き物が一気に好きになり出したため自分の世界が広がって行った気分です。
様々な海鳥に、ウミガメやクジラ、海浜植物、実際に身近に感じられてこそ初めて有り難みが体感できるのだなと改めて思いました。
過酷な環境に適応し、美しい花を咲かせ、わたしたちを楽しませてくれる海浜植物。
自然が豊かな場所にいると幸せを感じやすいのは間違いないと思います。
今回は伊豆諸島で見られる海浜植物についてご紹介しましたが、いかがでしたか?
見覚えのある植物はありましたか?
もしくは、「見たことはないけれど見てみたい!」と思うものはどれでしたか?
今度海辺に出掛けられた時は、辺りを見渡してみてください。
気付かぬ内に海と陸と空の間にある花畑にいるかもしれませんよ!
- ▲ トベラとアオスジアゲハ 2021年4月撮影 大島(海のふるさと村)
飛び抜けていい匂いのするトベラ。アオスジアゲハが蜜を吸いに寄ってくる。