ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年8月18日

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2021年08月18日【富士山編】御中道の清掃と外来種駆除を行いました

富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉

富士山頂

富士山吉田口五合目から続く「御中道」とその周辺での活動

御中道の清掃


先日、他の事務所からの呼びかけがあり、御中道の清掃と外来種の駆除を行いました。

朝9時、天候にも恵まれており、スバルライン五合目では登山客だけでなく児童の団体などの観光客も見受けられました。

スバルライン五合目

▲スバルライン五合目の様子

まずは御中道をスバルライン五合目からおよそ2時間ほどかけて、奥庭駐車場へと歩きながらゴミ拾いを行いました。

今回初めて御中道を歩きましたが、その印象はやはり山頂への登山とは異なるものでした。
歩くとすぐに木々に藻の様なものがまとわりついて見えます。
最近流行りのエアプランツに見た目はとても似ているようです。

サルオガセ

▲中央の気に付着する「サルオガセ」

こちらは「サルオガセ」の仲間で、その実は地衣類(菌類)です。周囲の青々とした植物とは異なり、不思議な印象を持たせてくれます。
こういった生物が見られるのも、山頂を目指す登山とは異なる御中道の魅力です。


道中、辺りを見渡してゴミを探しつつ、他にも夏真っ盛りを生きる草木も観察することが出来ました。
また、一部ではありますが看板には植物などの情報も記載しており(今後距離標も設置予定です)、豊かな植物の間からは山頂が垣間見えるポイント(タイトル上画像)もあるので、登山ではなくとも富士山を満喫することが出来ます。

ハクサンシャクナゲと看板

▲ハクサンシャクナゲと看板

結果、ゴミはほとんどなくきれいな状態が維持されていました。
小さいゴミ(お菓子の袋等)を数個拾ったのみです。

外来種の駆除


今回外来種として駆除したのは「タニソバ」です。

外来種、と表現していますが、国外からの外来種ではなく国内にも広く分布しています。
しかし、周辺では今回駆除を行った四合目付近の工事現場にしか生育が認められていないため、人為的に持ち運びこまれたものであると考えられ駆除の対象となりました。
このまま放置すると、五合目以上の砂礫地への拡大も懸念されます。

タニソバ

▲タニソバ(左方の赤い葉をもつ植物)

根は浅く、スコリアが混じる地面だったためストレスなく地面から抜くことが出来ました。
根深いとなかなか引き抜くことが出来ないこともあるので、一安心です。

今回はビニール袋6袋ほどの量を駆除しました。
地道な作業でしたが、これからも富士山が変わらない姿であり続けるための必要な作業だと感じます。

また、靴裏に付着している植物の種子等を落とす(持ち込まない)目的で、登山口にマットが設置されている場合があります。
登山前には、マットで土などを落とすようご協力をお願いします。

駆除量

▲駆除したタニソバ

種子落としマット

▲種子落としマット

富士山では、今回触れたゴミを捨てない、外来植物を持ち込まない以外にも、登山中のマナーや法律で禁止されている行為があります。
登山前には、以下のリンクを確認して富士山での注意事項を覚えておきましょう。

富士登山オフィシャルサイト(富士山のルールとマナー)

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2021年08月18日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -アゲハチョウ科編 ①-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。どういうわけかパクチーにはまっているパクチニストの齋田です。

最近は通勤中に出会うキアゲハたちにただならない親近感を覚えてしまい、まあまあ困惑しています。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、アゲハチョウ科といえばこのチョウ「ナミアゲハ」です。

【ナミアゲハ】

翅脈に沿った黒色模様がオシャレなナミアゲハ。名前の「ナミ(並)」の通り、最も普通に見られる種類です。

幼虫はミカン科の植物を食べて育ち、成虫はアザミ類やヤブガラシ等を中心に様々な花を訪れます。

人家の庭木等やベランダでも見られることが多く、都市部のみなさんにも馴染みの深いチョウだと思います。

楽曲のタイトルや歌詞、小説の題材、俳句の季語等、夏の象徴として扱われることの多いナミアゲハ(揚羽蝶)ですが、夏と呼ぶにはまだ早い3~4月頃にも発生し、それぞれ「春型」・「夏型」と区別されます。季節型によって体サイズや模様が若干異なるため、写真を撮って見比べてみるのも面白いかもしれません。

伊豆半島では、人家や農地を中心に海岸部から低山地までの広いエリアにて観察することができます。

続いて、ゆらゆらと妖しく踊る「ジャコウアゲハ」です。

【ジャコウアゲハ】

黒いレースのような翅が美しいジャコウアゲハ。雄成虫の腹端から発生する匂いが麝香(じゃこう)に似ているため、その名が付きました。

幼虫は毒草として有名なウマノスズクサやオオバウマノスズクサといったウマノスズクサ科の植物を食べて育ちます。これらの植物はアルカロイド系のアリストロキア酸によって昆虫たちによる食害から身を守っていますが、なんとジャコウアゲハの幼虫には通用しません。それどころか、幼虫はウマノスズクサ科の有毒成分を積極的に体内に取り入れ、天敵からの防御に利用しているのです。

ちなみに、ジャコウアゲハによく似た種類にクロアゲハやオナガアゲハ等がいますが、いずれも無毒です。面白いことに、彼らは有毒であるジャコウアゲハに姿形を似せることで身を守っているようです。このような擬態様式はベイツ型擬態と呼ばれ、アゲハチョウ科の仲間ではベニモンアゲハ(有毒)に擬態するシロオビアゲハ(無毒)が有名です。

伊豆半島では、ウマノスズクサ科が生育する農地や樹林地にてスポット的に観察することができます。薄暗い林縁部を優雅に舞う姿はドレスを纏った魔女のようで、出会うと不思議な気分にさせられますよ。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるアゲハチョウ科の昆虫のうち、撮影に協力してくれた「ナミアゲハ」と「ジャコウアゲハ」についてご紹介しました。

食害を防ぐために毒を持つウマノスズクサ、ウマノスズクサの毒を体内に蓄積させることで捕食者から身を守るジャコウアゲハ、ジャコウアゲハに姿を似せることで天敵を欺くクロアゲハ。生き物たちの世界はとても興味深く、知れば知るほど面白いですね。

今週より緊急事態宣言の対象区域が拡大され、一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて伊豆半島の夏やそこで暮らす生き物たちの魅力を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちをご紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

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