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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

【那須】地衣類はじめてみませんか?

2021年09月07日
那須

こんにちは、日光国立公園 那須管理官事務所の菅野です。

那須高原ではすっかり秋めいた涼しい風が流れています。

さて、みなさんは"森林"と言えば、どのような風景を思い浮かべますか?

私の場合、林床をササで覆われたブナ林が真っ先に連想されます。

甲子地域(福島県側)では、赤面山を登っていく途中にブナ林が広がっています。

▲赤面山のブナ林(2020年6月2日撮影)

木の樹皮を覚えることはなかなか難しく感じられますが、ブナの独特のまだら模様は印象的です。

実はこの模様、ブナ単体のものではなく、様々な色の地衣類(やコケ植物)が樹皮に付着してできています。

▲ブナの樹皮(クリックで拡大してみてください!)

地衣類とは、菌類と藻類からなる共生体。

藻類は自身がつくる光合成産物を栄養として菌類に提供し、

菌類は自身の体を藻類に提供して乾燥や紫外線から守っています。

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那須湯本温泉の周辺では、この地域特有の地衣類がみられます。

それがこのイオウゴケ(硫黄苔)です。

▲イオウゴケ(小丸山園地にて2020年11月13日撮影)

見た目は小さなキノコ?

でも名前はコケ?

いいえ、イオウゴケも地衣類の仲間。

大きさは1~3cmほどで、その名の通り、硫黄質の火山地帯や温泉地などでみられます。

"マリリン・モンローの唇"にも例えられる赤い子器をつけることが特徴です。

火山性ガスを噴出する場所は、多くの生物にとって生息・生育に適さない過酷な環境です。

どうしてイオウゴケはそのような環境に適応することができたのでしょうか?

少し調べてみましたが、理由はわかりませんでした。気になります。

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一見すると地味な地衣類、

じっくり観察してみると形、色、模様が実に多様でおもしろいです。

▲地衣類いろいろ(クリックで拡大してみてください!)

 左:カブトゴケsp.(赤川渓谷線の散策路上にて2021年5月19日撮影)

 中:サルオガセ属sp.(沼原湿原の樹上にて2019年10月21日撮影)

 右:ロウソクゴケモドキ?(赤面山の岩にて2020年6月2日撮影)

地衣類はあまり目立たないので普段は見逃してしまいがちですが、

山や森だけでなく、街路樹の樹皮、土、石、コンクリートなど実は街なかでも見かけることができます

身近な場所をふらっと散歩しながら、地衣類の小さな世界を探してみるのも楽しいかもしれません。