アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
【小笠原】妹島の巡視(後半・崖登りと島の鳥編)
2021年10月04日皆様こんにちは。
小笠原自然保護官事務所 母島支所の伊藤です。
前回は妹島へ上陸した後、素敵なツルワダンと元気なシマカコソウの様子を見ました。
今回はその続きから、妹島での巡視を報告します。
素敵で元気な植物を確認した後は、ある目的のために見晴らしのよい場所を目指してさらに崖を登ります。
△砂の崖を滑り落ちないように登ります。危ないですね。
傾斜の具合が写真ではわかりにくいですが、2本足で立てない程度に足元がサラサラな急勾配で、高さは3階建の一軒家相当と例えれば恐ろしさが伝わりますでしょうか。
もちろん無理は禁物ですので、安全第一で慎重に登ります。
まだまだ道のりは続きます。
△道がないときは枝の中に潜っていきます。強引ですね。
道なき道を進むときは、地形や植物を極力傷つけないように気をつけましょう。
さて、なんとか見晴らしのよい場所にたどり着くことができました。
△母島が見える崖の上です。見晴らしがよいですね。
見晴らしのよい場所を目指した目的は、「オガサワラカワラヒワ」という鳥が島にやってきていないか張り込むためです。
最近は母島列島と南硫黄島でしか姿が確認されていない希少な鳥で、絶滅のおそれがあるため環境省でも保護増殖事業を行っております。
この張り込みもその一環で、今回妹島へ来た目的のひとつでもあります。
場所を少しずつ変えながらしばらく見張りを続けましたが、この日オガサワラカワラヒワを見ることはできませんでした...。
△こちらが今回出会えなかったオガサワラカワラヒワです。かわいいですね。
実はこの日、オガサワラカワラヒワに似た鳴き声が森のほうから聞こえたのですが、「イソヒヨドリ」という別の鳥がオガサワラカワラヒワの声真似をすることがあるようで、今回聞こえたのはそちらだろうということになりました。
それでも、「オガサワラカワラヒワの声真似ができるイソヒヨドリ」が妹島にいるということは、きっとオガサワラカワラヒワも近くに来たことがあるはず...と期待したいです。
余談ですがこのイソヒヨドリ、他にもウグイスやカエルなど、色んな生き物の鳴き声を真似ることもできるそうです。たいしたものですね。
巡視も終盤です。
張り込みを終え、諦め切れずにオガサワラカワラヒワを探しながら帰り道を歩いていると珍しいものを見つけました。
△カツオドリの親子です。素敵な光景ですね。
少し離れた崖に登り、手持ちのカメラで限界までズームしました。
真っ白な羽毛が保護色になって見えづらいですが、幼鳥の姿も映っていますね。
野鳥の営巣地を見つけてもむやみに近づかず、刺激しないように遠くから見守りましょう。
今回は妹島の巡視記録を前編と後編に分けてお伝えしました。
無人島に残された貴重な環境はこれからも大事にしていきたいですね。