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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

【那須】 那須野ヶ原の小島

2021年12月22日
那須

みなさま、こんにちは。

日光国立公園 那須管理官事務所の善養寺聡彦です。

今回は那須地域の地質の話。

茶臼岳を中心とした那須連山は、東南方向に長く緩やかな裾野を引いています。

この裾野は、那須野ヶ原(広義と狭義がある)と呼ばれます。

長く裾野を引く那須連山(那須岳)

那須管理官事務所の職員は、毎日この裾野を走る「那須街道」を

上り下りして勤務しています。

朝はひたすら上り、帰りはひたすら下る。

途中に起伏はありません。

この裾野は、那須連山や大佐飛(おおさび)山地から

運ばれた砂礫が堆積した扇状地となっています。

一般に扇状地は水はけが良くて水田には向かず、

そのことから那須は酪農・畜産が盛んな地域となりました。

ここが扇状地であることは、

この地を流れる(?)蛇尾川(さびがわ)によって知ることができます。

蛇尾川

なかなかの大きな川。

河原は山から運ばれた粗い砂と礫で埋まっています。

しかし、それよりも際だった特徴は・・・・

そう、水が流れていないことです。

水無川です。

おそらく水は川底よりもかなり深い地下を流れているのでしょう。

那須に来たばかりの時に驚いたことの一つはこの大きな水無川でした。

扇状地は水が透過しやすく、こんな大きな川でも水無川になってしまうのです。

今でこそ周辺には水田や畑、牧草地も有りますが、

ここまで開墾してきた先人のご苦労が偲ばれます。

(※開墾の歴史は「那須野ヶ原博物館」(http://www2.city.nasushiobara.lg.jp/hakubutsukan/)等で学ぶことができます。)

さて、私が那須で暮らす中で不思議と思った地形が他にもあります。

「りんどう湖」。 

この湖および周囲はレジャーランドになっていて、

お子様連れのファミリーには人気の場所です。

りんどう湖(湖がまるごとレジャーランドになっている)

私が気になるのは湖そのもの!

大まかにいって、長辺約500m、幅約150m。

堤防が築かれた人造湖。

とはいえ堤防はそんなに高くない。

ということは、元々の大きな窪地があったはず。

それも透水性の乏しい地質でなくては・・・・。

この扇状地に大きな沼ができていた?

ずっと大きな疑問でした。

この疑問が解けたのは、もう一つの不思議な地形からでした。

栃木県(那須町)と福島県(白河市)を結ぶ国道4号線。

ここを福島県へ向かって走ると左に那須連山を見て、

右側は緩やかに下る扇状地が広がります。

平に下る風景なのですが、

そこに何やら小山発見!!

「はあ?」

寄生火山?・・・ にしては連山から遠すぎる。

「お! 古墳か!? うん、前方後円っぽい!」

・・・・。

しかし、調べてもこの地の古墳の情報はヒットしません。

永く悩んでいました。

しかしあるとき(最近)閃きました。

「那須には 流れ山 があるのかもしれない!!」

流れ山とは、火山が大噴火によって山体崩壊を起こして、

膨大な量の土砂(溶岩などの噴出物ではなく、それまで山を形成していた山体自体)が

山麓を流れ下ってできた小山です。

磐梯山や鳥海山(九十九島)の流れ山が有名です。

どちらも一方向に山体崩壊を起こして、独特の山容を呈しています。

那須連山は?

山体崩壊によってできたカルデラがいくつかあることは知っていましたが、

カルデラ形成後、いくつかの溶岩ドームができて、

磐梯山や鳥海山とはかなり異なる複雑な山容となっているので、

那須の流れ山の存在には思い至りませんでした。

那須地域の様々な解説の中に「流れ山」に関する記述は

それまで見たことがありませんでしたが、

色々な人に尋ねて行くうちに、那須の流れ山に関する情報があったのです。

例の「4号線沿いの古墳」は流れ山であると確信しました。

那須連山からはるばると流れたと思われる小山(4号線沿いの古墳)

背景の那須連山のひときわ白い山が茶臼岳。

茶臼岳は山体崩壊によってできた馬蹄形カルデラ内に、新たにできた溶岩ドーム。

で! りんどう湖は?

りんどう湖にも流れ山が関連していることがわかりました。

りんどう湖は3つの流れ山を堤防で繋いでつくられたのだそうです。

3つの流れ山の間の窪みが、りんどう湖の元になったらしいのです。

そして、りんどう湖にはこんな風景がありました。

これこそ「流れ山」。

拡大すると、

扇状地の砂礫ではなく、山体を形成していたと思われる

大きな岩がたくさん集まった山であることが分かります。

すっきりしました。