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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、日光、尾瀬、秩父多摩甲斐、小笠原、富士箱根伊豆、南アルプス国立公園があります。

海鳥だらけの小さな島 ~ 御蔵島 (伊豆諸島地域)

2022年05月26日
伊豆諸島 小野可蓮

こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。

先日(4月中旬)、御蔵島(三宅島と八丈島の間に位置する)に行く機会があったおかげで、ある鳥が好きになってしまいました!

その鳥とは、、、

 

とその前に、ここで質問です。

この写真に何が写っているか見えますか??

うーん。暗い森、、、

 

 

いや、特に生き物は見えないし、なにも写ってないのでは、、、

そうです、そこです。

生き物ではなく、生き物によって作られた何かが写っています。

 

 

 

よく見てみると?

巣穴だらけ!なのです。

それがさっきの鳥と関係しています。

 

御蔵島はこの鳥にとって有数の集団繁殖地。

以前も日記でちらっと紹介しました。

オオミズナギドリ(学名:Calonectris leucomelas)の巣穴です!

 

▲ オオミズナギドリの群れ 202158日撮影 大島~神津島航路

 

風も波も時々雨も強い中、流れるように飛んで行く姿は、何度見てもかっこいいです。

このオオミズナギドリ、海では滑らかな動きしかしませんが、陸での「秘密」があるのです。

 

ヒントが先程の巣穴。

崖などではなく、鬱蒼とした山の中に巣がありましたよね。

シイノキの根元付近などに横向きの穴を掘って営巣します。

御蔵島では毎年、10万羽ものオオミズナギドリが夏の間に営巣しているそうです。

1970年代後半には推定175~350万羽が営巣していたとか。

(ちなみに島の人口は300人程度です。)

 

そしてなんと!木に登るのです。でもなぜ海鳥が?

理由は、体が海での行動に特化しているため、陸での行動は多少苦手のようで、普通に(?)飛び立つことが難しいからです。

羽をばさばさと羽ばたかせながら木に登り、少し高いところまで行ったら、飛び降ります!

途中木から落ちてしまうこともよくあります(笑)

 

ただ、よちよちばかりしているかと思いきや、急に走り出す姿も見て、思っていたよりは陸でも素早く動けることが分かりました。助走をつければ飛び立てたりもします。

ではなぜ、わざわざ木に登る?

何もかも不思議過ぎます。

 

森の中で見られるのは巣穴だけではありません。

辺りを見回してみると、あちらこちらにオオミズナギドリの跡が、、、!

 

▲オオミズナギドリが木に登る際に残していった爪痕

 

▲ 「鳥道」 森の中でオオミズナギドリがよく通る箇所は下草が生えていない

 

沢山のオオミズナギドリが毎日「通勤」しているのが想像できます。

夕方になると海から戻り、夜明け前には海へ帰る生活を送っています。

なので、日中山に入っても遭遇することは滅多にありません。

 

▲あちこちに糞 海からの栄養を山へと運んでいる

 

▲ 巣穴付近で羽が散らばっていることも ノネコやカラスなどに捕食されたと見られる

 

実は自分でも山での姿を確認したくて、夜明け前に起きて見に行ってきました。

わくわくし過ぎていたのか、外から聞こえてきた鳴き声で直ぐ目が覚めました。

山の方から聞こえてくる鳴き声に向かって歩いていると、音はどんどん大きくなっていき、

暗くてよく見えませんでしたが、気付けばオオミズナギドリに囲まれていることに気付きました。

 

夜空を見上げてみると、時々スーッと白い姿が浮かび上がり、流れ星のように空を横断した後、また闇に消えていきます。

オスはピーウィ、メスはアゥーア、と巣の付近で鳴き交わすようです。

夜明け前の御蔵島の山は賑やかです。

でもそれも3時~4時過ぎ頃までのほんの数時間だけ。

4時半頃になると、今までは何だったんだろうと思うくらい、静かになります。

 

ちなみに見に行かれる場合は鳥達の気持ちになって、光を直接向けないなどの配慮をしてあげてくださいね。

 

▲ 帰りの船から見たオオミズナギドリの群れ 2022414日撮影 八丈島~東京航路

 

オオミズナギドリは八丈島~東京の航路でももちろん沢山見られます。

今朝御蔵島で見た子たちがここにもいるかな~なんて考えながら海を眺めていました。

 

以前もオオミズナギドリについて少し紹介しましたが、こういう感動は写真や動画では中々伝わりません。

更に伊豆諸島が好きになれた瞬間でした。

これからも伊豆諸島の海鳥や自然について発信していくので、また楽しみにしていてください!

 

※ご注意ください

御蔵島では自然環境の保全のため、条例等により山や森への立入制限や利用ルールの設定がされていて、一部コースを除きガイドの同行が必要となります。

詳しくは下記のURLからご確認ください。

https://mikura-isle.com/?page_id=376

 

(一般社団法人 御蔵島観光協会HP