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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

陸産貝類の棲む島を守る ― 兄島での殺鼠剤手撒きとその背景

2025年06月27日
小笠原 河村雅史
皆さん、こんにちは。
小笠原自然保護官事務所の河村です。
6月、小笠原村の花にも選ばれているヒメツバキが見ごろを迎えました。私が小笠原に赴任したのは2023年の6月。ちょうど2年前になります。その頃も父島のさまざまな場所でこの花が咲き誇っていたのをよく覚えています。そのため、この花を見るたびに、小笠原で過ごしてきた時間の流れを改めて感じます。
ヒメツバキの花(兄島)
ヒメツバキの花(兄島)
 
山の斜面の各所に花が(兄島)
山の斜面の各所に花が(兄島)
 
さて、今回ご紹介するのは、兄島で実施した殺鼠剤の「手撒き」作業についてです。

背景

兄島は父島の北に位置する無人島で、世界自然遺産・小笠原諸島の登録時に評価された「生態系」の価値を象徴する固有の陸産貝類や植物が多く生息しています。これらの生物にとって大きな脅威となっているのが、人の活動により島に侵入・定着した外来種のクマネズミです。

環境省では、これまで兄島にベイトステーション(殺鼠剤を入れる容器)を設置し、継続的にクマネズミの駆除を行ってきました。また、センサーカメラによるネズミの生息密度の把握や、陸産貝類への食害状況のモニタリングも並行して実施しています。2024年度にはネズミの密度が高まり、陸産貝類への深刻な被害が懸念される状況となったため、同年11月にヘリコプターによる殺鼠剤の空中散布を実施しました。

(関連記事)
ヘリコプターを使ったネズミ駆除剤の散布を実施しました | 関東地方環境事務所 | 環境省

その結果、クマネズミの数は大きく減少しましたが、モニタリングでは空中散布を免れた個体の活動も一部で確認されました。今回の手撒き作業は、それらの地点を中心に追加対策として行ったものです。
ベイトステーションと、センサーカメラ(兄島)
ベイトステーションと、センサーカメラ(兄島)

作業の様子・2025年6月

兄島に船で渡り、上陸後は徒歩で散布地点まで移動します。できるだけ涼しい時間に動けるように早朝6時台から行動開始です。6月とはいえ、日が高くなると体感気温はぐっとあがります。水分も約4L携行し、熱中症に気を付けながら現場まで行き来をしています。

作業場所に到着後は、殺鼠剤が広く均等に届くよう、投げていきます。翌日は腕が筋肉痛になることもありました。
投げる様子
投げる様子

できるだけ広く飛ばします
できるだけ広く飛ばします

今後に向けて

現在、兄島ではクマネズミの密度が非常に低い状態が保たれており、陸産貝類にとっては良好な環境が維持されています。この状況をできるだけ長く維持できるよう、今後もネズミ対策とモニタリングを継続していきます。

陸産貝類が安定した個体群を維持し、兄島で長く生き続けていけるよう、今後も取り組みを進めていきたいと思います。

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