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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

ヘリコプターを使ったネズミ駆除剤の散布を実施しました

2024年12月25日
小笠原 河村雅史
皆さん、こんにちは。
小笠原自然保護官事務所の河村です。

11/2-14の期間に兄島で固有のマイマイ(陸産貝類)等の保全のための、ヘリコプターを使ったネズミ駆除剤(殺鼠剤)の空中散布を実施しました。

殺鼠剤散布の目的

兄島は父島のすぐ北に位置する面積7.88㎢の無人島で、 小笠原諸島が世界自然遺産に登録された際に評価された「生態系」の価値の中核的存在となる固有種の陸産貝類や植物が多く生息・生育 しています。一方で、外来のクマネズミも兄島に侵入しており、陸産貝類や植物への食害が発生しています。前回2020年度に実施した空散以降、クマネズミの確認数や陸産貝類への食害率が再度増加してきたことから、今年度に殺鼠剤の空中散布を実施することとなりました。
カタマイマイのネズミ食害殻
ヤマキサゴ類のネズミ食害殻

実施の概要

海岸沿いや周辺の岩礁を含めた兄島全域と、兄島周辺の小島(人丸島、瓢箪島、西島)を対象に散布を実施しました。
殺鼠剤はネズミ以外の生物が喫食する機会を少なくするため、粒のままではなく10gごとの包みに入ったタイプを使用しています。穀物生地の中に殺鼠剤の成分が含まれており、穀物に誘引されたネズミが袋を破って中の殺鼠剤の粒を喫食します。ネズミが複数回口にすることで、血液が固まりにくくなり、死亡する仕組みです。殺鼠剤成分の濃度は薄く、ネズミ以外の生物については大量に摂取しない限り問題のないものを使用しています。

作業の様子

殺鼠剤空散の時期には、
 
父島と兄島からヘリコプターの飛行経路と散布状況の監視
漁船に乗って海に落ちた殺鼠剤を網で拾う作業。一部海域ではカヤックを使用したきめ細やかな回収
小河川に落ちた殺鼠剤を水や流路から除去する業務への同行
オガサワラハンミョウの生息する裸地で巣穴の上に殺鼠剤が落ちていないか確認し、裸地から殺鼠剤を除去する作業
を実施しました。
兄島上空を飛ぶ、殺鼠剤の散布機を吊したヘリコプター
殺鼠剤が落下しそうな海域で待機する漁船
海から拾い上げた殺鼠剤入りの袋
カヤックを使用した回収
殺鼠剤散布後のハンミョウ生息地の様子
最初は天候等の影響もあり、予定通り空散できない日もありましたが、散布期間を最大限活用し、最終的には予定量を全て散布することができました。個人的には漁船に乗って船酔いしてしまったり、日当たりの良い裸地上で殺鼠剤を拾って、集めて、投げてを繰り返したりするなど、ハードな部分もありましたが、無事に終えることができて良かったと思います。

これから兄島のネズミ対策としては、センサーカメラを使用してネズミが確認されないかをモニタリングを実施します。ネズミの少ない状態ができるだけ長く維持され、陸産貝類や植物への食害の影響が小さなままであってほしいです。

今日で殺鼠剤空中散布の最終日から1ヶ月が経過しました。父島の海岸に流れ着く殺鼠剤の回収を行っており、最終の巡回を先日実施し、一連の殺鼠剤空散関係の業務は一区切りとなりました。
海岸漂着確認の様子(父島・宮之浜)