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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

白い砂漠で赤く咲く「緑の島」 (神津島 伊豆諸島地域)

2022年08月10日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
今年の伊豆大島は鳥や虫が全体的に少ない気がしました。
何か要因があるのでしょうか。それとも周期的なものなのでしょうか。
全く同じ年はないというのも、自然の魅力の内の一つかもしれませんね。

さて、気付けば夏至も過ぎ、すっかり月日が経ってしまいましたが、今回は初夏の神津島の天上山の様子をご紹介したいと思います。
 
『花の百名山』にも選ばれた天上山。
6月上旬と言えば、丁度あの花の季節です。


「オオシマツツジ」、ヤマツツジの島嶼変異種(とうしょへんいしゅ、島の環境に適応して変異した種)です!
伊豆諸島とその周辺の地域に分布しています。
今回、神津島のものを初めて見ました。
オオシマツツジというくらいなので、伊豆大島にももちろん生息していますが、なんと神津島のものは色々な色があるのです。
オレンジ~赤っぽいものから、紫~ピンクっぽいもの、白色まで見られるそうです。
大島ではほぼ一色しかありません。

神津島のもの:全部少しずつ色が違うのが分かりますか?
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大島のもの:多少の濃淡はあるものの、ほとんど同じ色です。
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神津島で特別なのは、生えている場所と生え方とも言えます。
例年はこの時期になると、「緑の島」の光景が見られのです。

天上山山頂は風が強いため、オオシマツツジは横に広がりながら生えていき、そこに他の植物も混じれば「緑の島」の完成。
花が咲くと鮮やかな赤っぽい色と緑が白い砂漠を彩ります。
霧越しだと余計に幻想的に感じることでしょう。

今年はケムシ(ドクガの幼虫)が大量発生してしまい、オオシマツツジも食べられていたので、全体的に咲いている花は少なく写真に収められませんでした(残念!)。


▼ 中央辺りに見られる黒と橙の幼虫がドクガ
 
ところで、なぜ山頂の「砂漠」という過酷な環境で、オオシマツツジは生えていることができるのでしょうか?
砂の中では水分も養分も不足してしまうのでは?
 
それがどうやら、酸性土壌でも生育する「菌根菌(植物の根と共生している菌類)」がオオシマツツジと共生しているおかげのようなのです。
ツツジは光合成で作った栄養素を供給、菌はリン酸などを供給します。厳しい環境に適応できているのにはこういった背景があったのです。
以前メジロとツバキの日記でも紹介しましたが、多くの生き物たちは互いに「助け合い」ながら生きています。
 
ちなみにオオシマツツジがあるならコウヅシマツツジはないの?といわれると、実はあります!
ハコネコメツツジとオオシマツツジが自然に交配してできた種のようです。
その分、花のサイズはオオシマツツジと比べるとかなり小さいのと、花期がオオシマツツジより1ヶ月ほど後です。
今回見たのはオオシマツツジばかりでした。
 
 
天上山は展望スポットがいくつもありますが、それらにツツジの色が加わると、より鮮やかに見えますね。


▼ こんもりとした不動池の中島にも

▼ 不入ガ沢 例年であれば「緑の島」が見られる 今年は少ない

▼ 山の斜面に咲く、様々な色合いのオオシマツツジ
 
▼ 見上げるとオオシマツツジが

▼ 白島登山口からの歩道沿いにも咲いている

初夏の神津島の景色、いかがだったでしょうか?
今は夏も進み、既に秋の花々も咲く準備をしていることでしょう。
天上山は550種以上もの植物が見られることで知られています。
お花好きな方も、そうでない方も、一度天上山の魅力を味わいに来てください。


おまけ
▼ 新東京百景展望地からの景色 式根島、新島、利島が見える