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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

「 伊豆諸島の夏といえば? サクユリ! 火山の斜面にお花畑 」

2025年08月08日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
今年の夏は雨が少なかったからか、虫も少なく、鳥も少ない気がします。
でも山に行くと、それなりの「収穫」が!
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△ オオルリの幼鳥 こちらの様子を伺っている姿に、きゅん
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△ 真っ青な尾羽がちらっと見えました
ちょっとだけ青い、巣立ち雛を目撃!
オオルリの幼鳥でした。
毎年この辺りで繁殖していて、5月頃からきれいな鳴き声をたくさん聴かせてくれます。
 
秋になったらどこまで行くんだろう。
来年の春には帰ってくるのかな?
想像が膨らみます。

< 少しずつ「オレンジ」な仲間たち >

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△ オナガミズアオのメス 初めて本物に遭遇しました(今までは食べられた後、落ちている翅ばかり)
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△ 触覚がオレンジでかわいいですね 櫛歯状(くしはじょう)で、シダか羽根のような雰囲気があります
カラフルな発見は続きます。
オナガミズアオの翅は夏になるとよく落ちているのですが、生きた個体(虫の息ですが、、)は初めて見ました。

幼虫はヤシャブシの葉っぱを食べ、成虫になると口が退化してしまい何も食べないようです。
一夏だけの短い命、夜に儚く美しく舞う姿も見てみたいです。
 
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△ アケビコノハの後翅 ハマカンゾウを彷彿とさせる色
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△ 前翅もセットで見つけました
おまけにオレンジの翅まで!
こちらはアケビコノハのものでした。

明け方に鳥に食べられちゃったのでしょうか。
黒い模様により、色味が引き立ちますね。

このように目立つのは、後翅の表側と前翅の裏側だけで、前翅の表側は地味な茶色。
なのでぱっと見は枯葉にそっくりなんです。

 
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△ アズマヒキガエル 伊豆諸島では国内外来種 本土では減少傾向にあるようです
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△ こんなにもオレンジの目をしていたんですね
どっしりと構えているアズマヒキガエルにびっくり。
昼間見ると(?)、なんだかきれいですね(特に目の色合いとかが)。
思わずしゃがんで観察。

< 毎年恒例、大島サクユリ調査 >


実は伊豆大島では、2019年から毎年、7月下旬~8月上旬に「サクユリ調査」をアクティブレンジャーが実施しています!
わたしは2021年から2025年まで、計5回の調査を行ってきました。
2025年の夏の様子をご紹介したいと思います。
(全体のまとめはそのうち別の日記で!)
 
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△ 富士山とサクユリ
この日は夏なのに空気が澄んでいて、景色が最高!
御蔵島まで見えただけでなく、新島の白い崖が見えたり、伊豆半島の大室山の緑が見えたりと、本土(本州)や他の島がより近く感じられました。
 
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△ 利島~神津島もいつも以上にくっきり 海食崖の雰囲気が伝わってくるくらいでした
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△ サクユリとシマノガリヤス 島の植物や景色と撮ることで、伊豆諸島っぽさが増しますね
サクユリは伊豆諸島の固有変種といわれています。
大島から青ヶ島まで見られますが、それぞれ遺伝子や形態が少しずつ異なるため、種(しゅ)としてだけではなく、遺伝的多様性も守ることが重要です。
 
大島は真っ白なものから、赤茶色の斑点があるものまで、色々あります。
島によっては真っ白(利島)や、斑点入り(神津島)の個体が大半のようです。
風に漂う、甘くて爽やかな香りがクセになります。
 
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△ サクユリ満開 甘い香りが広がっていました ハートのシルエットが、、?
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△ 三原山の黒い溶岩 過去の地層が剥き出しに 
調査では、計10箇所の定点観察地点から、開花株数を記録しています。
サクユリは大きくて真っ白、遠くからでも目視できるため、この手法で継続しています。
 
山頂カルデラ内の踏査+お鉢巡りをするので、朝から夕方まで炎天下の中です。
日傘必須ですが、それでも黒い溶岩から反射してくる熱波が、じりじり、、笑
 
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△ ハートのシルエットの正体! たくさんのジャノメチョウが飛び交っていました
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△ まるで糸のように細いストローですね 一生懸命に蜜を吸っています
サクユリも花を咲かせるには理由があります。
子孫を残すため、受粉を担ってもらわないといけません。
甘い香りと蜜で、虫を呼びます。
 
ジャノメチョウがたくさん寄ってきていました。
ストローで忙しなく蜜を求めています。
白いユリに、ハート型のシルエットを見かけたら、正体はこの子ですね。
 
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△ サクユリのお花畑
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△ キョンに食べられたサクユリ 花を食べられなくても、葉を食べられ過ぎると弱ってしまいます
伝わりづらいかもしれませんが、こんなにも高密度でユリが生えている場所、中々ないのではないでしょうか?!
まるで火山の斜面のお花畑。
 
ただ、キョンの食害が、今年もあちこちで見られました。
つぼみを食べられると種ができず、世代交代できなくなってしまうので心配です。
 
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△ B火口列の付近にも、白く点々とサクユリが咲いていました
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△ サクユリ3兄弟 この子達も斑点なし
この5年間、同じ場所を見続けて感じたのは、やはり植生遷移の進む速さが凄まじいということ。
 
サクユリは、裸地から草原に移り変わる間の環境を好みます。
そのため、草が伸び木々が生え始め、森林へと環境が近付いていくと、あっという間に咲かなくなってしまうようです。
 
キョンの影響ももちろん大きいのですが、複合的な要因が絡み合って、個体数が減少しているのかもしれませんね。
 
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△ この子は斑点あり 隣にあるのは昨年の茎です こうして1年経っても残っていることがあります
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△ お鉢巡りの歩道沿いなど、簡単に見られる場所もありますよ
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△ 三原山火口 日が傾き陰っています
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△ 帰る頃の富士山は薄っすら
最初の数年はあまり変動が見られませんでしたが、やはり5年も経つと状況が少しずつ変わってきています。
「噴火」「植生の遷移」「波の侵食」の「せめぎ合い」の中にあるのが、「島」。
今後の変化も楽しみに頑張ります。
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△ よく見ると、観光客の方々が縁に座って、三原山を眺めています
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△ 1986年の溶岩流に海と空も好きな景色です
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△ サクユリと島々 (利島~神津島)

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