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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

ダイヤモンド富士の魅力をご紹介

竜ヶ岳からのダイヤモンド富士

2023年01月13日
富士五湖 半田尚人
少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。富士五湖管理官事務所の半田です。本年もどうぞ宜しくお願いします。
ところで皆さんは「ダイヤモンド富士」を見たことがありますか?最近は元日にテレビ中継でやったり、登山を題材にした漫画やアニメなどでも紹介されていますから、知っている方も多いと思います。

ダイヤモンド富士について

山中湖から見たダイヤモンド富士
「ダイヤモンド○○」というのは、独立峰で円錐形の成層火山の山頂と太陽が重なる瞬間、台座の上のダイヤモンドのように美しく光り輝く現象のことを言います。日本各地に “ご当地富士” がありますから、時間と見る位置が良ければ日本の様々な場所で、この美しい現象を見ることはできます。なかでも、日本最高峰の富士山で見られる「ダイヤモンド富士」はやっぱり格別。私の新年最初のアクティブレンジャー日記は、「ダイヤモンド富士」のご紹介をしたいと思います。
 
富士五湖周辺で「ダイヤモンド富士」が見られるのは、概ね10月中旬から2月末にかけて。昇るダイヤモンド富士が見られるのは富士山より西側の地域、沈むダイヤモンド富士が見られるのは、東側の地域になります。太陽が通過する位置は日に日に少しずつ変わって行きます。冬至を境に通過位置の移動は折り返しますから、同じ場所でダイヤモンド富士を見ることができるのは一年に2度、それぞれ2週間程度になります。「ダイヤモンド富士」を見ることができる場所と日時は、インターネット等で多数紹介されているので、事前によく調べて計画を立ててみて下さい。

冬早朝の竜ヶ岳登山

今回ご紹介する竜ヶ岳(標高1485m)は、本栖湖の湖畔に(or西側に)位置します。元日の朝に山の頂上から間近に「昇るダイヤモンド富士」が見られるという魅力で多くの登山愛好家に知られています。1月8日に登った時の様子をご紹介したいと思います。
頂上からの日の出ですから、水平線から昇る一般的な日の出と比べてかなり時間が遅く、この日のダイヤモンド富士は、7時44分です。とは言え、それまでに竜ヶ岳山頂まで登らなければなりません。また登山口に最も近い駐車場は、元日前後の数日、臨時開放(*1)されることはありますが、それ以外の期間は冬季閉鎖しているので注意が必要です。(*1…臨時開放される期間は年によって変わる可能性があります。事前にご確認下さい。トイレはここより手前のトイレを利用するようにして下さい。)山頂までは概ね2時間掛かります。あまり早く山頂に着いてしまうと極寒の中待たなければならなくなるので、うまく時間調整をしながら登ることをお奨めします。
持って行く最低の装備は、トレッキングシューズやザック、防寒着などの通常の装備に加え、ヘッドランプ(予備電池 含む)、チェーンスパイク(or 軽アイゼン)、厚手の手袋、ネックゲーター等 耳を保温するもの、スパッツ(雪対策というよりは足先を寒さから守るため)、温かい飲み物の入ったテルモス(魔法瓶)などです。この時季、夜明け前の本栖湖周辺はマイナス5℃以下は当たり前なので、万全な寒さ対策が必要です。

 
竜ヶ岳登山ルート図 (概念図)
竜ヶ岳の登山ルートは湖畔コースと石仏コース、端足(はした)峠経由のコースがあります。
石仏コースなら東屋より先は開けた斜面なので、仮にダイヤモンド富士の時刻までに登頂できなくても、登山道上からダイヤモンド富士を見ることが可能ですから、竜ヶ岳を初めて登る方やペースに不安がある方はこちらから登ることをお勧めします。湖畔コースは北側で残雪が多く、凍結していることが多いためご注意ください。

 
竜ヶ岳 湖畔コースの様子 (1月8日撮影)
もし山頂に7時頃に到着したら、天気が良ければ八ヶ岳や南アルプスが朝日に赤く染まるモルゲンロートが見られるかも知れません。ただし前述の通り、風が吹いていたりすると体感温度はマイナス10℃に達する日も珍しくありません。十分な防寒対策と強い忍耐力が必要です。
八ヶ岳のモルゲンロート (1月8日 7:03撮影)

いざ ダイヤモンド富士

私が登った日は70人以上の人たちが山頂にいました。元旦ならもっと多くの登山客で賑わうことでしょう。
7時44分。さぁ、ショーの始まりです。富士山の背後から光が差し、山の両肩から漏れる光線が徐々に立ち上がって行くと、富士山のてっぺんに光り輝く宝石のような日の出が出現します。このときばかりは皆さん静かに息を吞んで見つめていました。
竜ヶ岳からのダイヤモンド富士  (1月8日 1枚目7:05, 2~4枚目 7:44~7:45撮影)
私は通常のデジカメで撮り、上のような写真となりましたが、一眼レフで本格的に撮影したい方は、もしかしたら減光フィルターなどを装着するとより良いかも知れません。

「ダイヤモンド富士」の余韻に浸りながら

多くの登山客で賑わう竜ヶ岳山頂  (1月8日撮影)
日が昇り切ると三三五五、皆さん「ダイヤモンド富士」の余韻に浸りながら、記念写真を撮ったり、朝食を摂ったり思い思いに楽しみます。ただ大勢の人で賑わっているので、お互いに譲り合いの精神で、マナーを守って気持ち良く過ごしていただけたらと思います。また、山頂に設置してある野外テーブルにアイゼンの傷跡が無数に残っていました。混み合う中で何とかいい写真を撮ろうとアイゼンを履いたままテーブルに乗ったのでしょう。気持ちは分かりますが、皆さんが使う施設なので大切にしていただきたいです。
富士山を望みながらの下山 (1月8日撮影)
下山は登りよりも滑りやすいので注意が必要です。必要に応じてチェーンスパイクを装着し、植生を傷つけないよう配慮しながら安全に下山して下さい。

おまけ「沈むダイヤモンド富士」

さて、ここからはおまけです。
せっかく「昇るダイヤモンド富士」を見ることができたので、一日に二度ダイヤモンド富士を見ようと、一日富士北麓の自然を満喫した後、今度は山中湖村の花の都公園まで行き、15時38分に「沈むダイヤモンド富士」も堪能しました。
花の都公園からのダイヤモンド富士 (1月8日 15:39撮影)
ダイヤモンド富士による “天使の翼” (1月8日 15:40撮影)
山頂付近をよく見て下さい。富士山の輪郭の外側に影のように見えるところがありませんか?まるで天使の翼のようです。今年こそはコロナも戦争も災害も無い平和で健康的な日常が取り戻せることを願いました。
 
そして、さらに「もう一度ダイヤモンド富士を見よう」と忍野村の二十曲峠に新設された展望デッキ “SORA no IRO” に向かいました。ここも大勢のアマチュアカメラマンで賑わっています。
二十曲峠からのダイヤモンド富士 (1月8日 15:58撮影)
15時58分。本日3度目のダイヤモンド富士です。「さっき沈んだのにおかしい」ですって? 先程見たのは麓から。視点を上げて山の上まで来ると太陽はまだ沈んでいません。何だかタイムリープしているようです。ただこれは道をよく知っていて、駐車場も運良く空いていないと出来ません。あくまでも安全運転、ルール・マナーの遵守が基本です。

最後に

いかがでしたか?
ダイヤモンド富士は奇跡でも何でも無く、毎年決まって同じように起こり、天気さえ良ければ誰でも見ることができる現象です。でも何故かその光景を目の当たりにすると、特別な感情が湧き上がり、自然からパワーをもらった気分になります。
最後の一枚は、ダイヤモンド富士の後に忍野村の田園で見た夕陽と富士山の織りなす光の芸術です。竜ヶ岳登山から始まった長い一日の締めくくりです。

 
忍野村の田園で見た光の芸術 (1月8日撮影)
みなさんも、ぜひ事前の下調べとしっかりとした準備をした上で、ダイヤモンド富士を見に出掛けてみてはいかがでしょうか?


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