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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

だれの仕業?

2023年02月10日
母島 神之田大知
 全国的に寒い日が続いておりますが小笠原はというと、朝晩冷え込みますが昼間はぽかぽか陽気で風が涼しく、とても過ごしやすい時期となりました。今日も事務所の気温計を見ると24度と表示されています。
 そんなぽかぽか陽気のある日、母島の南崎に捕食されたような海鳥の死体があると事務所に連絡が入りました。

 母島では、鳥獣保護管理員の方と環境省で協力しながら、怪我をした野鳥の保護や、死亡してしまった個体の回収を行っています。鳥が死んでいるという情報は住民や業者さんからたびたび寄せられます。その死因のほとんどが衝突死や衰弱死などですが、今回の場合は捕食が疑われるとのこと。小笠原で鳥を捕食できる動物と言えば、オガサワラノスリなどの猛禽類と野生化したノネコの2種類しかいません。

 猛禽類は在来種や渡りで飛来する生物ですが、ノネコは人によって島に持ち込まれた外来生物です。ノネコが生態系に与える影響は大きく、海鳥や小笠原固有のアカガシラカラスバトやオガサワラカワラヒワなどが捕食されるという事例がいくつか報告されています。かつて海鳥の繁殖地として知られていた南崎でも、ノネコの影響で一時は海鳥が見られなくなってしまいました。

 現在の南崎は海鳥がノネコに捕食されないようにノネコ侵入防止柵が設置されており、海鳥は繁殖が確認されるまでに回復しています。しかし、今回連絡のあった事件現場はこの柵の内側だというのです。もし今回の捕食がノネコによるものであれば海鳥の繁殖地が大ピンチです。これは猛禽類かノネコか、どちらの仕業か確かめる必要があります。

 連絡のあった現場までは一番近くの駐車場から歩いて40分ほどで到着します。途中までは遊歩道を歩き、途中から外れて作業道(※一般の方は入れません)を歩きます。作業道をしばらく歩くと、ノネコ侵入防止柵がある場所へ到着します。

 ノネコ侵入防止柵は高さ2m全長100mほどの柵で、海鳥の繁殖地がある岬を分断するような形で設置されています。今回の現場はこの柵の内側、つまり柵の岬側です。
母島南崎のノネコ侵入防止柵
△南崎のノネコ侵入防止柵
現場に到着すると報告の通り海鳥の死体がありました。猛禽類とノネコ、どちらの捕食によるものかは残された羽の羽軸を見て判断します。猛禽類の場合は器用に羽を抜き取るため、羽軸がきれいに残りますが、ノネコの場合だとそのままバリバリ食べてしまうので、羽軸が割れたり折れたりするそうです・・・
残された羽
△残された羽
 周囲に散乱している羽を集めて見てみると、羽軸はきれいに残っていました。これは猛禽類の仕業で間違いなさそうです。ノネコに捕食されたのでなければ特段対処する必要はありませんので、記録だけ取っておきます。羽の他にも骨が残されていました。きれいに肉だけが食べられていて、ほぼ全身の骨がありました。思わず、猛禽類って食べるの上手なんだな~と感心してしまいました。

 ノネコの仕業ではないと分かって安心しました。ひとまず、これで一件落着です。