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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

母島の森の妖精

2023年06月19日
母島 太田隼人
5月より小笠原国立公園の母島自然保護官事務所に着任した太田です。
まだ島に来たばかりでそれほど多くの種を確認したわけではないですが
来島以来、発見した生物の中で一番感動したのがオガサワラオカモノアラガイです。

 
半透明のゼリー状のボディに控えめに伸びる触覚、そして小さい笠を背負っているようにみえる殻の部分。なんともいえない愛嬌のある不思議な姿をしており、まさに雨上がりの秘境の山奥で姿を現す妖精のようです。
 湿潤な気候に適応するため殻がどんどん小さくなってきておりまさに進化の真っただ中です。
オガサワラオカモノアラガイは小笠原諸島に分布するオカモノアラガイ科の陸産貝類2種のうちの1種で、樹上性(樹の上部で生活する)で小笠原固有種のカタツムリです。
もう一種はテンスジオカモノアラガイです。

[テンスジオカモノアラガイ]

2種とも国指定の天然記念物であり、種の保存法の国内希少野生動植物種でもあります。環境省レッドリスト2020では絶滅危惧I類 (CR+EN)に指定されています。
どちらも標高が高い湿潤帯にのみ生息しており、雨上がりの雲霧林でよく見かけることができます。
かつては父島にも生息していましたが、生活環境の変化や外来の肉食性プラナリアの侵入等様々な理由により現在では絶滅したとされており、今は母島だけに生息しているとされています。


[プラナリア(ニューギニアヤリガタリクウズムシ)]*父島に生息

今後、母島へプラナリア等貝食性の外来種の侵入を許せば被害は大きく、母島のオガサワラオカモノアラガイも父島と同じ運命をたどってしまうかもしれません。
そうさせないためにはこのような獰猛なハンター達の母島への侵入をなんとしても防がなければなりません。プラナリアは塩や酸に弱いので、母島への来島の際は定期船「ははじま丸」乗船前に靴底を海水で洗ったり、山林に入る際に靴底に酢をスプレーするなどの対策で、プラナリアの侵入とその脅威を大きく減らすことができます。
[外来種除去装置]

母島に元々住んでいた生物達が人間の活動の影響で滅んでしまうのは悲しいことです。
今後もオガサワラオカモノアラガイのような魅力的な生物と出会えるよう、固有の生き物たちの生活環境を守り、進化を見届けたいと思いませんか?

[オガサワラオカモノアラガイ]