アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。兄島 大丸山の囲い込み柵について
2023年07月11日
小笠原
みなさん、こんにちは。
2023年6月に父島の小笠原自然保護官事務所に着任した河村です。
初めての兄島での業務が、グリーンアノール対策の一つである大丸山の囲い込み柵に関する調査への同行でしたので、今回はこちらについて紹介します。
2023年6月に父島の小笠原自然保護官事務所に着任した河村です。
初めての兄島での業務が、グリーンアノール対策の一つである大丸山の囲い込み柵に関する調査への同行でしたので、今回はこちらについて紹介します。
はじめに
グリーンアノールは、父島、母島の2島に生息している特定外来生物の一つです。2013年には兄島南部で初めて発見されました。兄島では、粘着トラップでの捕獲、分布拡大を防ぐ柵の設置などの対策を行っています。今後兄島で取り組む重要なテーマとして①大丸山保全地域の昆虫の保全と、②島北部エリアと兄島の隣にある弟島への拡大リスクを低減することの2つがあります。今回は、①に関する話題です。
なぜ大丸山地域の保全が必要なのか
外来の生物すべてが元々の生態系に影響を及ぼす訳ではありませんが、グリーンアノールの影響は甚大です。父島、母島では、昼に活動する昆虫がすでに激減しています。兄島においても、このままグリーンアノールの生息域が徐々に拡大していくと、昆虫の生息に大きな影響が出ることが予想されます。花粉を運んだり落ち葉を分解したりする昆虫の減少は、兄島に残る希少植物を含めた生態系全体の問題にもつながります。
兄島南部からの拡散を防ぐための柵を越えて、2021年には、グリーンアノールが兄島の中北部にも生息域を広げていることが分かりました。柵での対策は維持しつつ、昆虫類の保全のために重要なエリアを絞り、そのエリアを囲う案が打ちだされ、検討が進んでいます。昆虫調査の結果からは、裸地、草地、低木林、湿地などがあり昆虫相がバランス良く豊かに生息している大丸山のエリアが最も保全の優先度が高いと判断されました。
兄島南部からの拡散を防ぐための柵を越えて、2021年には、グリーンアノールが兄島の中北部にも生息域を広げていることが分かりました。柵での対策は維持しつつ、昆虫類の保全のために重要なエリアを絞り、そのエリアを囲う案が打ちだされ、検討が進んでいます。昆虫調査の結果からは、裸地、草地、低木林、湿地などがあり昆虫相がバランス良く豊かに生息している大丸山のエリアが最も保全の優先度が高いと判断されました。
どのように作るのか?
大丸山地域を囲い込んでグリーンアノールの侵入を防ぐ柵の設置計画は、来年度の工事開始を目標に動き始めています。最初に柵の設置ラインの選定が進んでいます。また、設置する地点やその周辺に生えている樹木の伐採や剪定が必要であり、2023年6月には、伐採木の調査が始まりました。
完成後の展望
囲い込み柵の完成後は、エリア内へのグリーンアノールの侵入対策を継続的に行っていくことになります。兄島固有種などを可能な限り保全することが期待されます。グリーンアノールの防除技術開発が進み撲滅が可能になった際には、グリーンアノールのいない環境で昆虫類が再び増えていくことが期待されます。
おわりに
小笠原自然保護官事務所では拠点のある父島、母島以外の無人島でも多くの仕事を行っており、アクティブレンジャーも行く機会があります。これから、アクティブ・レンジャーの業務に関すること、今後も、色々な小笠原の生き物のこと、小笠原国立公園の魅力などを発信していきます。よろしくお願いします。