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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

母島生態系変化の象徴的存在 アカギ

2024年01月30日
母島 太田隼人
小笠原は近年数多くの外来種による生態系への影響の問題に直面しています。
その中でも爆発的な繁殖力を持つアカギは母島において頻繁に見られる外来樹木です。
 
アカギは名前の通り赤褐色をした常緑高木樹です。
薪の不足で小笠原諸島に沖縄から明治時代(1905年以前)に移入された外来種で、
1983年11月に小笠原を襲った台風17号以降爆発的に広がってしまいました。
 
アカギに限らず、小笠原の固有の動植物は海洋島という閉鎖的な環境で暮らしてきたので外来生物によって圧迫・駆逐されてしまいます。
 
特にアカギは耐陰性も高く、固有種より実生が早く成長します。
伐採しても切った部分からすぐに葉が生えてそのまま伸長するので大変です。
 
母島のアカギ林
固有種への影響例をあげると桑の木山、石門入り口では高木はウドノキやシマホルトノキに代わって、ほぼアカギとなっています。
また、絶滅の危機に瀕しているオガサワラシジミの餌木となるオオバシマムラサキを被陰してしまうことでも問題視されてきました。
 
オガサワラシジミとオオバシマムラサキ
流水性の沢で繁殖するハナダカトンボへの影響も小さくはありません。
アカギが増加して、沢の上を覆ったり、ハナダカトンボが利用してきた森林の階層構造を変えたことで、生息できる沢を減らしてしまったと考えられています。
 
ハナダカトンボ
このようにアカギは多くの小笠原の動植物にとってやっかいな存在です。
 
以上の理由から環境省は外来植物対策の一つとしてアカギ駆除を実施しています。
渓畔部のアカギ高木の駆除処理等によってハナダカトンボの生息確認数が改善することも報告されています。
 
私個人としては母島ARとして定期的に環境省の管轄である新夕日ヶ丘自然再生区において支障木伐採の一環でアカギ駆除を行っています。
新夕日ヶ丘支障木伐採作業
また母島ではアカギ等の外来植物の駆除、自然再生の取り組みをについて知ってもらいたいとい、駆除したアカギを有効活用してもらいたい、ということで毎年木工教室を開催しています。
2006年から続く木工教室は今年で16回目を数えました。
 
現地に来て色々な問題に直面する中で、環境問題の改善には地元の理解を深めることが大切なことだと感じています。
アカギ材で作った箸