関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

伊丹市昆虫館より、オガサワラハンミョウに関する嬉しいニュース

2024年06月11日
小笠原 河村雅史

はじめに

今回は、オガサワラハンミョウ関連の話題です。

小笠原自然保護官事務所がある小笠原世界遺産センターでは、小笠原の固有種で、国内希少野生動植物種のオガサワラハンミョウの飼育(生息域外保全)を行っています。実は、小笠原から遠く離れた兵庫県の伊丹市昆虫館でも生息域外保全を行っていますが、元をたどれば伊丹市昆虫館で最初にオガサワラハンミョウの飼育技術が確立され、その技術を小笠原世界遺産センターに移転し、小笠原でも飼育が始まったのです。
オガサワラハンミョウ(提供:伊丹市昆虫館)

そもそも生息域外保全とは

「絶滅危惧種をまもるため、安全な施設に生きものを保護して、それらを増やすことにより絶滅を回避する方法を『生息域外保全』といいます。」

生息域外保全について | 自然環境・生物多様性 | 環境省
 

野生生物保護功労者表彰受賞 ~伊丹市昆虫館~

その、兵庫県の伊丹市昆虫館に関する嬉しいニュースが届きました。

オガサワラハンミョウを含む国内希少野生動植物種の域外保全活動に長年取り組んできた功績から、伊丹市と、伊丹市昆虫館の管理団体である公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団が、令和6年度 野生生物保護功労者として表彰(公益財団法人 日本鳥類保護連盟会長賞)されました。

伊丹市昆虫館は、オガサワラハンミョウの飼育を通算13年行っており、累代飼育に成功するなど、生息域外保全の確立・維持に大きな貢献をしています。オガサワラハンミョウだけでなく、南西諸島に分布するフチトリゲンゴロウや、岡山県の一部に生息するフサヒゲルリカミキリなど、5種の国内希少野生動物種の生息域外保全に携わっています。また、絶滅危惧昆虫の現状や保全の取組などについての普及啓発や、有識者会議への参加を通した情報提供など、保護増殖事業への協力を行ってきました。これらの功績により、今回の受賞となりました。
野生生物保護功労者の賞状(提供:伊丹市昆虫館)
伊丹市昆虫館では、オガサワラハンミョウ、フチトリゲンゴロウ、タガメ、ゲンゴロウなどの生態展示も行われているとのことで、この機会に是非訪れてみてはいかがでしょうか?

小笠原世界遺産センターでの最新の展示・飼育状況

最後に、小笠原世界遺産センターでの展示・飼育の様子の写真を紹介します。
生育状況によって、成虫・幼虫の生態展示をしているほか、オガサワラハンミョウの飼育の日には、ガラス越しに作業の様子をご覧いただくことができます。
小笠原にお越しの際は、ぜひご見学に来てみてください。
幼虫の展示ケース(夏には、ここで成虫の生態展示も行っています)
幼虫の展示(3齢幼虫の大きな丸い巣穴)
幼虫の飼育の様子(試験管1本に1匹ずつ暮らしています)
食べ残りエサの取り出し
試験管に付着した排泄物を綿棒で拭き取る様子(幼虫は、巣穴入口から外に向かって排泄するようです)
成虫の飼育ケースの様子(今年は既に羽化したものがちらほら)
オガサワラハンミョウを含め、絶滅の恐れのある昆虫を少しでも危機的な状況から救えるよう、これからも協力機関と共に取り組んでいきます。