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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

妹島オガサワラセセリ調査(母島属島調査)

2024年08月01日
母島 太田隼人
今回はオガサワラセセリ調査で妹島を訪れた際の様子についてご紹介します。
母島属島の海岸線を除いた内陸部は一般の立ち入りが制限されていますが、調査・保全等必要のある場合は、必要な手続きを経た上で林内に入ることができます。
 
ただ、母島属島は大半が遠浅の岩礁帯に囲まれ、あるいは切り立った崖となっており上陸が容易ではありません。船で島に近づいた後、予め積み込んだカヤックに乗り換えて着岸します。海況によっては転覆しないよう注意が必要となります。
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カヤック上陸の様子
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上陸地によっては狭い入り江を入っていくことも
オガサワラセセリは主に幼虫の餌となるオガサワラススキが多い海岸線で繁殖しますが、そういった場所は崖地になっていることも多いので足元に気を配りながら調査を行っています。
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セセリ調査の様子
オガサワラセセリの幼虫はススキの葉を丸めて巣を作る習性があります。この巣を目印に、数人で手分けしながら島中に散らばるススキ帯を丁寧に探していきます。
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オガサワラセセリ(幼虫)の巣
小笠原固有種のオガサワラセセリは環境省レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類【EN】に分類されていますが、もう何年も見られていないオガサワラシジミ(絶滅危惧ⅠA類【CR】)と違って毎年母島列島での繁殖が確認されています。しかしススキ帯のみで繁殖する種なので生息域が狭く、稀少であることに変わりはありません。また、そのススキ帯も同じような環境を好むギンネムやモクマオウなどの外来植物の侵入によって圧迫されてきています。さらに、母島においてはグリーンアノールによる捕食も減少要因の1つとも考えられています。調査等で母島属島に行く際には、荷物の中にアノールをはじめ外来種が紛れ込んでいないかよく確認することが重要です。
 
しかし、そのように注意をして行動していても、気づけば新たな外来種が侵入していることもあり、母島ARとして業務にあたる中で、オガサワラセセリに限らず、海洋島での固有種の保全の難しさを痛感しています。
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モンパノキの花の蜜を吸うオガサワラセセリ