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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

裏砂漠の「新しくなった」草原 ― 火災3ヶ月後の様子

2024年08月01日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
今回はガではなく、(珍しく)別の虫を紹介します。
 
ハンミョウの仲間の「カワラハンミョウ」。
写真に納められたことで同定できました。
背中の模様や全体の色合いだけではなく、胸部の毛などからも、似ている他のハンミョウの仲間との区別が付くそうです。
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△ 黒っぽい溶岩と見事に同化している 干からびたミミズと比べると小ささがよく分かる 
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△ 「カワラハンミョウ」 環境省レッドリスト:絶滅危惧ⅠB類(EN)
最近まで全く知らなかった(から興味を持てなかった)生き物のうちの一つでありますが、やはり知れば知るほど何でもハマります。笑
小さいのと、歩いているとすぐ飛んでしまうので、観察の難易度は少し高めです。
 
昔は本土でも、河川沿いなどで見られた普通種だったようですが、近年では護岸工事などの影響で数を減らしてしまい、環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類(EN)、東京都のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
 

裏砂漠の火災から3ヶ月

あっという間に季節が駆け巡っていきます。
あの後、植物たちはどのように成長したのでしょう?
今年の梅雨はイレギュラーで、あまり雨も降らなかったため、気になります。
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△ 火災3ヶ月後の様子 
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△ 雨は降らずとも、霧のおかげで青々としているのだろうか
火災2ヶ月後は1ヶ月後と比べ、大きな変化があったため驚きました。
その影響か、3ヶ月後は思ったほど驚きませんでした。

ただよく見ると、ハチジョウススキは更に伸び、より草原感が増しています。
燃えた箇所の新しい葉は、燃えていない箇所と比べても青々としていました。
風が強い日だったので、ススキの葉も元気になびいていました。
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△ 背丈が増したススキ
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△ 手前の焼けていないススキは乾燥して黄色がかっているのに対し、後ろの焼けた箇所は青々としている
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△ 風になびくススキが「草原感」を漂わせる
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△ 新しい葉は縁のギザギザが目立つ
木の葉の再生は、ぱっと見分からない程度だったかもしれません。
葉っぱが残っている枝は少し伸びていたのと、新緑は日を重ねて濃い緑に変わっていました。

一度燃え切った木に関しては、時間の経過と共に下からひこばえ(木の根元から生える若芽)が生えてくるのか、それとも他の場所から芽が出てくるのか、楽しみです(樹種にもよるかもしれません)。
草よりも木の方が影響を受けているのも、このように変化を追っていくとはっきり見えておもしろいですね。
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△ 無事だった枝先を少しずつ伸ばす木
延焼を免れた、ハチジョウイヌツゲのメスとオスの木に出会いました。
最初はメスの木の緑の実が目についたのですが、隣の木は実がついていなかったので、そこで「夫婦」なんだなと気付きました(想像です。笑)。
オスの木は新芽を伸ばしており、まだ少し花も咲いていました。
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△ ハチジョウイヌツゲ 雌雄異株と初めて気付かされる 
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△ 左が雌、右が雄
そして、毎年見ているはずなのに忘れていた、大量の干からびた○○。
数が少なければ素通りしてしまいそうですが、無数にいたのでさすがに思い出しました。
今この瞬間も、周辺の林内では落葉を土壌に変えてくれているのでしょうか。
南無阿弥陀仏。
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△ 大量に干からびたミミズ 周辺の林内の地中もミミズだらけなのだろうか

早朝の出逢い

早起きは三文の徳?
うれしい(うれしくない)出会いも。
相変わらずハチジョウイタドリの芽が食べられてるなあと見ていると。
いました!
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△ お食事中のキョンと遭遇 
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△ すぐ茂みに逃げられる場所から、顔をひねって器用に食べている
キョン(特定外来種)がイタドリの芽を食べています。
私の気配を察知して隠れたかと思いきや、今度は茂みの近くからむしゃむしゃ。
島民の数倍はいるとされている、キョンに罪はないのですが、農作物だけではなく希少種を食べてしまうのはなんとかしたいですね。
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△ ハチジョウイタドリに沿って続くキョンの足跡
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△ 新鮮な食べ痕

サクユリの季節

丁度、サクユリも見頃でした。
裏砂漠は三原山より少し標高が低いこともあり、時期は少し早めで、7月中旬頃より見頃を迎えます。
三原山では7月下旬(終わり)がチャンスです。
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△ 裏砂漠にぽつんとたたずむサクユリ 後ろに櫛形山
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△ ハナバチが寄ってきていた
不思議なことに、当日は島曇りしていたのにも関わらず、標高の高い裏砂漠周辺でも霧が出ていませんでした。
少し涼しかったからでしょうか。
途中気温が上がると、気付けば櫛形山も三原山も雲の中でした。
 
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△ 当日朝は霧も下りておらず、見晴らしが良かった
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△ 今後も変化が楽しみな、「新しい」草原
毎度新たな発見が多過ぎて書き切れません。
3年半住んでみても、まだまだ楽しみがあちこちに潜んでいます。
また次の日記で会いましょう。