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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

オガサワラハンミョウの幼虫の暮らしに迫る。

2024年09月13日
小笠原 河村雅史

はじめに

小笠原諸島ではオガサワラゼミの声が聞こえ始め、少しずつ秋に向かって季節が進んでいるように感じるこの頃です。
セミの他にも、オガサワラハンミョウの成虫が見られる時期になってきました。

古くは父島でもオガサワラハンミョウの生息記録がありますが、現在は父島の北に位置する無人島・兄島の限られた裸地(植生が少なく、岩、砂などの露出した場所)にのみ生息しています。オガサワラハンミョウは幼虫~成虫まで肉食で、裸地上にいる他の昆虫類などを捕食していると考えられていますが、具体的な捕食の頻度や対象についてはあまりわかっていません。

2023年末から地域のNPOである小笠原海洋島研究会が中心となり、研究者 や環境省の協力のもと、オガサワラハンミョウの幼虫の生態の調査が始まっています。調査は、幼虫の巣穴が写るように、長時間の撮影が可能な小型のカメラを設置して、録画データを持ち帰る方法を取っています。2024年の1月から7月に隔月で計4回の調査を実施しています。今回の日記では、5回目となるカメラの設置と回収(8月、9月)で兄島を訪れた際の様子を紹介します。

カメラ設置の日・8月

兄島の磯場に船をつけてもらい上陸します。そこから台地上の生息地まで歩きます。
オガサワラハンミョウの幼虫は、地面に縦穴を掘って穴の中で生活しています。
撮影する巣穴が決まるとカメラの設置を行います。
オガサワラハンミョウの3齢巣穴
カメラを設置した様子
カメラの設置と並行してタブレット端末の操作を行い、撮影開始に必要な指示をカメラの機械に送信します。
タブレット端末で撮影指示を出す
撮影開始を確認して、終了です。

この日はオガサワラハンミョウの成虫を1匹見ることができました。
晴天で地表面の温度も高いのか、脚を伸ばしてできるだけ地面から距離を取った姿勢に見えます。
オガサワラハンミョウの成虫

カメラ回収の日・9月

撮影の終わった装置を回収に行きます。
1週間~10日程度の間、幼虫の様子が撮れているはずです。
回収前の撮影装置
大事なデータと、撮影装置一式を無事に持ち帰るまでがこの日のミッションです。

9月になって成虫が沢山いるかと予想していましたが、3齢幼虫の巣穴が多く見られ成虫の時期はまだこれからという感じでした。
少し固めの地盤にまとまって開けられた3齢の巣穴

おわりに

収集した動画から、幼虫の成長段階(1齢、2齢、3齢)ごとに、何をどのくらいの頻度で食べているかを記録します。これからのオガサワラハンミョウの保全を考えていく上で重要な知見となるこの研究の成果の発表と、これからの保全に生かされることへの期待が高まっているように思います。今回は、国内希少野生動植物種オガサワラハンミョウの生息地での調査・研究の様子を紹介しました。