関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

母島列島の陸貝の紹介1

2024年09月25日
母島 太田隼人
小笠原は海洋島という環境の中で種分化を経た多くの固有陸産貝類(以下陸貝)が生息しています。
多種多様な陸貝の存在は生物進化のモデルであり小笠原が世界自然遺産として評価される大きな要因となりました。
母島にも多くの固有種の陸貝が生息しているので少しずつ紹介していけたらと思います。
 
まずは身近で、集落から歩いてわずか十数分の遊歩道でも観察出来るアケボノカタマイマイです。殻の裏側の中心部分が夜明け前の空のような色をしていることから「アケボノ」カタマイマイと呼ばれています。殻の深い色味がなかなか美しいです。
 
ALTテキスト
地上性のアケボノカタマイマイ
小笠原にいるナンバンマイマイ科に属するカタマイマイの仲間は何種類かいますが、そのうちの何種かは外見での判別が難しく地上性か樹上性、あるいは住んでいるエリアで区別するそうです。例えば乳房山周辺に生息する樹上性のオトメカタマイマイ、石門周辺の樹上性のヒメカタマイマイなどです。この2種に関しては、以前は同種だと思われていましたが剖検及び遺伝子解析の結果別種になりました。
ALTテキスト
オトメカタマイマイ(左)とヒメカタマイマイ(右)
続いてはハゲヨシワラヤマキサゴという樹上性の陸貝です。
カタツムリの仲間の多くが雌雄同体でオス・メスの区別がないのに対し、ヤマキサゴの仲間は雌雄異体です。また、殻の口に蓋があり目が触覚の根元にあることも特徴としている小型の陸貝です。
ハゲヨシワラヤマキサゴも殻の幅7ミリ前後と小さく、森の中で見つけるのがなかなか難しいです。
成貝になるまでは殻にうっすらと毛のようなものが形成されていますが、成長とともにこの毛はなくなってしまいます。そこで「ハゲ」と名付けられたようですが、なかなか不名誉な呼ばれ方をしているものです。
 
ALTテキスト
ハゲヨシワラヤマキサゴ
今回最後に紹介するのはハハジマキセルモドキ。
ALTテキスト
どこにいるかわかりますか?
天敵である鳥に食べられないために木に擬態していると考えられます。
樹皮を削り取って、自分の粘液と混ぜて殻にくっつけることで、付いている木と質感が似ます。
もちろん我々探す人間側もよく騙されてしまいます。
じっくり見ないと木のコブにしか見えません。
色味といい中々完成度が高いですね。
 
今回は以上になりますが小笠原にはまだまだ沢山の陸貝がいるのでまたの機会にご紹介したいと思います。