関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

伊豆諸島のヘビとトカゲはなにが違うの? @神津島! 子どもパークレンジャー

2024年11月11日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
夏の思い出とお別れができていないまま、気付けば冬を迎えようとしています。涙
今年は暑さが10月頃まで続き、けれど週末は天気が悪かったりして、例年の方がたくさん海遊びした気がします。
最後に夏をちらっと振り返りますので、良ければお付き合いください。
代替テキスト
△ 神津島の港周辺にて、「海の散歩」をするアオウミガメ
代替テキスト
△ 神津島には秘境のような場所も、ぜひ訪れて探してみてください

子どもパークレンジャーとは?

さて、今年はアクティブレンジャー写真展だけではなく、「子どもパークレンジャー」のイベントも、神津島で実施することができました!
伊豆諸島地域においても、自然観察などを通して、地元の子ども達が「自然への興味や理解を深め」「環境保全の大切さを学んでもらう」という取組です。
(写真提供(イベントの写真 ):神津島観光協会)
代替テキスト
△ 子ども達をレンジャーに任命!

伊豆諸島のヘビとトカゲは何が違うの?

伊豆諸島のシマヘビとオカダトカゲは、独自の進化を遂げていることをご存知ですか?
しかも島によっても特徴が異なるんです!
今回はこれをテーマに、親子向けの観察会と講演会を企画しました。
長年、伊豆諸島のヘビとトカゲの関係性などを研究されている長谷川雅美先生(東邦大学名誉教授)をお呼びして、親子向けの観察会と講演会を実施しました。
国立公園、エコツーリズムについてもお話しがありました。
代替テキスト
△ 長谷川雅美先生によるお話し
代替テキスト
△ 国立公園のお話し
代替テキスト
△ 神津島のエコツーリズムのお話し

島によって色が違う!?! トカゲの尻尾

具体的に、伊豆諸島のヘビとトカゲはなにがすごいのか?
神津島を例に挙げてみましょう。

本土でも、「青い尻尾のトカゲ」を見掛けたことはありませんか?
伊豆諸島では島によって、オカダトカゲの尻尾の色の違いが見られるんです!
そもそもトカゲの「しっぽ」は、なぜ青いのでしょうか?
 
トカゲはしっぽを切って逃げる種が多いことで有名ですよね。
実は、しっぽを切ることと青いこと、繋がりがあるんです。

(ここに「青いしっぽのトカゲの写真」を入れたかったのですが、良い写真を撮れておらず、残念!)
 
トカゲは天敵が多く、普段からトリやヘビ、ネコ、イタチなどから身を守らなくてはなりません。
捕まりそうになると、しっぽを自ら切断することで、相手を惑わしその隙に逃げます。
ただ、一時しのぎにはなっても、しっぽが元の長さまで再生するには時間がかかり、しっぽが切れた状態の間は天敵に捕まりやすくなってしまいます。
そのため、トカゲもなるべくしっぽを切らずに、逃げたい訳です。
 
そこで、相手を惑わす作戦のもう一つとして、青い色のしっぽを進化させました。
青く見える仕組みは、皮膚の色素細胞の構成で、それによって色や模様が作られます。
体に比べてしっぽが青いと目立ちますよね。
青いしっぽの個体は生存戦略において有利だったため、そのような特徴が定着したと考えられます。

島毎に異なる特徴、その理由は?

トカゲにはたくさんの天敵がいます。
伊豆諸島の場合、島毎にいる生き物も少しずつ違います。
例えば、イタチがいない無人島や、ヘビが少ない島など、生物相に偏りが見られます。
 
すると、「島毎にトカゲの特徴が違う理由」は?
そう、「島毎に天敵の種類が異なるから」なんですね!
 
シマヘビやイタチがいる島は、青い尻尾の個体が多いようです。
比べて、アカコッコが主な天敵である三宅島では、尻尾はなんと青くなく、茶色っぽい個体が多いそう。
島同士が近くても、やはり海で隔たれている以上、長い年月をかけて進化しています。
代替テキスト
△ シマヘビ 新島の個体 2022年撮影
代替テキスト
△ イタチ 大島の個体 2022年撮影
実は、青い尻尾を持つのは、オカダトカゲやニホントカゲ以外にも、世界中のトカゲで見られます。
このように、別の場所で同じ目的のため似たような進化をすることを、「収斂(しゅうれん)進化」と呼びます。
図鑑などで調べてみると、他にも青や緑の尻尾を持つトカゲの仲間がたくさんいることが分かります。

他にも色々な進化が見られる、伊豆諸島のヘビとトカゲ

ヘビとトカゲは、食うと食われるの関係で、互いに進化しながらいかに生き延びられるか競い合っています。
なので、トカゲは逃げる方法を、ヘビは逃がさない方法を、常に編み出しながら命を繋いでいます。

ここでは紹介しきれませんが、しっぽ以外にも、伊豆諸島では以下のような進化が見られるそうです。
・シマヘビの体色の違い
・オカダトカゲの脚の長さ
・オカダトカゲ、シマヘビの体温の違い
・シマヘビの頭の大きさ
・シマヘビの巻き付く力の強さ
などなど!
(ご興味のある方は、長谷川先生の研究一覧が東邦大学のHPなどで見られます。)
代替テキスト
△ 当日捕まえたオカダトカゲ2匹 この子達のしっぽは茶色いですね 神津島でも、全個体のしっぽが青い訳ではないようです
これらを全て研究されてきたのが、長谷川雅美先生と研究室の学生さん達です。
伊豆諸島で長い間、生き物たちだけでなく、環境や文化、地域に住む人々と向き合ってきたからこそ、見えてきたものがあるのではないかと思います。
伊豆諸島は研究がされていない生き物がたくさんいるため、これからも研究が少しずつ進み、伊豆諸島の自然のあれこれが解明されていったら良いなと個人的には感じています。
 
伊豆諸島は、小笠原や他の地域のような固有種は多くないものの、今まさに進化を遂げている種をたくさん見ることができることが魅力と言えます。
それらは、ぱっと見では分からないことも多いのですが、頻繁に目に触れたり、じっくり見たりしているうちに、違いが見えてきます。

爬虫類の体温は気温や地温に影響されている

観察会では、トカゲを釣る作戦でしたが(もちろんトカゲに安全な方法で)、暑すぎたからかトカゲもヘビもおらず。
代わりに、爬虫類(変温動物)の体温と気温の関係などを、特殊な温度計を使って実験しました。
自然を相手の観察会は、やはり天気などに影響されるため、タイミングが中々難しいですね。
お昼休みはスタッフでトカゲとヘビを探しに行き、無事捕まえた何匹かを、午後子ども達に見てもらいました。
代替テキスト
△ 観察会の様子 トカゲやヘビの体温を特殊な温度計にて実験
代替テキスト
△ トカゲになる先生
中でも、興味津々の子がいて、ヘビと触れ合っていました。
逃げようとするヘビをぎゅっとすると、捕まると思い余計に逃げようとします。
そんな中、その子に、そっと手のひらに乗せると落ち着くよと教えてあげると、すぐにでき、嬉しそうにしてくれたのが印象に残りました。
代替テキスト
△ シマヘビやオカダトカゲと触れ合う子ども達 
代替テキスト
△ やさしく手のひらに乗せてあげれば、シマヘビも落ち着きます
一人でもこうやって、自然や生き物との繋がりを感じられる人が増えれば、例えみんなに届けるのはむずかしくても、世の中は良くなっていくのかなと希望を感じました。
自然と触れ合う機会が減ってる今だからこそ、ただただ子ども達が自然と触れられるような企画を、今後も作っていけたら良いなと思っています。
 
「島の自然と生物の変化」を長く記録されてきた長谷川雅美先生のような方々のおかげで、伊豆諸島の今後の変化にも興味が湧きますね。
当日は暑い中、来てくださったみなさまに感謝です。

「大事にする」ことは、「知る」ことから始まります。
伊豆諸島の自然の良さを感じてもらえるような発信をこれからも続けたいです。

 
代替テキスト
△ 神津島の集落 人口2,000人ほど
代替テキスト
△ 神津島から見る、式根島から大島までの景色
代替テキスト
△ 神津島のほとんどは切り立った山 中心には「花の百名山」の天上山

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

Get ADOBE READER