アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
伊豆諸島の紫陽花リレー:ラセイタタマアジサイ<伊豆諸島地域>
2018年08月15日梅雨が明けて猛暑の到来、夏休み真っ只中ですね。
しかし、「梅雨の花」として知られるアジサイが夏季も見られるってご存じでしたか?
伊豆諸島には、主に2種類のアジサイが自生しています。
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○ ガクアジサイ
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○ ラセイタタマアジサイ
ガクアジサイは入梅時(6-7月)に花を咲かせますが、ガクアジサイが花期を終えた頃ラセイタタマアジサイの出番がやってきます。まさに今からが見頃です!
ガクアジサイとラセイタタマアジサイは共に伊豆諸島の準固有種で、伊豆諸島地域の全ての有人島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島)で見られます。
伊豆諸島ではこの2種のアジサイがセットで分布することが多く、沢筋の不安定な立地等に群落を作ります。林の縁にもよく自生しているので、山側の車道を通れば簡単に見つかります。
※ガクアジサイについては、昨年度の花期に記事にしたので詳しくは以下をご覧下さい
https://kanto.env.go.jp/blog/2017/06/post-380.html
では今回紹介するラセイタタマアジサイとはどんなアジサイでしょうか?
一言で言うと、とにかく大きい!!
これは、ラセイタタマアジサイ(左)とガクアジサイ(中央)と一般的なアジサイ(右)の葉っぱを比較してみたものです。
ガクアジサイも普通のアジサイより大型ですが、ラセイタタマアジサイはそれをさらに上回るこのサイズ!
2mほどの低木がこのサイズの葉を付けるとなると、その存在感は圧巻です。
その様子から、大島では「サワフサギ(沢塞木)」なんて別名があります。
(2018/8/7 大島・間伏林道にて撮影)
なるほど、びっしり沢を塞いでいますね!
分かりにくいかもしれませんが、中央の赤いラインが沢の流れです。
若い火山島である大島は、土壌に多く火山灰が含まれているため大変水はけがよく、川や池はほとんどありません。雨が降ったときしか沢に水は流れませんが、紫陽花とは根っこの強い植物なのでその流れにも耐えられるのでしょう。
ラセイタタマアジサイの「タマ」は、その蕾が球形であることから由来すると言われています。
直径3-4cmほどのまんまるの蕾です。
一般的な花をイメージすると、何枚かの苞葉が花を一包みにしているのかと思ってしまいますが、なんとこのラセイタタマアジサイ、それぞれの苞葉の間に蕾を持っているようです。
外側から内側へ、苞葉⇒蕾⇒苞葉⇒蕾...と交互にサンドイッチされているような構造なのですね。
全ての蕾が開ききっても、ラセイタタマアジサイの花は葉っぱに足して小振りなものです。
ガクアジサイほど色味のバラエティもなく、白~淡紫色と控えめで質素な咲き姿がまさに「日本の花」といった様子です。
ちなみに、花に見える部分は「装飾花」と呼ばれる萼片(がくへん)であり、おしべやめしべは持っていません。種を作るのは、中央にある本物の花たちです。
ガクアジサイ-ラセイタタマアジサイ群集は、伊豆諸島固有の風景です。
ここでしか見られない野生植物を、ぜひ観察しに来てください。