2021年2月
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2021年02月05日【小笠原】冬も花が咲く島
小笠原国立公園 坂田彩
みなさんこんにちは。
小笠原の坂田です。
早いもので2021年になってから1ヶ月以上過ぎてしまいました。
今年も小笠原の美しい自然についてお伝えしていけたらと思っています。
【休日に見つけたウミウシのベニヤカタガイ】
小笠原の冬は風が冷たく、寒さが身にしみる日もありますが、日差しが出ると暖かく感じる日も多いように感じます。
・・・本土に比べれば暖かいのでしょう。
そんな小笠原の山の中では冬でもたくさんの小笠原固有植物の花を見ることができます。
今回はその一部(木本類)をご紹介いたします。
△~チチジマクロキ~
ハイノキ科、ハイノキ属、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に指定される小笠原の固有種。
父島・兄島に生息し、花期は10月~12月といわれています。
こちらの写真も12月末に見つけて撮影したものです。
透けるような白い花が美しく魅力的!!
昼間に見るのも良いですが、月の光に照らされる夜も素敵かも知れませんね。
△~ナガバキブシ~
キブシ科、キブシ属、父島・兄島に生息する国内希少野生動植物種の一つ。
少し明るい低木林内に生息する小笠原固有の変種でもあります。
薄緑がかった花は葉っぱに混じっているとちょっと見つけにくいですが・・・
太陽に照らされて輝く鈴なりの花はとても綺麗ですね~
△~ムニンシャシャンボ~
ツツジ科、スノキ属、父島・兄島のやや乾燥した岩石地に自生している小笠原の固有種。
花期は1~4月ですが、こちらは12月末に撮った写真です。
あわてんぼうな子達がちらほらと咲き始めていたようです。
1cmほどの花が風に揺られている様はとてもかわいらしく、癒やされます。
外出自粛期間が続いていますが、季節の写真を見て少しでも小笠原の自然を感じて頂けたら幸いです。
2021年02月03日【小笠原】ハートロックで近自然工法
小笠原国立公園 近藤希
みなさんこんにちは。
冬は山登りを楽しもうと意気込んでいましたが、結局毎週末海に入っています。
先日、父島のトレッキングスポットとして有名なハートロックで、近自然工法による整備を行いました。
作業をしたのは、矢印のあたりです。
(近自然工法については、過去のAR日記でご紹介しています。)
▲海上から見ると赤い岩肌の部分がハート型に見えることが名前の由来になっています。
ハートロックの頂上は植生が乏しく、赤土が露出しており、土壌流出が目立っています。
理由は色々考えられますが、多くの人がこの場所を訪れることが、土壌流出を加速させる一因となっていることは確かです。
そこで、少しでも流出を食い止め植生を回復させるために、合同会社北海道山岳整備の皆さまにご指導いただきながら、作業を行いました。
▲標石を見ると、かなりの赤土が流出していることが分かります。
この日は東京都レンジャー、小笠原村役場、林野庁、ツアーガイドさんなど、総勢15名が参加しました。
ヤシネットで石を海苔巻きのように包んだものをいたる所に置き、流れてきた土壌を受け止め、最終的にはそこに植生を回復させていく狙いです。
どこにどのように設置すればうまくいくか、水の通り道や地面の傾斜など、あらゆる角度から想像力を働かせて検討します。上手くいった場合に継ぎ足していけるように、将来も見据えた施工をしなければなりません。奥が深いです。
場所が決まったらいよいよ設置です。
▲ヤシネットの上に石を乗せます。石を集めて運ぶのはかなりの重労働です。
1月とはいえ日差しが強く照りつける中、力を合わせて完成させました。
▲Before
▲After
近自然工法を実際に行ってみて、愛着の湧く施工方法だなあと感じました。
上手く施工すれば時間が経つにつれて自然に馴染んでいくそうです。
人にも自然にも優しく景観も損なわない技術。
今回のように多くの人が作業に関わることで、技術を持った人が増え、広まっていくと良いと思います。
2021年02月01日伊豆半島のジオサイトを紹介します! 第2弾
富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大
みなさん、こんにちは。小さい頃はバウムクーヘンを一層ずつ剥がして食べていた齋田です。
大人になった今では生クリームをたっぷりかけて頬張っています。
さて、前回の日記に引き続き、富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域で見られるジオサイトをご紹介します。
第2回目となる今回の日記では、「しましま模様」と「ハートの地形」が特徴のジオサイトについて、その見どころを解説します。
■恵比須島 (静岡県下田市)
下田市の須崎に位置する恵比須島は、橋で渡ることのできるとても小さな島です。
島の外周に整備された遊歩道からは、海底火山の噴出物によって形成された地層を見ることが出来ます。
【静岡県下田市 恵比須島】
この洋菓子のようなしましま模様は、軽石や火山灰によって形成された地層です。
伊豆半島南部には、はるか昔の海底火山の噴出物が広く分布しています。海底火山時代の後に隆起と浸食を繰り返し、本来は海の下の深くに埋もれていたはずの地層が地上で見られるようになったと言われています。
地学は全くの専門外なのですが、このジオサイトのしましま模様からはなんとも不思議な魅力を感じます。
■龍宮窟 (静岡県下田市)
海底火山の噴火によって降り積もった軽石や火山灰の地層に波が打ち付けると、波の当たる方向にだんだんと削られていき、海食洞と呼ばれる洞窟が出来ることがあります。
下田市の田牛で見られる龍宮窟は、こうして生まれた海食洞の天井の一部が崩落し、直径40~50m程の巨大な天窓が出現したものと言われています。
【静岡県下田市 龍宮窟】
この海食洞を上から覗くと地面の形がハートに見えることから、若いカップルに人気のジオスポットです。
洞窟の内部から天窓を見上げると、水面によって照らされた黄褐色の火山礫がより神秘的に感じられます。
今回の日記では、富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域で見られるジオサイト、「恵比須島」と「龍宮窟」についてご紹介しました。
ジオサイトの多くは、見学者の知識量によって見え方や感じ方が大きく変化しますので、みなさんがいつか伊豆半島に訪れる際の一つの参考になれば嬉しいです。
次回は、テレビCM等で一躍有名となった大人気ジオサイト「入間千畳敷」を解説します。お楽しみに!
※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、都道府県内の移動においても、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
前回の『南アルプスを上から見てみると・・・?①』に続いて、今回は茶臼岳、上河内岳についてお伝えします。
と、その前に!イザルガ岳から茶臼岳に飛んでいることに違和感がある方もいらっしゃるかと思います。残念ながら上空からの写真はありませんが、見どころはしっかりあります。
イザルガ岳を北上し、三吉平、三吉ガレを経由すると易老岳に着きます。山頂には展望がありませんが、シラビソやシダ類に囲まれています。シダ類がお好きな方にはたまらない場所です。
さらに北上すると、希望峰、仁田岳、仁田池が見えてきます。
△仁田岳 △仁田池
仁田岳は希望峰から分岐するため道線上から外れますが、360度の展望がとても良いので時間と体力に余裕があるようでしたら往復をおすすめします。希望峰を北に進むと、仁田池が現れます。6月頃、タカネザクラの花びらが池に落ちている様子はとても美しく感じられます。この周辺はライチョウの生息地で、運が良いと「ゲロゲロ」を耳にできるかもしれません・・・!
さて、ここから【茶臼岳、上河内岳】です。
茶臼岳(標高2,604メートル)と上河内岳(標高2,803メートル)は静岡県静岡市と長野県飯田市にまたがっています。主な登山口は『畑薙大吊橋』(国立公園外)です。
高さ30メートル、長さ約182メートル!!初めて畑薙大吊橋を渡りきったとき、高所恐怖症の私は気分が悪くなりました。おすすめの時期は紅葉の秋です。登山者だけでなく、紅葉狩りを楽しまれる方も多いです。
茶臼岳まではいくつもの吊り橋を渡り、尾根に辿り着きます。茶臼小屋前にはお花畑が広がり、静岡県によって季節型の防鹿柵(立ち上げ・撤去要)が設置されています。
山頂部分は岩稜帯になっており、光岳、大無間山、上河内岳、聖岳などの展望が楽しめます。
東側に見える布引山からの日の出は圧巻です。茶臼小屋から山頂まではそう遠くないので、日の出の時間に合わせて登頂するのもいいですね♪
上河内岳は上空写真からも分かるように、標高約2,800メートルにも関わらず、緑緑していますね。山頂部は岩稜帯とハイマツ帯が入り交じっています。
山頂からの360度の展望は最高です!ご自身でぜひ、体感してみてください!
茶臼岳から上河内岳へ向かう登山道でも光岳・センジヶ原にある構造土が見られます。植生があるところ、ないところで亀の甲羅模様が見られるほか、大きな線状凹凸で二重稜線になっており、南アルプスに氷河地形が残っていることを改めて感じます。
茶臼岳、上河内岳は林道東俣線の沼田ゲートから登山道が最も近くにあるため、入山は比較的容易ですが、幾度も沢を渡り、斜度がきつい尾根を登るので、相応の体力・技術が必要になります。余裕をもった計画を心がけてください。
次回は聖岳について、お伝えします。