ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年5月

15件の記事があります。

2021年05月16日【那須】 'フキノトウ' はその後どうなる?

善養寺聡彦

みなさま、こんにちは。 日光国立公園 那須管理官事務所の善養寺聡彦です。

春の色もしだいに濃くなっています。那須では裾野から山頂へ春が登りあげて行きますが、そのスピードが次第に速くなっています。

那須管理官事務所(那須高原ビジターセンター)ではトウゴクミツバツツジ、ヤマツツジが咲き始めました。

那須連山の山頂へ向かうと、まだフキノトウが咲いているところもあります。

今年は那須の春の流れをじっくり感じようと思っています。早春の風物の一つ、「フキノトウ」。

どこの地方にもあり、低地から高地にもありふれたものと思います。

しかし、意外に自分がフキノトウをじっくり見てこなかったことに気づきました。

今回フキノトウをじっくり観察してみました。

実は前回のAR日記(「那須の春は小出し」)に、フキノトウには雄株と雌株があるとことを記しました。

見慣れた植物である'フキ'についての考察です。

フキノトウ です。

さて、これは雄株?雌株?

フキは、キク科の植物です。

キクの花の特徴の一つは、1つの花に見えるのは実は多数の花の集合体(頭状花序)であることです(タンポポと同様です)。

この写真では、二十個以上の頭状花序が束になっていることになります。

キク科では1つの頭状花序を形成する小花に2つのタイプがあることも特徴です。

筒状花と舌状花です。

タンポポでは、頭状花序の周辺部に舌状花が並び、中央部に筒状花が集まっています。

タンポポについては、身近の花で確認してみてください。

筒状花は文字通り筒状で、ユリの花を小さくしたような形です。

ただしキク科は花弁5枚です(ユリ科は3枚だが、がく片と合わせて6枚に見える)。

フキの雄株の頭状花序は、筒状花のみが集まっています。

・・・ということは、この写真は、・・・

そう、雄株です。

拡大してみます。

筒状花が外側から咲いて行きます。

筒状花には真ん中にめしべもありますが、これは花粉がついても結実しません。

おしべはと言うと、めしべの下部を腹巻き状に包んでいます。

この写真ではよく分かりませんので、タンポポの筒状花も同様ですから、

身近のタンポポで確認してみましょう。

さて、雌花は、これです。

これも確かにフキノトウですね。

でも雄花とは何か違います。

今まで私も、「うん、そうそうフキノトウだね。」と、全く区別していませんでした。

今回ようやくしっかりと確認しました。

雌株の頭状花序は花弁がほとんど退化してめしべが長く伸びた小花でできています。

このめしべに雄株からの花粉が受粉すると、結実します。

中心部には数個の筒状花もありますが、花粉はつくりません。

この筒状花は蜜を出して、雄株の花粉をつけた虫を誘うのに必要だそうです。

那須高原の何カ所かを探して、フキノトウの雄株と雌株の区別がつくようになり、

ちょっとすっきりしました。

でもまだ完全なすっきりではありません。

雄株、雌株のフキノトウのその後はどう違うのか?

雌株は結実し、冠毛を発達させて種子を風に乗せて飛ばすはずです。

これもタンポポと同様です。

では雄株のフキノトウはどうなるのか?

両者のその後を追ってみました。

雌株はやはり、

開花後背を伸ばし、冠毛を発達させています。

そしてやがてこうなります。

では雄株は?

なかなか「雄株その後」が見つからなかったのですが、

見つけました。

開花後は成長していないようです。

小花は枯れています。

このまま枯れてしまうようです。

これで、すっきり!!

色々な自然物を見てきましたが、まだまだ簡単に見過ごしているものがたくさんあります。

少しずつ良く見て、理解して行きたいと思います。

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2021年05月14日【那須】令和3年度 那須高原におけるオオハンゴンソウ駆除活動計画

日光国立公園 那須 菅野敬雅

こんにちは、日光国立公園 那須管理官事務所の菅野です。

令和3年度の那須管理官事務所で実施するオオハンゴンソウ駆除活動計画についてお知らせします。

活動の背景

那須高原地域では、過年度より特定外来生物であるオオハンゴンソウの侵入・生育が確認されてきました。オオハンゴンソウの侵入による影響として在来植生との競合が危惧されています。

那須管理官事務所では、平成21年度より那須高原地域においてオオハンゴンソウの駆除活動を地元ボランティアのご協力の元で実施しています。

 

▲特定外来生物オオハンゴンソウ       ▲駆除活動の様子

 ▲これまでの主な駆除活動場所

令和3年度活動予定

■定期活動(地元ボランティアのご協力の元行う駆除活動)

6/3(木)、6/17(木)、7/15(木)、8/12(木)※予備日は翌日

■その他活動

次の活動を予定しています。

・三斗小屋宿跡における駆除活動

・那須高原地域における生育状況調査

・他団体主催の駆除活動に講師として協力

・那須平成の森における帰化植物調査・駆除(業務委託により実施)

実施結果については今年度の活動終了後にご報告できればと思います。

長年の駆除活動により、場所によっては根絶が視野に入ってきたところもあります。粘り強く活動を継続し、那須高原の生態系保全に努めていきたいと思います。

◎特定外来生物については→http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html

◎オオハンゴンソウについては→http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/L-syo-03.html

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2021年05月11日【那須】つつじシーズン到来!

日光国立公園 那須 菅野敬雅

みなさんこんにちは!

日光国立公園 那須管理官事務所の菅野です。

だんだんと気温も上がり、裾野から始まった新緑がようやく那須高原にも訪れようとしています。

さて、那須高原はこれからつつじの季節真っ盛り!

白・ピンク・紫・オレンジなどなど、色とりどりの花が目を楽しませてくれます。

ということで今回は、那須地域周辺で見られる「主なつつじの種類」と「おすすめスポット」をご紹介します!

■那須地域周辺で見られる「主なつつじの種類」

1. レンゲツツジ

今回紹介するツツジの中では最も花序が大きく、鮮やかなオレンジ色が目を引きます。

毒性を持ち、牛馬が食べるのを避けるため、かつての放牧地に群生していることがあります。

2. ヤマツツジ

濃い桃色の花序を咲かせ、日当たりのよい場所では葉が隠れるほど大量に花をつけることもあります。

那須街道から那須連山の中腹まで広範囲に分布し、見かけることが最も多いつつじです。

3. トウゴクミツバツツジ

今回紹介する中で最も早い時期に咲き、小振りで透明感のある紫色の花をつけます。

名前は関東地方(東国)に多く分布し、三つ葉をつけることに由来しています。

4. シロヤシオ(別名ゴヨウツツジ)

小振りで可憐な白い花をつけます。5枚の葉を輪生することから別名ゴヨウツツジとも呼ばれます。

敬宮愛子内親王のお印であり、那須平成の森のアイコン的な花でもあります。

葉が赤く縁取ることも特徴の一つです。

5. ムラサキヤシオツツジ

那須連山の山地に生え、小さくて濃い紫色の花を咲かせます。

シロヤシオやアカヤシオとともに、栃木県の県花「やしおつつじ」の一つに数えられます。

6. サラサドウダン

これまでのつつじと花の形は異なりますが、こちらもれっきとしたつつじの仲間。

1cmほどの鐘形の花を多数つりさげ、淡紅色と黄白色のグラデーションに紅色の縦筋があります。

濃い紅色に色づいた花をつけるベニサラサドウダンもみられます。

■那須地域周辺の「おすすめつつじスポット」

八方ヶ原(矢板市)

かつては放牧地で、現在はつつじの群生地として有名な八方ヶ原。

20万株のレンゲツツジが群生しています。

周辺の花の見ごろは5月から6月までと長い期間楽しめます。

八幡つつじ園地(那須町)

こちらもかつては放牧地で、ヤマツツジやレンゲツツジを中心とした群落が広がっています。

環境省指定の「かおり風景百選」にも選ばれています。

八幡崎からは那須野が原を見渡せ、つつじ吊橋からは茶臼岳を眺めることができます。

例年の見ごろは5月中旬から6月上旬まで。

那須平成の森(那須町) ホームページ:https://nasuheisei-f.jp/

森の散策路を歩きながら、シロヤシオやトウゴクミツバツツジ、サラサドウダンなど、様々な種類のつつじを眺めることができます。

例年の見ごろは5月中旬から6月上旬まで。

中の大倉山(那須町)

山頂付近にシロヤシオ群生地がみられます。

周辺は遊歩道が整備され、シロヤシオが開花する期間中はゴンドラも運行しています。

例年の見頃は5月中旬から下旬まで。

今年は例年と比べて気温が高く、開花期が早まっているようです。

例年の見頃の時期はご参考までに。

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2021年05月10日『天城山』の遅い春

富士箱根伊豆国立公園 沼津 山田優子

みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。

GWが終わってしまいましたね。私は先日日記で検討していた自転車を購入し、GWは自転車で川沿いを走り海まで行ってきました。いつもは車で通り過ぎてしまう場所に新たな発見があったり、ステキなお店があったり、海を眺めながら本を読んだり。今までのGWにはないのんびりした時間を過ごしました。

さて、今回の日記では4月末の巡視で、天城山の遅い春の光景に感動したので紹介したいと思います。

アクティブ・レンジャーが管内の巡視に行く際は、何らかの目的を持って現地に向かいます。事務所によって目的はさまざまですが、主に登山道の安全確認や標識・看板の確認、倒木の処理や道迷い発生場所の確認、申請のあった工作物の確認など、多岐にわたります。以前紅葉の時期に何度も天城山の八丁池付近で確認する事があり、絶好のタイミングで八丁池の紅葉を日記で紹介しよう!と意気込んでいましたが、行かなかった数日で紅葉した葉があっという間に散ってしまいました。今回はこの逆の事が起こりました!天城山を八丁池に向かって歩いていると、前方に一面の薄ピンクの花が見え、ハッとしました。

街中や標高の低い山ではかなり前に散ってしまったマメザクラが見頃を迎えていました。思いがけないプレゼントをもらったような気持ちになり、また山に魅了されてしまいました。すれ違った登山者の方も美しい光景にしばらくその場から動けず見とれていました。

登山道では鳥たちのさえずりが聞こえていました。音声を録音して聞いて欲しいほどで、気温の低い山にやっと訪れた春を喜んでいるようでした。

見晴台では八丁池と真っ白な富士山、南アルプスの山々が見えました。後1ヶ月もすれば深緑に囲まれた八丁池が見られそうです。


そして縦走路からは、ブナやヒメシャラの奥に富士山が見えます。落葉している期間限定の風景です。

ブナの枝には黄緑色の新芽がまばらについています。枝を緑色に染めるのももうすぐでしょう。(*富士山が見つけられなかった方はクリック拡大)

沖縄・奄美地方が梅雨入りして今年は梅雨入りが早そうです。梅雨の雨で山が潤い季節が夏へと進んでいきます。アセビが満開の天城山も、巡視の時まだ蕾だったアマギシャクナゲが開花し、八丁池ではモリアオガエルの産卵も始まります。森が賑やかになるのが今から楽しみです。

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2021年05月06日【小笠原】希少植物シマホザキランの巡視

小笠原国立公園 伊藤竜啓

みなさまはじめまして!

伊藤竜啓(いとうたつよし)と申します!

アクティブ・レンジャーとしての初仕事、その一端をお伝えします!

この日は父島林内の奥地に生息している、シマホザキランの巡視を実施しました!

このシマホザキラン、野生下の個体は極めて数が限られており、

環境省が把握している数株を私達が見守っております!

△こちらが希少なシマホザキランの花です!奥ゆかしいですね!(花期:9月頃)

「見守る」と上述しましたが、その実態はもう少し大変です!

本来シマホザキランは沢の近くなど水気のある環境を好むのではないかとされていますが、

この生息地はあまり生育に適していないのか、雨が少ない日が続くと開花などに影響が出てしまいます!

そのために現状では適時人間の手で水分を与えることが必要とされているので、

降水量が少ないときにはアクティブ・レンジャーが雨を降らせに行きます!

△10リットルの水を汲んで山を歩きます!大変ですね!

△ネズミ一匹通さない食害防止柵で保護しています!頼もしいですね!

このような手厚いサポートを必要に応じて行いながら、

定期的にシマホザキラン本体に異常がないかを確認しています!

△こちらが今回確認したシマホザキランの葉です!調子が良くなさそうに見えますね...

これは一昨年の大型台風によって林冠が開けたことによる日の当たりすぎが原因と考えられたため、

日除けを設置することで対応しました!

△日除けを設置しています!世話が焼けますね!

上記のように繊細で手のかかる可愛いシマホザキランですが、

ここまで数が減ってしまった主な理由として、降水量の減少といった環境変化や、

表土流出による根茎露出の他、人為的に行われた盗掘の影響も大きいと考えられています!

これを食い止めシマホザキランの繁栄を手助けすることが我々の役目というわけですね!

以上、小笠原で初の仕事相手はシマホザキランでした!

他にも助けを必要としている希少種は沢山おりますので、これからも頑張ります!

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