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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

真夏の来訪者(箱根地域)

2021年08月31日
富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

さて、今年の夏は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、自宅で過ごす方も多かったのではないでしょうか。箱根がある神奈川県には緊急事態宣言が発出されていることもあり、例年に比べ観光客は少ない状況です。

そんな箱根にある「富士箱根伊豆国立公園管理事務所」では、感染症予防対策の為に業務中も窓や扉を日々開放していますが、そのためか今年は珍客の来訪が度々ありました。本日はそんな珍客たちをご紹介します。

オニヤンマ

日本最大のトンボとして知られる、大型のトンボです。ヤブ蚊やハエ・ハチなどを補食する昆虫なので虫除けになると噂が広がり、近年登山者たちがこの姿を真似たブローチを身につけている様子を目にします。効果の程は不明です。先日は、箱根へ遊びに来た小学生にも自慢されましたが、本物はこちらです!事務所の玄関扉は、そこまで大きく開いているわけでは無いのですが、意外と事務所の中へ入ってきます。写真の個体は、救出作業時に少しクモの巣が絡んでしまいましたが、この後屋外に離すと無事に飛んで行きました。

ムネアカセンチコガネ(神奈川県準絶滅危惧種)


ふと足元を見ると、ひょうきんな顔をした昆虫が、玄関先に来訪していました。調べたところ、「ムネアカセンチコガネ」でした。私は初めて観察した昆虫です。背中に小さなハートマーク♥もあり、なんとも可愛らしいですね。センチコガネの仲間は糞虫といって、動物の糞を餌にする習性があります。野生動物の糞を食べ、分解して土に戻し、衛生管理に協力している森の掃除屋さんの仲間に、このムネアカセンチコガネも含まれています。加えてムネアカセンチコガネには、「キノコ」を食べる面白い習性があることも知られています。事務所の周りにおいしいキノコがあったのでしょうか。普段は土の中に潜っている虫なので、こちらは観察後植え込みに離しています。

③ニホンジ


これはあまり、嬉しい来訪者ではありません。事務所がある湖尻周辺で、シカが増えている事実は確認されていましたが、このところ事務所近隣で目撃される例が増えています。夕刻ですが、道路に出てきていました。近づくと、2頭の若い雄ジカでした。箱根でのシカ急増は、生態系へ大きな影響を及ぼすことが大きく問題視されています。すでに丹沢ではシカによる森林の裸地化や、ヒル・ダニの増加によるハイカーへの被害などが起こっており、箱根でも同じことが起こらないように早急な対策を実施している最中です。これ以上増えないようにしなければなりません。

ツチアケビの実


こちらは、来訪と言うよりも、「ご近所さん」の紹介になります。赤いウインナー?が、「ツチアケビの実」になります。いつ見ても、びっくりする姿の植物ですね。春にはアスパラガスのようなツチアケビの芽を紹介しましたが(⇒「芦ノ湖水門を訪ねて2021(箱根地域)」http://kanto.env.go.jp/blog/2021/06/2021-3.html)、なんと事務所の徒歩1分圏内に、ツチアケビの実がありました。私がこれを知ったのがつい最近なので、花の写真はあいにく撮れませんでしたが、来年にも出て来ることを祈るばかりです。そのときには、定点観察をして成長の記録を写真に納めたいと思います。

⑤番外編 アズマヒキガエルの子


こちらも「ご近所さん?」の紹介です。事務所がある湖尻地域からはやや離れた「箱根神社」周辺で、先日出会ってしまいました。しかも1匹だけでは無く、たくさん。。。大きさは、ヒトのツメ程度のミニサイズです。近くにアズマヒキガエルの卵塊が産み落とされた水辺があったのでしょう。少し前の6月頃の出来事ですが、孵化して成長したオタマジャクシたちが陸に上がったタイミングだったようです。この子たちは、ぴょんぴょん飛び跳ねるのではなく、のしのしと歩いていました。親ガエルを思わせる歩きぶりで立派でした。大きく育って欲しいですね。箱根の山では、アズマヒキガエルは増えているのでしょうか。箱根の自然の多様性が感じられる、嬉しい出会いでした。さらに人が多い観光地での子ガエルたちの出現は、人と自然が長く共生してきた歴史のある、箱根らしい出来事でもあると感じました。

今回は事務所周辺の来訪者やご近所さん、5種の紹介を行いました。「STAY HOME」でご自宅にいる皆さんの周辺でも、珍客の来訪はいつでも可能性がありますよ!是非ご自宅周辺にも時折目を向けていただき、身近な自然を体感できる生物観察を試みてはいかがでしょうか。新たな出会いは、すぐ近くにあるかもしれません。