アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。アノールトラップの今昔
2023年11月06日
小笠原
小笠原自然保護官事務所の河村です。
今年の夏には、グリーンアノール対策の一つアノール柵について紹介しました。
兄島 大丸山の囲い込み柵について | 関東地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
柵と並行して実施している対策が、アノールトラップです。粘着性のある素材でトラップに入った個体を捕まえる仕掛けです。グリーンアノールのいる兄島、父島、母島の3島で導入しており、木の幹に直接付けたり、幹の細い木にトラップを付けた板を固定したりして使用しています。
今年の夏には、グリーンアノール対策の一つアノール柵について紹介しました。
兄島 大丸山の囲い込み柵について | 関東地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
柵と並行して実施している対策が、アノールトラップです。粘着性のある素材でトラップに入った個体を捕まえる仕掛けです。グリーンアノールのいる兄島、父島、母島の3島で導入しており、木の幹に直接付けたり、幹の細い木にトラップを付けた板を固定したりして使用しています。
アノールトラップについて調べ物をする機会があったので、今回はその歴史について紹介をします。
グリーンアノールトラップの歴史
アノールトラップの開発は2003年から始まったようです。2006年に初代のトラップの使用が始まりました。当時は、父島、母島の2島で使用されていました。2013年以降は、兄島でも使用されています。そのほか、グリーンアノールがいない島にトラップを設置して、分布していないかを確認する試験にも使用しています。現状、グリーンアノールの数を減らす(密度を低下させる)上で、有効に機能しているのがこの粘着式のトラップです。
約20年に渡り、トラップは何度も改良が加えられています。
ここでは、主要な5つのタイプを紹介します。
約20年に渡り、トラップは何度も改良が加えられています。
ここでは、主要な5つのタイプを紹介します。
2006年(平成18年)従来型
開発および実地試験を経て、採用された初代タイプ。設置作業で分かりやすい赤色になっています。
2010年(平成22年)景観配慮型
従来型と同じ形状で、人通りのある箇所で目立たないよう本体を茶色にして、風景に溶け込むようにしたタイプ。
2015年(平成27年)ショートタイプ①
従来型の全長23cmに対して、全長14cmに短くしたタイプ。短くすることで枝に邪魔されず、木にくくりつけやすくなりました。特に兄島で、背の低い樹木に設置する際に、このサイズの変更が有効だったようです。
2016年(平成28年)ショートタイプ②
ショートタイプ①との違いは、横の窓の部分にしきりが1つ加わった点です。小笠原固有種のオガサワラゼミの混獲を減らす効果があり、採用されました。
2017年(平成29年)ショートタイプ③ 現行型
ショートタイプ②の上部にツメを追加してあり、トラップが開きにくくなっています。トラップにかかった昆虫を見つけて鳥がトラップをくちばしなどで開けてしまうケースがあったためです。現在はこのタイプのトラップを使用しています。
振り返って見ると、グリーンアノールをいかに効率的に捕獲できるか、グリーンアノール以外の生物が混獲されないようにできるか、といった観点で改良を重ねてきたことが分かります。
グリーンアノールトラップと世界遺産
アノールトラップは、作業者が全て手作業で設置や粘着シートの交換を行っています。新しい技術の開発も進んでおり、生分解性のあるトラップをドローンから散布する案もあります。それによりこれまで人が入ることが難しかった地形や植生が密生したエリアでのアノールトラップによる捕獲が進んでいくかもしれません。小笠原諸島では、グリーンアノールなどの侵略的な外来種をどう管理していくかが、遺産の価値を守っていく上でも非常に重要なのです。
トラップはこれからも活躍が続きそうです。
トラップはこれからも活躍が続きそうです。
おわりに
小笠原に来て以来、どうすれば侵略的外来種をコントロールできるのか、何か 良い方法はないだろうかということをずっと考える日々です。国立公園かつ世界自然遺産の小笠原には、ここにしかいない生物がたくさんいます。外来種の対策は難しい課題が山積みですが、アクティブレンジャーとして前に進められるように努めていきます。