関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

あっという間に再生する裏砂漠の緑 ー 火災2ヶ月後の様子

2024年06月28日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
最近は小さなハナバチの仲間に夢中。
アジサイやらウツギ、オオムラサキシキブやアカメガシワで一所懸命、花粉と蜜を集めている姿に、、
「!!(きゅん)」としてしまいます。
サクユリについているのも見たことがあります。
代替テキスト
△ サクユリにハナバチ 脚にはオレンジの花粉がたくさん付いている

既に想像以上の回復

さて、裏砂漠の火災が起きてから、あっという間に2ヶ月が経とうとしています。
前回足を運んでから1ヶ月。その間に環境はどう変化しているのでしょうか?
 
奥山砂漠に着きました。
ん? なんだか大分緑になっている気が、、
代替テキスト
△ 火災2ヶ月後の様子
代替テキスト
△ ススキが既に青々としていた
代替テキスト
△ 枝先の木の葉も少しずつ再生している
代替テキスト
△ 一面緑な中、木だけ茶色いと、なんだか不思議な景色
より近付くと見えてくる、植生の再生の秘密。
特にハチジョウススキがぐんぐん伸びていました。
ススキの落ち葉がゆっくり土を作ることで、周りの植物の栄養にもなります。
そういった先駆植物(裸地などの厳しい環境で最初に生えてくる植物)の群落の中に、やがて低木やサクユリなどが生え始めるんですね。
代替テキスト
△ ハチジョウススキとハチジョウイタドリ 元気に若葉を伸ばしている
代替テキスト
△ 植物が生えているところと裸地の差は一目瞭然 ススキの落とした葉はゆっくり土へと変わっていく

草だけでなく、木も!

草の再生は進んでいますが、木の方はどうでしょう?
この辺りに生えている、オオシマザクラ、ハチジョウイヌツゲ、ニオイウツギ、クロマツなどを見てみると、枝先にわっさわさ葉っぱを付けているではないですか!
代替テキスト
△ オオシマザクラ 上の方の新芽は炎から守られていたのか
代替テキスト
△ ハチジョウイヌツゲ 同じく中心上は黄緑が鮮やか
代替テキスト
△ ニオイウツギ 脇芽とひこばえが密になって生えている
代替テキスト
△ クロマツ 燃え残った部分は青々としている

火で焼けて丸見え

もちろん、火に一旦「丸裸」にされた木や草も。
普段は見えないものも、期間限定で見えるようになっていました。
印象的だったのが、ハチジョウイヌツゲの「虫こぶ・虫えい」です。
「イヌツゲタマバエ」という虫が寄生することで、「イヌツゲメタマフシ」という丸い瘤が枝にたくさんできてしまいます。
初夏に羽化するはずだった虫こぶの中の虫も、一緒に焼けてしまったのでしょうか。
葉に隠れて目立たない幹や枝、茎や根の周辺も観察できるのは新鮮でした。
代替テキスト
△ ハチジョウイヌツゲの新芽と虫こぶ
代替テキスト
△ よく見ると穴が沢山空いている

初夏の奥山砂漠の景色

少し高い所から見下ろすと、焼けた範囲とその回復の様子がよく見えました。
後ろにある櫛形山と三原山は、夏によくある「島曇り」で頂上付近が隠れています。
代替テキスト
△ 少し高い所より見下ろす奥山砂漠
代替テキスト
△ 拡大すると、延焼地との境界線がくっきり
代替テキスト
△ 手前の焼けた箇所と、その先の新緑のコントラスト
途中振り返ると、空と緑、黒く焼けた木のシルエットが、まるで画に描いたかのような景色でうっとりしました。
代替テキスト
△ まるで画のような風景
代替テキスト
 
帰る頃には、島曇りも晴れて、山の輪郭が見えるようになっていました。
大島の植生は、本当にあっという間に再生してしまうということを、実感できた一日でした。
夏の間もどんどん回復するであろう、草木たち。
引き続き、その過程を見守っていきたいです。
代替テキスト
△ 島曇りが晴れて、櫛形山と右奥に三原山が見える