関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

海辺に広がる「オレンジ」と、その仲間たち

2024年07月24日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
最近、珍しい(らしい)ガと遭遇しました。
 
林内を飛んでいく姿はオレンジ!
なにかな、と思って見ていると、近くの木の幹に留まりました。
羽を折りたたむと、今度は同化した茶色と灰色のような色で、そのギャップに驚かされました。
 
後日「シンジュキノカワガ」(シンジュの木を食べる、木の皮のようなガ)というガだと教えてもらいました。
遇産種(在来種ではないが、天候などの自然現象で時々日本にやってくる種)なため、伊豆諸島では珍しい可能性もあるそうです。
わあ、、と感動するのに忙しかったので、写真を取り逃してしまい少し悔しい気持ちです。

他にオレンジといえば?

この時期はやはり、「ハマカンゾウ」!
7月中旬にあった「海辺の花園・再生プロジェクト」のイベントの様子を紹介します。
代替テキスト
△ 2022年7月11日撮影 サンセットパームライン沿いのハマカンゾウ群落
毎年この時期に、伊豆大島ジオパークとの連携事業として、環境省が主催しているイベント。
過去には、受粉を担う生き物(アゲハチョウ類)と結実率の確認や、雄しべの開く時間帯とアゲハチョウ類の活動する時間帯の観察(昨年の様子)など、様々な視点からハマカンゾウに適した環境を探ってきました。
今年は、「ハマカンゾウを助ける生き物たち」にスポットライトを当てます。

ハマカンゾウの適した環境作りをするためには、ハマカンゾウを守るだけではなく、ハマカンゾウと繋がりのある生き物も一緒に守ることが大事です。
例えば、受粉を担うアゲハチョウ類を呼ぶためには、幼虫が食べるアシタバ、ボタンボウフウやカラスザンショウなどの植物の存在が欠かせません。
これらの植物も気に掛けてあげることで、ハマカンゾウにとっても良い影響をもたらすと考えられます。
実際に、足下のボタンボウフウに顔を近付けてみると、小さなキアゲハの幼虫が花の上にいました。
ころんとしていて、かわいいですね。
代替テキスト
△ ハマカンゾウと同じような環境に生える、ボタンボウフウ
代替テキスト
△ 花をよく見てみると、キアゲハの幼虫がいた

直面した課題と得られた学び

ハマカンゾウも海浜植物とは言え、実は天気などに影響されやすい面もあり、潮風に晒され過ぎると地上部は黒くなり枯れてしまいます。
今年は7月上旬に強風が続いた時があり、その影響かサンセットパームライン沿いで咲いているハマカンゾウは、例年と比べて大分少なかったです。
このことから、背の高いハチジョウススキや地面を覆うテリハノイバラなどの植物に、時には追いやられてしまう反面、守られることもあると分かりました。
その他にも、以前はキョンの食害にあっていなかった場所でつぼみが食べられていたり、アブラムシの被害があったりと、自然相手はなかなか一筋縄でいきませんね。
代替テキスト
△ サンセットパームライン沿い 育成エリアの様子 
代替テキスト
△ 今年は塩害で、この時期のハマカンゾウの多くは黒く枯れてしまっていた
代替テキスト
△ 赤禿方面も、ハマカンゾウがほとんど見当たらない
代替テキスト
△ 以前は食害がなかったエリアで、キョンに食べられてしまったハマカンゾウのつぼみ 

海辺の林にもいる、仲間たち

ハマカンゾウは海岸沿いだけでなく、海岸に近い林道沿いにも生えています。
それに加え、受粉を担うアゲハチョウ類はカラスザンショウの木を好むそうで、これも同じく林道沿いに多いです。
幼虫が葉を食べるため、成虫は卵を産み付けにくるのと、開花時は蜜も吸いにきます。
この日もカラスザンショウの木があるところへ行くと、チョウの仲間がたくさん舞っていました(キアゲハ、カラスアゲハ、ジャコウアゲハなど)。
海辺だけでなく近辺の林内の環境も守ることで、今後ハマカンゾウやその他の海浜植物の再生に繋がるはずです。
代替テキスト
△ 林道沿いのハマカンゾウは塩害にあわず、今年も満開だった
代替テキスト
△ カラスザンショウの花も、ハマカンゾウと同じ時期に開花している
代替テキスト
△ 多数のアゲハチョウ類に加え、アサギマダラも蜜を吸いに来ていた
代替テキスト
△ 林道沿いで見られた特定外来種、アカボシゴマダラ 後翅後部(下の羽の下の部分)に赤い斑文がある

多種多様な姿形

林道沿いでは、今年も様々なハマカンゾウが見られました。
色合いや花びらの形、一つ一つ違い、楽しませてくれます。
奇形の個体なども見つけました。
代替テキスト
△ 黄色がかった花、赤色がかった花
代替テキスト
  
代替テキスト
△ こんなに花びらの幅が広い+細い個体は初めて見ました
代替テキスト
 
代替テキスト
△ 奇形の個体 花びらが2枚しかない
代替テキスト
△ 雄しべのやくが開き、花粉が露出している
毎年違う環境の中で少しずつ違った学びを得られるのは、大変やりがいを感じられるのではないでしょうか。
わたしも大島に来てからよく思うのは、自然を保全する活動は続けてこそ、見えてくるものがたくさんあるということです。
今日も大島の自然から、また少し知恵を分けていただきました。
そんなわたしたちの生活を支えてくれる伊豆諸島の自然を、これからも島民のみなさまと一緒に育んでいきたいです。
 
町役場リンク:
令和6年度:【7月13日】海辺の花園・再生プロジェクト 第12弾 | 終了しました | 伊豆大島ジオパーク (izuoshima-geo.org)
令和5年度:【7月8日】海辺の花園・再生プロジェクト 第10弾 | 終了しました | 伊豆大島ジオパーク (izuoshima-geo.org)