南アルプス国立公園 南アルプス
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2018年09月25日南アルプスの隠れスター!栗沢山
南アルプス国立公園 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
みなさんは『南アルプスの山』と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「アクセスが悪い」、「歩行時間が長い」、「登山初心者向けの山がない」などが挙げられると思います。確かに、マイカー規制がゆえに、時間に縛られた登山になってしまいますし、山小屋や山頂に着くまでの歩行時間がルートによっては日帰りでは難しいところもあります。そのため、気軽に登ることはできず、重装備になりがちかと思います。
南アルプスに登りたいけど、重装備はまだ持てない!日帰りでバスの時間にも追われない登山がしたい!今年こそ南アルプスデビューしたい!そんなあなたにぜひ、ご紹介したい山があります!
△栗沢山頂上から見る甲斐駒ヶ岳
長衛小屋から約2時間。標高2,714mの栗沢山です。北沢峠の標高が約2,000mなので、標高差は700mほどになります。栗沢山は早川尾根の最北端にあり、甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)の真正面に位置しています。山頂からは写真のようなとてもかっこいい甲斐駒ヶ岳を見ることができます。
△栗沢山山頂から見る仙丈ヶ岳
甲斐駒ヶ岳のほかにも仙丈ヶ岳や北岳、鳳凰三山やアサヨ峰などを見ることができます。360度展望を楽しむことができるので、「次はあの山に登りたい!」と目標とする山も決めることもできますね。アサヨ峰は早川尾根の中で1番標高が高い山で山梨百名山および日本三百名山に選ばれています。体力に自信がある方はアサヨ峰まで足を伸ばしてみるのもいいかもしれません。
栗沢山への主な登山口は長衛小屋から栗沢山山頂直登コースと仙水峠経由コースの2つに分かれます。
△栗沢山直登コースの樹林帯
栗沢山山頂直登コースは樹林帯を進みます。森林限界が高いので、頂上付近になるまでひたすら樹林帯の中を歩きます。視界が開けてくるとハイマツ帯、岩場になります。岩場と言っても高度感があるわけではなく、マークもきちんとあるのでご心配なさらず。北岳や仙丈ヶ岳を横目に爽快な稜線歩きを味わえます。
仙水峠経由コースは樹林帯をしばらく歩くと無数の岩石が現れます。
△仙水峠下にある無数の岩
この岩石は岩塊流(がんかいりゅう)と呼ばれ、氷期に凍結破砕作用で生産された岩屑が斜面下方へ移動し、後に細粒が流水によって除去されたために生じた地形のことをいいます。仙水峠は日本を代表する岩塊流の1つです。南アルプスでは仙水峠のほかに、早川尾根上にある白鳳峠でも同じような地形を見られます。
どちらのルートも変化に富んでおり、さまざまな景色を楽しむことができます。周回コースにすると両方のルートを楽しむことができるのでオススメです!日帰りにこだわらず、下山後は山小屋に宿泊して北沢峠周辺のコケなどを楽しむのもいいですね♪
山登り初心者の方、南アルプス主峰を制覇したけど栗沢山は登ってないというあなた!これからの紅葉の季節をこの栗沢山に登ってみてはいかがでしょうか?
2018年09月18日塩見岳での高山植物保護作業
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
9月15日から17日にかけて、環境省事業として塩見岳にて南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークの方々と伏工作業を行いました。
塩見岳東峰山頂直下ではかつてシナノキンバイやハクサンイチゲなどが見られるお花畑が広がっていましたが、ニホンジカの採食圧や踏圧によって植生の変化が進み、やがてニホンジカが好まない植物すらなくなり、山肌がむき出しになってしまいました。氷河跡地の上部は土壌が薄く、一度表土が剥がれ落ち、土壌侵食が起きてしまうと、植生の自然回復は困難になってしまいます。そのため、2009年(平成21年)から毎年、塩見岳東峰山頂直下ではヤシマットの設置を行っています。
△作業のようす その1
△作業のようす その2
前日は雨に打たれましたが、伏工作業当日は時折晴れ間もあり、暑すぎず寒すぎず、作業を行いやすい天候でした。南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークの方々にもご協力いただき、塩見小屋から一人ひとり歩荷したマットをお花畑の裸地部分に敷き、四隅や途中部分に張りピンを木槌で打ち、シュロ縄で固定します。最後に抑えの石を置いて完成です。マットで覆うことによって土壌が流れにくくなるほか、マットはヤシ繊維製マットを使用し、耐久性があるので、保温性を高めることができます。地面の温度変化が穏やかになると、飛んできた種から芽が出やすくなる効果もあります。昨年設置したマットには新しい命が宿っていました!
△昨年設置したマットに定着した植生
すでに高山植物は枯れてしまっていましたが、マットにはオンダテなどが根をつけていました。わたしは昨年に引き続き、2回目の参加になりますが、伏工の効果をはっきりとみることができたのでこの作業にやりがいをとても感じました。元のお花畑に戻るまでかなりの年月がかかってしまうと思いますが、いつかこの場所に緑やお花畑が戻ってきてくれることを願います。
山を歩いていると木々がほんのり黄色や赤色に染まっていました。高山植物のシーズンが終わり、いよいよ紅葉シーズンの始まりですね!!コケモモやナナカマドの実も赤くなり、一足先に秋を感じてきました。
△赤く色づいたナナカマドの実
広河原でも白鳳渓谷の紅葉を一目見ようと多くの方で賑わいます。野呂川の清流の音を聞きながら紅葉を楽しむのもいいですね♪朝晩問わず、日中も冷える日がありますのでお越しの際は防寒着を必ず持ってきてくださいね。
2018年09月11日野呂川広河原インフォメーションセンターの展示をリニューアル!
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官の本堂です。
先日、野呂川広河原インフォメーションセンターの展示を新しくしました。
△新しく設置した展示
展示場所は1階と2階を結ぶ階段の壁になります。
△展示のようす その1
△展示のようす その2
展示のタイトルは「南アルプス国立公園 -アクティブ・レンジャーが見た南アルプスのいろんな顔-」です。南アルプスには珍しい動植物や素晴らしい景色、自然の魅力がたくさんあります。何度登っても毎回違った顔を見せてくれるので全く飽きません!そんな南アルプスが私は大好きです。巡視や防鹿柵などの日々の活動の中で心引かれた風景や動植物を集めました。場所の関係もあり、展示数は多くありませんが、少しでも南アルプスのいろいろな魅力をみなさんに伝わればいいなぁと思います。そして、この自然を守っていきたいと思っていただけると幸いです。
バス・タクシー乗り場、お手洗いがある1階を多くの方が利用されますが、2階に休憩・展示スペースがあることをご存じでしょうか。野呂川広河原インフォメーションセンター2階には南アルプスの自然についての展示や登山道情報、山の雑誌や本が揃っています。また、2階のクマ対策の展示の下にはアンケートを設置してあります。展示に関するご感想やリクエスト、インフォメーションセンターについてのご要望等がございましたら、アンケートにぜひご協力ください。ちょっと休憩したくなったとき、雨が降ってきたとき、自然についてもっと知りたいと思ったときには、ぜひ、野呂川広河原インフォメーションセンターに足を運んでみてください。きっとこれまでよりも違った角度で南アルプスを見ることができるかもしれません。
展示設置を行った日の野呂川広河原インフォメーションセンターから見た北岳は真っ白でした・・・
△9月10日の広河原から見た北岳
このあと大雨が降り、気温がぐっと下がって寒くなりました。街ではまだ半袖でもちょうどいいくらいですが、山ではもう長袖、もしくはフリースがちょうどいいくらいです。朝晩冷え込みが激しいのでフリース等の防寒着が必須です。北岳の登山道で一定期間、通行止めになる区間もあります。詳しくはこちらをご覧ください。 → http://www.minami-alpskankou.jp/cat15/ 連休が続きますが、安全に無理をしない登山を心がけましょう。
2018年09月04日南アルプスとニホンジカ
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
いきなりですが、問題です!これはなんの動物の足跡でしょうか?
ヒントは4つ足で、オスには角が生えています。山に行くと時々見ることができる動物です。答えは・・・この動物です!
そうです、ニホンジカです。
そもそもニホンジカってどんな動物なのでしょう。基本情報をまとめてみました。
□体長:130から140cm
□体重:40から90kg
□夏毛:オスメスともに茶褐色
□冬毛:オスは濃茶色、メスは灰褐色
□寿命:オスは10から12才、メスは15から20才
△コバイケイソウを食べるニホンジカ(平成26年(2014)撮影)
■食べ物は主に草です。葉や実、落ち葉、樹皮など植物ならたいていのものは食べてしまいます。最近では、毒があり、シカは食べないとされているコバイケイソウやトリカブトをも食べてしまう個体も出てきています。
■なわばりを持たず、群れで生息します。気に入った場所があるとしばらく滞在する習性があり、周辺の植物を食べ尽くしてしまうことがあります。
■メスは生まれて1才半で大人になり、生まれた次の年(2才)から出産します。毎年1頭ずつ出産することがふつうとされていて、高齢になっても出産率は低下しないと言われています。
■シカの足はとても健脚で、数kmから数十kmも移動することができます。南アルプスに出現するニホンジカは夏に高山・亜高山帯へ登り、冬の間は寒さを避けるために標高の低いところへ移動します。
■角はオスジカのみ付いています。角は毎年春先に付け根から脱角し、生え変わります。最初は血管が通った柔らかい皮を被った「袋角」。秋には血管が通らなくなり、硬い骨質の角になります。秋には硬くなった角を木に擦りつけて研ぐ行動が見られます。
南アルプスでは平成10年頃から稜線付近に現れるニホンジカが急激に増え、お花畑での食害が大きな問題になっています。なぜ、増えてしまったのでしょう。大きな原因の一つとして、私たち人間がニホンジカを捕らなくなったため、個体数が増え、生息域を里山から高山帯へ拡げているといわれています。
ニホンジカによる影響は花だけではありません。樹木や土壌にも大きな影響が見られています。
△樹皮が食べられてしまったハイマツ
△裸地化が進んでしまった塩見岳(手前の灰色の部分は過年度に設置した土壌流出防止マット)
写真のハイマツのように樹皮が食べられてしまった樹木は水分と養分を全体に運ぶことができなくなり、最終的には枯れてしまいます。オスジカが角を研ぐために行う行動によっても樹皮が剥がされてしまいます。塩見岳山頂直下にもかつてお花畑が拡がっていましたが、採食圧や踏圧により平成18年頃からヨモギやイネ科が優先するお花畑に変化し、平成21年には裸地化が進むほど景観が変化してしまいました。
南アルプス自然保護官事務所では県や市町村、民間団体と協力しながらシカ対策を行っています。これまでの日記でも取り上げてきましたが、どのような取り組みを行っているかご紹介したいと思います。
対策1 防鹿柵の設置
△防鹿柵設置のようす
ニホンジカに植物を食べられてしまうのを防ぐために設置される柵のことを防鹿柵といいます。南アルプスには1年を通して設置されている柵、夏季のみ設置されている柵、背が低い柵の3パターンの柵が設置されています。柵は1度立てて終わりではなく、維持管理の作業が毎年必要になります。南アルプスでは冬季にかなりの積雪があるため、斜面に柵を設置したままにしておくとひしゃげて使い物にならなくなってしまいます。このため、1年を通して設置してある柵は毎年メンテナンスを行います。また、夏季のみ設置されている柵は夏に立ち上げ、秋に撤去作業が行われます。柵で囲った場所、囲ってない場所で比較すると、草丈や見られる種類に大きな差が見られます。かつてのお花畑には戻っていませんが、徐々に回復してきている場所もあります。
対策2 土壌流出防止
△土壌流出防止のため、マットで覆う作業のようす
ニホンジカによる食圧や踏圧によって、地面がむき出しの状態になると雨風や雪解けによって土が流されてしまいます。土が流れてしまうのを防ぐために植物の繊維で作ったマットで地面を覆う対策を行っています。マットで覆うことで土壌が流れにくくなるほか、地面の温度変化が穏やかになり、飛んできた種から芽が出やすくなる効果もあります。
対策3 捕獲
南アルプスのニホンジカ問題を根本的に解決するためにはニホンジカの捕獲も重要です。南アルプス国立公園内の林道沿いや山麓など周辺地域では、林野庁や県、市町村が捕獲を実施しています。捕った命を無駄にしないで活用するため、南アルプス山麓(山梨県早川町、北杜市、長野県伊那市、大鹿村)ではジビエ料理として提供したり、肉や加工品を販売しているお店もあります。
ニホンジカ増加の原因は捕獲者の減少以外にもさまざまですが、地球温暖化によって昔よりも冬季が寒くなくなっていることや積雪量が少なくなっていることで命を落とすシカが減ったことも個体数の増加につながっていると考えられています。地球温暖化や環境問題について考え、行動することも大切です。現在の自然や景観を回復して後世に残せるように、そしてニホンジカとの共存ができる環境になってほしいと思います。
2018年08月28日南アルプスカントリーコードって?
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
高山植物もそろそろ終わりを迎え、もうじき南アルプスは紅葉シーズンに入ります。これからもたくさんの方が南アルプスの山々に登られることでしょう。突然ですが、南アルプスに『カントリーコード』というものがあるのをご存知でしょうか。カントリーコードとは1930年頃からイギリスにおいて、トレッカーのルールおよびマナーを定めたのがきっかけです。利用の心構えや注意事項、利用マナーなどで構成され、利用にあたってのマナー向上を目指して策定された地域ルールのようなものです。
常に快適で安全な登山を心がけていただくとともに、我が国屈指の山岳国立公園である南アルプスの大自然を大切に守り、後世に引き継ぐために、『南アルプス・カントリーコード -登山者の皆様へ7つのお願い- 』を利用者の皆様へお願いしています。
△南アルプス・カントリーコード -登山者の皆様へ7つのお願い-
【お願い1】花や植物を採らないでください
この地域の高山植物や動物は、数回の氷河期を経て、今もなお山岳の厳しい環境に耐えています。これらの動植物が、いつまでも見られるよう、一人一人がやさしい気持ちで自然に接し、採ったり、傷つけたりしないようにしましょう。
【お願い2】登山道を外れての歩行や写真撮影は行わないようにしましょう
登山道以外の場所には貴重な高山植物や多くの野生動物たちが生息しています。登山道を外れての歩行や写真撮影は行わないようにしましょう。
△キタダケソウ生育地における踏み跡
お花畑へ踏み込むと、植物が踏みつぶされて失われてしまいます。そして地面がむき出しになると、土壌が流れ出し、その場所や周辺には植物が生えにくくなってしまいます。一度失われた植生は回復までにかなりの時間を要します。
【お願い3】ペットの持ち込みはご遠慮ください
犬などのペットを持ち込むことは、ライチョウやオコジョなどの小動物に脅威を与えたり、野生動物の間に伝染病を持ち込む恐れもあります。ペットは持ち込まないようにしましょう。
【お願い4】ゴミを捨てないでください
自分で持ち込んだゴミはすべて持ち帰りましょう。
△落ちていたガスキャップ
巡視で山を歩いているとガスキャップや空になったペットボトルが落ちていることがあります。故意に落としたわけではない!という方もいらっしゃるかと思いますが、出発前にゴミを落としていないか、落ちないようにザックに入れたかなど確認していただきたいと思います。
【お願い5】先の尖ったストックは危険です。使う場所を考え、ゴムキャップの利用などを心がけましょう
先の尖ったストックは危険であるばかりか、他の利用者に迷惑を及ぼしたり、植物や歩道を痛める場合があります。使う場所を考える、ゴムキャップの利用など、心がけましょう。
△ゴムキャップなしのストックでできた穴
ゴムキャップなしのストックは危険であるとともに植物や歩道に大きなダメージを与えます。ゴムキャップをつけないと、登山道に穴があき、雨で土が流れやすくなるほか、登山道が傷み、植物の育つ環境が損なわれてしまいます。
【お願い6】記念看板の設置や岩などへの落書きはしないようにしましょう
登頂記念は写真におさめ、記念看板の設置や岩などへ落書きはしないようにしましょう。
【お願い7】山小屋、避難小屋などの施設はみんなできれいに大切に使いましょう
山小屋、避難小屋などの施設は遭難救助の基地ともなる大切なところです。みんなできれいに大切に使いましょう。
南アルプス国立公園は歴史・文化・地形などの魅力だけでなく、自然の絶景や野生の動植物なども魅力いっぱいの公園です。ルールやマナーを守って登山者すべての皆さんが気持ちよく利用できる環境を守っていきましょう!
2018年08月21日見どころたくさんの仙丈ヶ岳へ
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月下旬に、仙丈ヶ岳へ巡視に行ってきました。仙丈ヶ岳は標高3,033m、穏やかな山容から「南アルプスの女王」とも呼ばれています。危険な箇所が少なく、南アルプスの山々の中では、比較的登りやすい山です。日本百名山、山梨百名山に選定されています。
この日は事務所がある芦安は33度と真夏日でしたが、北沢峠は22度。登山しやすい気温でのスタートです。ルートは北沢峠から大滝の頭を馬の背ヒュッテ方面へ。そこから山頂に向かい、下山も同じルートを使いました。このルートは多くの方に使われているため、ルートが不明瞭なところや未整備の登山道はありません。
馬の背ヒュッテから山頂へ向かう道中で、ふと後ろを振り返ってみると。
△甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)
標高2,967mの甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)が見えました。甲斐駒ヶ岳は山全体が花崗岩で覆われていることから白っぽく見えます。左側の頂点が山頂で、右側の丸み帯びている頂点が摩利支天です。仙丈ヶ岳が「南アルプスの女王」に対し、甲斐駒ヶ岳は荒々しい山容から「南アルプスの貴公子」と密かに呼ばれています。
そして、仙丈ヶ岳山頂方面には「なんだこれ!」と思うような光景が!!
△藪沢カールの底
写真をクリックし、拡大してご覧ください。たくさんごろごろと岩が転がっているのです!!底に溜まっている岩(写真灰色部分)は氷河が削った岩塊や土砂が堆積したモレーン(堆石堤)などが形成されています。
△藪沢カール
南アルプス山域には2万年前頃に作られた氷河・周氷地形が残っています。仙丈ヶ岳で見ることができるこの藪沢カールがその1つです。カールは別名「圏谷(けんこく)」といい、氷河によって山頂付近が削られてできたもので、スプーンで削ったように丸みを帯びたゆるやかな谷地形が特徴的です。藪沢カールは日本有数のカールとして知られています。仙丈ヶ岳には藪沢カールの他に、小仙丈カール、大仙丈カールがあります。南アルプスには仙丈ヶ岳の他に間ノ岳や荒川三山でこのカール地形を見ることができます。
馬の背ヒュッテから50分ほど歩いて山頂に着きました!北岳間ノ岳方面は少しガスがかかっていましたが、スッキリ晴れているとこんな景色を見ることができます。
△仙丈ヶ岳山頂から見る日本高標高TOP3
小さく左側に見えるのは富士山、正面のとんがりが北岳、鞍部の先に見えるのが間ノ岳。そうです、仙丈ヶ岳の山頂からは日本の1位、2位、3位を一望することができちゃいます!!このような構図でTOP3を見ることができる山はなかなか無いと思います。TOP3の他にも甲斐駒ヶ岳はもちろんのこと、鳳凰三山や塩見岳、北アルプスや中央アルプスも見ることができます。
この日は1日を通して雲行きが怪しくなる様子がなかったのですが、なんと、ライチョウに出会えました!!
△ライチョウの母親
写真には写っていませんが、母親がヒナを連れてお散歩していました。ライチョウを見つけた際は、追いかけたり、触ったりすることなく、温かい目で見守るようにしてくださいね♪
山の上ではそろそろ秋を感じられるようになります。朝晩は半袖では肌寒さを感じることも多くなってくると思いますので、防寒着等を準備して行かれるといいと思います。山頂からの景色も良く、氷河地形も存分に楽しむことができる仙丈ヶ岳へ、登ってみてはいかがでしょうか?
2018年08月14日南アルプスのライチョウを守るために
南アルプス国立公園 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
みなさんはライチョウに出会ったことはありますか?ずんぐり丸い体に愛くるしいぱっちりおめめ。現在、日本では頸城(くびき)山塊、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプスに分布しています。最近では、絶滅されたといわれていた中央アルプスでも個体が確認されています。餌は主に昆虫や木の実、ハイマツの実などを食べます。ライチョウの生息地の世界的南限はこの南アルプスのイザルガ岳付近といわれています。
△ライチョウ・メス
近年、南アルプス北部の白峰三山周辺で減少傾向がみられています。そのため、環境省では平成24年から「ライチョウ保護増殖事業」を策定し、平成27年度より北岳周辺で生まれたばかりのヒナと母鳥を一時期間ケージ内で保護し、悪天候や天敵から守り、多くのヒナを育つようにケージ保護事業を実施しています。
△ケージが開いた途端、一目散に餌場に駆け出すヒナと母親
ケージ保護されているライチョウ親子は1日2回、ケージの外に出され自力で餌を食べます。ケージが開いた瞬間、ヒナはカメラのピントが合わせられないくらいの速さで餌がある場所へ駆け出します!
△ライチョウ親子を見守り隊
親子が外にいる間は人間がボディガードします。天敵であるチョウゲンボウやイヌワシに狙われないように、ヒナが迷子にならないように目を光らせます。
ライチョウの1980年代の生息数は3,000羽と推定されていましたが、2000年代には約2,000羽弱に減少したと推定されています。減少の要因として考えられることは、
1.気候変動による環境・植生の変化
2.登山者の増加
3.山岳環境の汚染に起因する感染症の原因菌などの侵入
4.従来生息していなかったニホンザルやニホンジカなどの進入のより、高山植物が採取されることによる生息環境の劣化
5.捕食者となり得る種(キツネ、カラス等)が生息地へ分布拡大による影響が挙げられています。
△餌をついばむライチョウ親子
ライチョウが将来にわたって生きられるようにするために、私たちに何ができるでしょうか。ライチョウの捕食者となるキツネやテンは登山者が放置する生ゴミ等につられて、本来の生息地ではない高山帯にゴミなどと一緒に進出する可能性があります。高山帯の貴重な生態系を保全するためにも、登山においては生ゴミを放置しない・ラーメンの汁を捨てないなどを守っていただきますようお願いします。また、ライチョウは寒いところに生きる鳥です。地球温暖化が進めば生息できなくなってしまいます。マイバッグ持参や徒歩・自転車移動するなど、できることから行動してみませんか??
2018年08月07日厳しい登山の中で励ましてくれる高山植物
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
「登山」と聞いてみなさんはどのように感じますか?楽しい・わくわくすると思う方もいらっしゃれば、疲れる・辛いと思う方もいらっしゃるかと思います。重い荷物を背負ってひたすら森の中を歩き、平坦な道になったと思ったら急に傾斜がきつくなったりと、決して楽なものではありません。疲れてどうしようもないそんなとき、足元をじっくり見てみてください。様々な色や形をした高山植物が咲いていることに気づくかと思います。そこで今回は、疲れを吹き飛ばしてくれる高山植物をご紹介したいと思います!
△ミヤマムラサキ
黄色や白色、紫色の高山植物はよく見かけますが、水色の高山植物はなかなかないかと思います。この花は【ミヤマムラサキ】という花です。ミヤマムラサキは日本の固有種であり、岩壁の隙間に咲いていることが多いです。小さくかわいらしいこの花を見たら思わず、疲れも吹き飛んで思わずシャッターを切りたくなってしまうのではないでしょうか。
△タカネコウリンカ
この花は【タカネコウリンカ】といいます。植物全体がクモ毛で覆われており、黄色い花を咲かせる前は全体が紫黒色をしています。タカネコウリンカも日本の固有種です。低山に咲くコウリンカに比べ、花のメリハリはありませんが、一度見たら忘れないくらい独特の見た目をしていますよね!
△ミネウスユキソウ
最後にご紹介するのは【ミネウスユキソウ】です。主に高山帯で咲きます。茎頂にまとまって花が咲き、花の表面にうっすら雪を被っているように見えることから漢字では「峰薄雪草」と書かれます。ウスユキソウに比べ、背丈が低いことが特徴です。¨日本のエーデルワイス¨と呼ばれています。
このほかにも変わった形の花や可愛らしい花が山にはたくさんあります。また、南アルプスにはここでしか見ることができない高山植物も多くあります。数が多すぎて名前が覚えられない!という方は、高山植物のガイド本や広河原インフォメーションセンターのパネル展示を見てください。山を歩きながらお気に入りの花を見つけるのも楽しみの1つになるのではないでしょうか。
△二俣分岐から見る北岳(7月23日撮影)
左俣の雪渓もだいぶ少なくなってきました。7月上旬の台風で北岳・大樺沢ルートはかなりのダメージを受け、通行止めとなっていましたが、7月22日に開通しました。開通されたものの、左俣上部の登山道が荒れており、二俣から八本歯のコル間を下りで通行するのはお勧めしません。上部で荒れており、登りも十分注意が必要です。南アルプス市観光協会のホームページでは北岳の登山道情報などを随時更新しています。参考にしてみてください♪ → http://www.minami-alpskankou.jp/cat15/
2018年07月31日荒川岳防鹿柵設置作業へ行ってきました!
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月14日から7月16日に荒川岳の防鹿柵設置作業に行ってきました。荒川岳は南アルプスの南部、静岡県に位置する山です。東岳(悪沢岳)、中岳、前岳の3つの山を総称し、「荒川三山」と呼ばれています。中でも東岳(悪沢岳)は標高3,141m、日本で6番目に高い山になっています。荒川岳には西カール底と前岳南東斜面の2カ所に防鹿柵を設置しています。西カール底、前岳南東斜面と聞くと「どこだろう?」という気がしますが、前岳・中岳分岐と荒川小屋の間の2カ所を指します。この2カ所は荒川岳の重要な景観を構成している場所であることから、お花畑を守るために平成23年度より設置しています。
荒川岳防鹿柵設置作業には初参加。前岳南東斜面のお花畑にわたしは心を打たれました・・・!
見てください、この素晴らしいお花畑を!!シナノキンバイやハクサンイチゲが斜面いっぱいに咲いており、登山者のみなさんもかなり近い距離でお花畑を楽しまれていました。
前岳南東斜面のお花畑にあるこの防鹿柵は登山道を横断するように設置されているので、出入口に扉が設置されています。
△前岳南東斜面登山道上にある防鹿柵扉
ニホンジカが入ってこないようにするために「開けたら閉める」を徹底してください。そして、優しく扉を扱ってください。10月初旬辺りまでの設置予定です。ドアノブがついているので、確実に閉めてください。この素晴らしいお花畑を守るためにもみなさんのご理解、ご協力をお願いします。
西カールのお花畑も前岳南東斜面に劣らず、とても綺麗でした。西カールは傾斜があり、作業を進めるのが大変でしたが、綺麗なお花畑に囲まれながら、ボランティアのみなさんと頑張りました。
△お花畑に囲まれながらの西カール底の設置作業
この日は海の日を含む3連休だったので、多くの方が登られていました。南部の小屋も営業が始まり、本格的に夏山シーズンが始まりました。今年の夏は異常に暑いですね・・・。水分補給をこまめに行い、熱中症にならないように気をつけてください。また、小屋やルートによっては水場がない、または枯れていることもありますので、下調べを十分に行うようにしてください。みなさんにとって素敵な夏山シーズンになりますように♪
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
9月28日から29日にかけて荒川岳へ行ってきました。南アルプスでも紅葉が始まっています!
△富士山と白峰南嶺と紅葉
千枚小屋(標高2,600m付近)周辺でも徐々に色付き始めています。赤や黄色の色づきが空の青さに映えますね!千枚小屋周辺からは富士山や笊ヶ岳や笹山(黒河内岳)などを含む白峰南嶺を望むことができます。ガイドさんによると静岡県側から見る富士山は山頂の両サイドに猫の耳のような突起を見ることができるそうです。登られた方はぜひ、注目して見てみてください。
△千枚岳直下から見る荒川岳斜面の紅葉
千枚岳(標高2,880m)付近では荒川岳斜面の紅葉を楽しむことができます。黄色や赤く色付いた木々が綺麗です。これからさらに色付くことでしょう。楽しみですね!
△タカネマツムシソウ
千枚岳からのルートは高山植物がたくさん咲いています。今年は花期が2週間ほど早まっているせいか、昨年の同時期に見ることができた高山植物はほとんど枯れていました。唯一、綺麗に見ることができたのはこのタカネマツムシソウです。花の周りにある丸い葱坊主のようなものは花が落ちたタカネマツムシソウです。綺麗な花の容姿からは想像できない形です。
△悪沢岳
悪沢岳も秋へ姿を変えていました。夏は鮮やかな緑に包まれていましたが、秋はオレンジや黄色に変身!同じ山でも季節を変えて登ってみると異なった顔を見せてくれるので、何度登っても楽しむことができますよね♪
高標高域では冷え込みがかなり激しくなっています。日が差していても立ち止まったり、風が吹くと急激に寒くなってしまいます。寒さに対応できる服装を準備するようにしてください。また、南アルプス南部の山小屋は夏季に有人だった山小屋が無人の冬季小屋となっているところも多くなっていますので、最新の情報を収集して安全に秋山を楽しんでください。