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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

「海沿いに咲くオレンジに癒されて ~ 海辺の花園・再生プロジェクト」

2025年07月31日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
今年の梅雨は、ほとんど雨が降りませんでしたね。
 
黒潮の大蛇行が終わりを迎えたように、環境の変化を感じられる夏。
6月にシュノーケリングした際にも、海の中が海藻だらけでびっくりしました。
 
何かの異常かと思い、伊豆大島の海について詳しい方へ確認すると、むしろ昔は毎年夏頃まで海藻が見られたとのこと。
ここ最近は海水温の上昇により、海藻が早く枯れてしまっていたようです。
 
このような変化も、長い間観察していないと気付けないので、改めて一つの場所を見続ける大切さを思い出しました。
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△ イトヒキアジの幼魚と遭遇 背景の海藻が目立ちます
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△ 5月中旬の海の様子 6月でも海藻はこんな感じでした 

< 海辺の花園・再生プロジェクト >


毎年6月終わりから7月は「ハマカンゾウ」の季節!
このオレンジの色味、最高に元気をもらえると思いませんか?
 
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△ この絶妙なオレンジの色合い!
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△ 花びらがくるんと反り返っているのも愛らしい
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△ 三原山外輪山とハマカンゾウ 7月上旬の様子
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△ 他の海浜植物と重ねて撮っても良し◎
今年も「海辺の花園・再生プロジェクト」のイベントが実施されました。
昨年の様子:海辺に広がる「オレンジ」と、その仲間たち | 関東地方環境事務所 | 環境省
一昨年の様子:みんなで見てみよう!ゆっくり開くオレンジの花 (伊豆諸島地域) | 関東地方環境事務所 | 環境省
海浜植物について:海と陸と空の間にある花畑 (伊豆諸島地域) | 関東地方環境事務所 | 環境省

2019年から伊豆大島で続く活動で、「サンセットパームライン(島の北東部にある海辺の道)」を中心に、海浜植物や周辺の環境を更に良くして、地域の魅力を高めようというものです。
伊豆大島ジオパーク推進委員会が中心となった活動で、環境省が主催しているイベントもあり、島民のみなさんを巻き込んで活動を広げています。
 
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△ 保護柵がないとキョンに食べられてしまいます
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△ おしべの葯(やく:花粉が入っている袋状の部分)が開いていますね 
今年7月上旬の開花状況です。
鮮やかなオレンジに思わず心を奪われました。
なんて清々しい色合い!

暑くて蒸す季節でも、元気が出ますね。
途中、車を停めて写真を撮る、観光客の方々がいました。
 
実は、海浜植物にもキョンの食害が出ています。
なのでこのように保護柵で囲わないと、花やつぼみも食べられてしまいます。
柵の効果で、色々な種類の植物が生えるようになります。
 
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△ 柵内のハマカンゾウは結実が始まっています 
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△ 以前見られなかったハマナデシコもいつの間にか仲間入り!

< ハマナデシコが仲間入り >


海辺の花園の主役は、ハマカンゾウだけではありません。
育ちやすく目立ちやすい、ハマカンゾウを中心とした活動で始まりましたが、今後は他の仲間たちをどんどん増やしていく予定です。
 
ハマカンゾウの種は、地面にそのまま落下する「重力散布」型で、粒粒としています。
ハマナデシコの種は、風に乗って飛んでいく「風力散布」型で、薄くて平たい形。
もちろん、2種の広がり方も異なります。
 
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△ ハマナデシコの種子 風で飛びやすい構造になっています
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△ 講師の長谷川先生からの説明
ハマナデシコは溶岩がむき出しのところに生えることもありますが、ハマカンゾウはもう少し土っぽいところに生えています。
根を見ても、ハマカンゾウはニンジンのような貯蓄型に対し、ハマナデシコは細い根がたくさん生えるようです。
 
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△ ハマナデシコの種子 中の黒い種が見えていますね!
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△ 海辺では溶岩の上に直接生えています
ここは以前、ハマカンゾウが一番多く見られた場所。
遠くには富士山が見え、近くには溶岩地形もあり、とても見応えがあったそうです。
現在は、護岸工事によりハマカンゾウは少なくなってしまいました。
 
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△ 以前ハマカンゾウがたくさん見られた場所 
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△ ハマナデシコの種を蒔きました
ハマナデシコがないモデルエリアとして、試しに種を蒔いてみました。
多年草なため、花が咲くのは2年後の予定です。
さて、どれだけ増えるかな?
 
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△ ダイナミックな溶岩地形
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△ 何年もかけてできあがった地層

< 身近な場所でも >


海岸線だけでなく、付近のエリアでも、保全活動を始めています。
一か所目は公園の花壇。
せっかく花茎が出ていたのに、キョンに食べられてしまいました。
でもよく見ると、植えたはずのない他の海浜植物が入ってきていますよ。
 
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△ 長根浜公園の花壇
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△ 植えていないハマヒルガオも生えていました
もう一か所は温泉前の花壇の一角。
こちらは雑草が生えやすく、同じく管理が課題です。
 
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△ 御神火温泉前の花壇
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△ セスジスズメの幼虫(ハマカンゾウは食べないはず)
当日の外気温は30度。
日向と日陰の温度なども計ってみました。
アスファルトは日向で50度以上、日陰だと30度。
花壇の土は日向で40度くらいでした。
 
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△ アスファルト(日向)、花壇の土(日向)、アスファルト(日陰)の温度をそれぞれ調べて比較してみました 
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△ 日陰と日向では20度以上の差がありました 
生き物たちはつながることで支え合っています。
海浜植物以外で、講師の長谷川先生が目を向けたのは、カラスザンショウ
 
二次遷移の林に多く見られ、日陰を作り周囲の温度を下げるだけでなく、ハマカンゾウなどの受粉を担うチョウ類の蜜源になったり、幼虫の餌になったりもします。
このことから、一本の木が、様々な役割を担っていることが分かります。
 
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△ カラスザンショウの木
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△ まだつぼみですが、花が咲けば様々な虫たちが集まってくることでしょう
命の繋がりは当たり前のもの。
であったはずですが、近年では人間の活動により、どんどんと分断が進んでしまっています。
 
身近な自然こそ、気付かないうちに急に消えてしまうことも。
地域の方々と、島の自然への理解を深めることで、「大切にしたい」という気持ちを育んでいきたいですね。
 
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△ 鮮やかなハマカンゾウ 赤っぽいの、黄色っぽいの
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△ シオヤアブとニイニイゼミ 地面に降りてきたところを、車に轢かれてしまったのでしょうか 自然の中には物語がありますね

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