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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

秋の予感が漂う裏砂漠 ー 火災4ヶ月後の様子

2024年08月28日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
先日、初めてアオスジアゲハの幼虫に遭遇しました!
鮮やかで透けるような黄緑に、黒い突起(?)のようなものがちょんちょんと二つ。
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△ 愛らしい、アオスジアゲハの幼虫
幼稚園以来「あおむし」を触ったことがなかったので、最初はおそるおそるでしたが、いざ手に乗せてみると「きゅん」。
せっせと腕の方へと移動してしまったので、アオスジアゲハの幼虫が食べるとされているヤブニッケイの葉に戻してあげました。
また少しいきものたちと仲良くなれた気がしました。
(この記事の最後の方で、他のいきものも紹介しますのでお見逃しなく☆)

再生が進む木々たち

裏砂漠の火災から4ヶ月が経とうとしています。

火災1~3ヶ月後の様子のまとめ:
裏砂漠の「新しくなった」草原 ― 火災3ヶ月後の様子 | 関東地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
あっという間に再生する裏砂漠の緑 ー 火災2ヶ月後の様子 | 関東地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
変わりゆく裏砂漠で起きた火災と、その3週間後の様子 | 関東地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)

この日は薄曇りで暑すぎず、まさに巡視日和でした。
山の方は小雨のようでしたが、霧も出ておらず見晴らしも良かったです。
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△ 火災現場4ヶ月後の様子 
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△ 燃えた箇所だけ、鮮やかな緑が目立つ
4回目の観察ですが、似たような景色からも、新たな視点を見つけることができました。
それは、燃え残った木々の形姿に注目すると見えてくる、「個性」です。 
自然に創られた芸術、とも言えるのではないでしょうか。
今回見たユニークな木々をご紹介します。

まずはヒメユズリハさん。
木の根元だけではなく、幹全体からひこばえ(木の根元などから生える若芽)を沢山出しています!
枝先にもう葉は生えないのでしょうか?
今後の展開が気になります。
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△ ヒメユズリハ
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△ 幹を覆うほど密に生えるひこばえ
続いてヒサカキさん。
下から出るひこばえは、まるでブーツを履いているみたいでユーモラス!
常緑樹なので葉は固めだと思うのですが、この「ふさふさ感」がたまりませんね。
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△ ヒサカキ
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△ 根元から新しい葉がたくさん
こちらはニオイウツギさんとヒサカキさんのペアです。
ニオイウツギは常緑樹ではないからか、より旺盛にひこばえが生えていますね。
常緑樹の多くは、葉を毎年入れ替えない変わりに、長持ちするクチクラ層などでできた固い葉を持っています。
その分、成長も遅いのが特徴です。 
トゲナシサルトリイバラさんのつるも、前回まではあまり見られませんでしたが、再生が進んだのか、大きくなり木を飾るように巻き付いている様子があちこちで見られました。
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△ ニオイウツギとヒサカキ
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△ トゲナシサルトリイバラが絡むニオイウツギ
ほとんどが常緑樹林である大島では、冬になっても木の立ち姿を見ることはできません。
火災が起きてしまったこと自体は問題ですが、それと分けて考えると、実に貴重な機会だなと改めて感じました。
初めて見る、葉のない「裸」のハチジョウイヌツゲやヒサカキは新鮮でした。
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△ 一部だけ葉がない姿がアーティスティック オオシマザクラなど
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△ 上部分だけ葉がもっさり ハチジョウイヌツゲ

秋の雰囲気が漂い始めた、裏砂漠

8月とはいえ、既に秋の雰囲気が満載でした。
そう感じたのも、ハチジョウイタドリが咲き始めていたからでしょうか。
大島では植生の遷移で最初に生えるのがこの植物。
新しい火山には特に欠かせない存在です。
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△ 燃えた箇所からも花を咲かせていた、ハチジョウイタドリ
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△ スコリアの上にも直で生えることができる
火災で燃えた箇所のイタドリも、既に元気に花を咲かせていました。
先駆植物なだけあって、かなり丈夫なのですね。
青々しいススキの裾沿いに、黄色いイタドリが広がる様子にはうっとりしました。
 
 
イタドリはイヌツゲと同じく雌雄異株です。
花の色が違うため、すぐに見分けがつきます。
オスは黄味がかった白色の小さなお花をたくさんつけます。
(わたしにはなぜか、逆向きのシャンデリアを彷彿とさせます。)
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△ 雄花
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△ 雌花
メスは濃いピンクの花(受粉後?)で、よーく見ると?
ハート型!です。
それは種に「翼」が付いているから。
種の面積を増やすことで、風に乗って遠くまで飛べるような構造になっているのですね。
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△ イタドリの群落の中には落葉が溜まっている
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△ ハチジョウイタドリと裏砂漠、三原山
イタドリの群落の中を覗くと、茶色くなった古い落葉が溜まっています。
これらがゆっくり分解されることで、砂漠の中に土壌が少しずつ作られていき、他の植物も生えられる環境となる訳です。
大島では当たり前に生えている植物ですが、生態系における重要性が分かると、いかに私たちの生活が周りの自然に支えられているかが感じられるのではないでしょうか。
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△ 来年は見られないかもしれない景色
この日も新しい草原の力強さに元気をもらいました。
こんなススキを見られるのも今年だけかあと思うと少しさみしいです。
木がどうなっているかは来年のお楽しみ。

その他の生き物

こんな裏砂漠でも、毎回のようにいろいろな虫が見られるのには驚きます。
どこにいるか見つけられますか?
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正解は、、
(クモが苦手な方は閲覧注意です)
ど真ん中!
 
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△ コモリグモが背中いっぱいに子グモを背負っていた
写真を拡大してみてびっくり!
もちろん肉眼では見えませんでしたが、背中に子グモをたくさん乗せていますね。
コモリグモの仲間でしょうか?(模様からはウヅキコモリグモかなと思いました。)
とても素早く、すぐに逃げてしまいましたが、写真を撮れていたおかげでうれしいサプライズでした。

 
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△ クサギの花 秋が深まる頃に青い実をつける
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△ 甘い香りで、受粉を担うガの仲間を誘う
明るい林内の片隅に、クサギもひっそりと咲いていました。
木は切ると独特な匂いがするそうですが、花はかすかに甘い香りがします。
そして秋の終わりには真っ青な実をつけます。
青い色素はどこから来るのでしょうか?
謎は深まるばかりです。

新しい発見が尽きない日々を糧に、これからも頑張ります。
 

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