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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

霧の中の冒険! - 大島の小学校の野外学習

2024年10月31日
伊豆諸島 小野可蓮
こんにちは。鳥と花が好きな小野可蓮です。
キンモクセイの香りも終わり、これからはヤブツバキが咲く季節。
ここしばらくは、事務所の前の木々に毎日、スズメたちが「ねぐら入り」するのを楽しみにしています。
秋になり、子育てが終わると、スズメは群れで行動することが増えるようです。
夕方になると、ちゅんちゅん、ちゅんちゅん、といっぱい聞こえてきますが、暗くなる前までにはすっと静かになります。
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△ サクラの木に「鈴なり」になるスズメたち

秋といえば、遠足!

今年も大島では、つつじ小学校の野外学習にて、大島の自然や国立公園のお話をさせていただきました!
昨年の様子 一昨年の様子
あいにくお天気ではなかったものの、先生方が「雨プラン」を用意してくださったおかげで、三原山も途中まで行くことができました。
今回は活動風景を撮っていただいたので(貴重!)、当日の様子をご紹介します(写真提供:つつじ小学校)。

不思議な響き!「パホイホイ」とは?

真っ白な霧の中、みんなでわくわくしながらスタート。
三原山の山頂口から、遊歩道を進みました。
途中にある、パホイホイ溶岩のところをちょっぴり探検!
ここの溶岩は、三原山を作った「安永の大噴火(1777年頃)」の時のものとされています。
このような縄状の溶岩、実は日本では珍しいのです。
「パホイホイってなんだろう?」と最初は思うのですが、火山で有名なハワイの現地語で「なめらかな」という意味だそう。
粘性の低い溶岩は、「冷えて固まる速度」より「流れる速度」の方が速いため、特徴的な形になります。
この他にも、色んな形の溶岩がこの周辺では見られました。
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△ パホイホイ溶岩 みんなで手に触れて、感触を確かめる

からの、「アア」

大島の一番最近の噴火は1986年に起きました。
その時は、中央火口噴火に割れ目噴火と、あちこちで様々な噴火が起き、最終的に全島避難(1か月間)となりました。
遊歩道の途中では、中央噴火口から流れた溶岩流の先端部が見られます。
三原山は山頂カルデラの中にあるため、中央噴火口からの溶岩流はカルデラ内で留まってくれることも多く、今まで集落が守られてきました。
そんな溶岩流に、登ってみたいと思います!
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△ 1986年の噴火について解説 看板には、当時の噴火の様子の写真も載っている
登っていくと、今度はガラガラした塊の溶岩がたくさんありました。
パホイホイと違い、「ゴツゴツ」した、粘性の高い溶岩が、ハワイ語で「アア」というそうです。
こちらは、溶岩の「冷えて固まる速度」の方が、「流れる速度」より速いため、表面がボロボロ崩れながら流れ、このような形になるそうです。
 
次は、アア溶岩に覆われた地面にも、生えている植物に注目。
周辺で目に付いたのは、ハチジョウイタドリとハチジョウススキです。
噴火後に裸地となった場所に、最初に生えてくるのがハチジョウイタドリ、次がハチジョウススキです。
過酷な環境で生えることができるのは、発達した根のおかげ。
以前、NPO法人の火山洞窟学会がホルニト(溶岩でできた洞窟のような塚)の中に調査で入った際の写真を見ると、カーテンのように根っこがぶら下がっているのが分かります。
風が強い場所でも、深いところまで根を伸ばすことで、定着して大きくなれるんですね。
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△ アア溶岩の上(溶岩流先端) 
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△ ハチジョウイタドリなどの先駆植物についてもお話しました
途中で聞こえてきた、「土ってどうやってできるの?」という質問。
それも、ここにヒントがあります。
ハチジョウイタドリの株の中を覗いてもらいました。
中には、落葉が溜まっているんです。
そう、ハチジョウイタドリの生えた場所の落葉から、溶岩の上に土ができていくのです。
大島に生えているすべての植物(野菜などの作物も含め)は、ハチジョウイタドリの恩恵を受けていると言っても過言ではないかもしれません。

大島の自然ってなんで「大事」なの?

大島に住んでいると、三原山や裏砂漠は、いつでも見られる「当たり前」の光景。
そんな身近な自然を守ることについて、みなさんにも考えてもらいました。
 
国立公園であるということは、「日本を代表する風景地」として選ばれているには違いありません。
ただ、それってわたしたちの暮らしとどう関係があるの?といったところですよね。
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△ 三原山 2024年2月撮影
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△ 裏砂漠 2022年11月撮影
自然は多くの「生態系サービス」をわたしたちに提供し、日々の生活を支えてくれています。
きれいな空気に水、食料やそれを育てる土壌があるのも、すべて自然のおかげです。
火山は噴火を繰り返す中、災害を起こすこともある反面で、実は島民はその恩恵を受け、恵みをいっぱいいただいています。
なので、自然のバランスを守ることは、わたしたちの「安全」や「しあわせ」を守ることに直結しているんですね。
 
では、大島に住むわたしたちは、自然を大切にするためにどんなことを心掛けられるでしょうか?
真っ先に思い浮かぶのは、今や全国的+全世界的に問題になっている、「外来種などを持ち込まない」ことや、「プラスチックごみを減らす」などかもしれません。
 
わたしが個人的に一番大事だと思っていること。
それは、自然の大切さを仲間と「分かち合い」、「伝えていくこと」です!
そのためには、まずは一人一人が「自然の良さ」を「見つけ」、「感じ」、「好きと思う」ことから始まるのではないかと思います。
答えは十人十色ですが、だからこそみんなで色んな「好き」を合わせれば、自然が豊かな未来を創っていくことができると信じています。

自然を守るには、みんなで力を合わせながら活動を続けていくことが欠かせません。
だからこそ、わたしたち一人一人がより良い未来を思い描き、それに向けて小さな取組を重ねて行くことが、日本のすばらしい自然を未来に繋いでいく鍵になると考えています。
 
大島を、これからも「みんな」で楽しめるよう、「みんな」で守っていきたいですね。
 
つつじ小学校のみなさま、今年も一緒に活動させていただき、ありがとうございました!

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