富士箱根伊豆国立公園 箱根
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2021年09月21日箱根の2つの滝(箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
盛夏はあっという間に過ぎ、今年は涼しくなるのが急でした。日暮れも早くなり、秋がすぐそこまで来ています。現在は全国的に緊急事態宣言の最中にありますので、外出もなかなか出来ない状況ですが、こんな時こそ、美しい国立公園の景観に癒やされて欲しいと考えます。今回のAR日記では、ご自宅で箱根の名瀑2つを楽しんで頂ければ幸いです。箱根は芦ノ湖のイメージが強く、周囲の国立公園地域に比べて滝があるイメージが少ないかもしれませんが、見応えのある滝が存在します。
1つ目は、癒やし系の「千条(ちすじ)の滝」です。
【千条の滝】
実はこの滝、2020年6月にもAR日記でご紹介しています。
⇒AR日記「石仏群と千条の滝」http://kanto.env.go.jp/blog/2020/06/post-875.html
今回は前回と異なる角度からの写真です。
大きな滝ではありませんが、滝の幅が広く、細く幾すじもの水が流れ落ちています。苔の緑色や岩の黒色が、白い滝筋をより美しく引き立てます。これからの季節は、滝の上に育ったイタヤカエデの紅葉が加われば、秋ならではの素敵な景観になること間違いないでしょう。小涌谷駅から徒歩10分程度でたどり着けますので、箱根観光時の自然散策におすすめです。
この場所の詳細はこちら⇒箱根ジオパークHP「H21 千条の滝(ちすじのたき)」
https://www.hakone-geopark.jp/area-guide/hakone2/021tisujinotaki.html
2つ目の滝も、2020年3月にAR日記で一部だけ紹介していますが、実はこのときは、台風被害で滝の足元に近づくことが出来ませんでした。
⇒AR日記「柱状節理の岩壁」http://kanto.env.go.jp/blog/2020/03/post-835.html
この滝に近づけるようにルートが整備され、手すりが出来ていましたので、様子を見に行ってきました。
これが力強い「飛龍(ひりゅう)の滝」の姿です。
【飛龍の滝】
このときは水量も多く、迫力ある景観を眺めることが出来ました。実は神奈川県下最大規模の滝(落差が上段15m、下段25mで落ちる2段の滝)です。
【滝手前の目印となる橋】
この橋の向こうに進むと、飛龍の滝足元まで近づけます。
【注意看板】
ただし、このような看板があるとおり、水量の多いときには、この橋の上で滝を眺めて下さい。
【↑このような場所を歩きます。】
滝の足元に近づくときには、水が流れる場所もあるので、濡れる覚悟で進みましょう。鎖はしっかりと設置してありますが、滑らないように十分注意して、ゆっくり慎重に歩く必要があります。無理はしないで下さい。
飛龍の滝は起伏が激しい「湯坂路~畑宿」を歩く、飛龍の滝探勝歩道ハイキングコース上に位置します。この景観を眺めに行く場合には、足元は登山用靴がおすすめで、ストックなども持つと良いでしょう。
この場所の詳細はこちら⇒箱根ジオパークHP 「H15 飛龍の滝と柱状節理(ひりゅうのたきとちゅうじょうせつり)」https://www.hakone-geopark.jp/area-guide/hakone3/015hiryuunotaki.html
コロナ禍でまだ県境をまたぐ外出は自粛となっていますので、緊急事態宣言やまん延防止措置対策が解除されるまで、ご自宅で引き続きAR日記をお楽しみ下さい。そして、早くコロナ禍が落ち着くことを祈りましょう。
2021年08月31日真夏の来訪者(箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
さて、今年の夏は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、自宅で過ごす方も多かったのではないでしょうか。箱根がある神奈川県には緊急事態宣言が発出されていることもあり、例年に比べ観光客は少ない状況です。
そんな箱根にある「富士箱根伊豆国立公園管理事務所」では、感染症予防対策の為に業務中も窓や扉を日々開放していますが、そのためか今年は珍客の来訪が度々ありました。本日はそんな珍客たちをご紹介します。
①オニヤンマ
日本最大のトンボとして知られる、大型のトンボです。ヤブ蚊やハエ・ハチなどを補食する昆虫なので虫除けになると噂が広がり、近年登山者たちがこの姿を真似たブローチを身につけている様子を目にします。効果の程は不明です。先日は、箱根へ遊びに来た小学生にも自慢されましたが、本物はこちらです!事務所の玄関扉は、そこまで大きく開いているわけでは無いのですが、意外と事務所の中へ入ってきます。写真の個体は、救出作業時に少しクモの巣が絡んでしまいましたが、この後屋外に離すと無事に飛んで行きました。
②ムネアカセンチコガネ(神奈川県準絶滅危惧種)
ふと足元を見ると、ひょうきんな顔をした昆虫が、玄関先に来訪していました。調べたところ、「ムネアカセンチコガネ」でした。私は初めて観察した昆虫です。背中に小さなハートマーク♥もあり、なんとも可愛らしいですね。センチコガネの仲間は糞虫といって、動物の糞を餌にする習性があります。野生動物の糞を食べ、分解して土に戻し、衛生管理に協力している森の掃除屋さんの仲間に、このムネアカセンチコガネも含まれています。加えてムネアカセンチコガネには、「キノコ」を食べる面白い習性があることも知られています。事務所の周りにおいしいキノコがあったのでしょうか。普段は土の中に潜っている虫なので、こちらは観察後植え込みに離しています。
③ニホンジカ
これはあまり、嬉しい来訪者ではありません。事務所がある湖尻周辺で、シカが増えている事実は確認されていましたが、このところ事務所近隣で目撃される例が増えています。夕刻ですが、道路に出てきていました。近づくと、2頭の若い雄ジカでした。箱根でのシカ急増は、生態系へ大きな影響を及ぼすことが大きく問題視されています。すでに丹沢ではシカによる森林の裸地化や、ヒル・ダニの増加によるハイカーへの被害などが起こっており、箱根でも同じことが起こらないように早急な対策を実施している最中です。これ以上増えないようにしなければなりません。
④ツチアケビの実
こちらは、来訪と言うよりも、「ご近所さん」の紹介になります。赤いウインナー?が、「ツチアケビの実」になります。いつ見ても、びっくりする姿の植物ですね。春にはアスパラガスのようなツチアケビの芽を紹介しましたが(⇒「芦ノ湖水門を訪ねて2021(箱根地域)」http://c-kanto.env.go.jp/blog/2021/06/2021-3.html)、なんと事務所の徒歩1分圏内に、ツチアケビの実がありました。私がこれを知ったのがつい最近なので、花の写真はあいにく撮れませんでしたが、来年にも出て来ることを祈るばかりです。そのときには、定点観察をして成長の記録を写真に納めたいと思います。
⑤番外編 アズマヒキガエルの子
こちらも「ご近所さん?」の紹介です。事務所がある湖尻地域からはやや離れた「箱根神社」周辺で、先日出会ってしまいました。しかも1匹だけでは無く、たくさん。。。大きさは、ヒトのツメ程度のミニサイズです。近くにアズマヒキガエルの卵塊が産み落とされた水辺があったのでしょう。少し前の6月頃の出来事ですが、孵化して成長したオタマジャクシたちが陸に上がったタイミングだったようです。この子たちは、ぴょんぴょん飛び跳ねるのではなく、のしのしと歩いていました。親ガエルを思わせる歩きぶりで立派でした。大きく育って欲しいですね。箱根の山では、アズマヒキガエルは増えているのでしょうか。箱根の自然の多様性が感じられる、嬉しい出会いでした。さらに人が多い観光地での子ガエルたちの出現は、人と自然が長く共生してきた歴史のある、箱根らしい出来事でもあると感じました。
今回は事務所周辺の来訪者やご近所さん、5種の紹介を行いました。「STAY HOME」でご自宅にいる皆さんの周辺でも、珍客の来訪はいつでも可能性がありますよ!是非ご自宅周辺にも時折目を向けていただき、身近な自然を体感できる生物観察を試みてはいかがでしょうか。新たな出会いは、すぐ近くにあるかもしれません。
2021年08月18日【富士山編】御中道の清掃と外来種駆除を行いました
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
富士山吉田口五合目から続く「御中道」とその周辺での活動
御中道の清掃
先日、他の事務所からの呼びかけがあり、御中道の清掃と外来種の駆除を行いました。
朝9時、天候にも恵まれており、スバルライン五合目では登山客だけでなく児童の団体などの観光客も見受けられました。
▲スバルライン五合目の様子
まずは御中道をスバルライン五合目からおよそ2時間ほどかけて、奥庭駐車場へと歩きながらゴミ拾いを行いました。
今回初めて御中道を歩きましたが、その印象はやはり山頂への登山とは異なるものでした。
歩くとすぐに木々に藻の様なものがまとわりついて見えます。
最近流行りのエアプランツに見た目はとても似ているようです。
▲中央の気に付着する「サルオガセ」
こちらは「サルオガセ」の仲間で、その実は地衣類(菌類)です。周囲の青々とした植物とは異なり、不思議な印象を持たせてくれます。
こういった生物が見られるのも、山頂を目指す登山とは異なる御中道の魅力です。
道中、辺りを見渡してゴミを探しつつ、他にも夏真っ盛りを生きる草木も観察することが出来ました。
また、一部ではありますが看板には植物などの情報も記載しており(今後距離標も設置予定です)、豊かな植物の間からは山頂が垣間見えるポイント(タイトル上画像)もあるので、登山ではなくとも富士山を満喫することが出来ます。
▲ハクサンシャクナゲと看板
結果、ゴミはほとんどなくきれいな状態が維持されていました。
小さいゴミ(お菓子の袋等)を数個拾ったのみです。
外来種の駆除
今回外来種として駆除したのは「タニソバ」です。
外来種、と表現していますが、国外からの外来種ではなく国内にも広く分布しています。
しかし、周辺では今回駆除を行った四合目付近の工事現場にしか生育が認められていないため、人為的に持ち運びこまれたものであると考えられ駆除の対象となりました。
このまま放置すると、五合目以上の砂礫地への拡大も懸念されます。
▲タニソバ(左方の赤い葉をもつ植物)
根は浅く、スコリアが混じる地面だったためストレスなく地面から抜くことが出来ました。
根深いとなかなか引き抜くことが出来ないこともあるので、一安心です。
今回はビニール袋6袋ほどの量を駆除しました。
地道な作業でしたが、これからも富士山が変わらない姿であり続けるための必要な作業だと感じます。
また、靴裏に付着している植物の種子等を落とす(持ち込まない)目的で、登山口にマットが設置されている場合があります。
登山前には、マットで土などを落とすようご協力をお願いします。
▲駆除したタニソバ
▲種子落としマット
富士山では、今回触れたゴミを捨てない、外来植物を持ち込まない以外にも、登山中のマナーや法律で禁止されている行為があります。
登山前には、以下のリンクを確認して富士山での注意事項を覚えておきましょう。
2021年07月27日仙石原湿原「ヨシ刈り後の開花調査」とモウセンゴケの花 (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
梅雨も明け、本格的な夏がやってきそうな箱根です。
夏の花たちが咲き始めるこの時期、箱根町では仙石原湿原で咲いている花数を数える「ヨシ刈り後の開花調査」が行われました。この調査は、先行して約1ヶ月前に今年で13回目となる「ヨシ刈り」が実施され、これによって適度な日照を得られた湿地性植物が、ヨシ刈りをしなかった場所と比較して勢力がどう変化するかを、花数によって確認する調査です。この結果は、ヨシ刈りを今後の仙石原湿原の保全にどう活用するべきか検討する材料にもなっていきます。
【今年のヨシ刈り風景 背景には天然記念物の石碑とススキ草原が見えます】
(ヨシ刈りについてはこちらを確認下さい⇒昨年の「ヨシ刈り」作業について
⇒アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]_「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域) (env.go.jp))
開花調査当日は、コロナ禍、および神奈川県では蔓延防止重点等措置が発令されている中でしたので、マスク着用、そして対象地域外の少数人員で作業を実施し、この作業にアクティブ・レンジャーも同行しました。少人数での調査になったため、調査対象はこの時期開花を迎える3種「ノハナショウブ」「カキラン」「ミズチドリ」に絞り実施しています。
【開花調査前 草丈の短い部分がヨシ刈りをした場所です】
ヨシ刈り実施箇所の方形区ではヨシが育ち始めていましたが、方形区の4角形がはっきりと目視確認できます。この方形区の横に、ヨシ刈りをする前の状態と同じ環境、同じ広さの方形区(対照区)をそれぞれ新たに作り、この2か所内の花数を比較します。汗だくになって作業を実施した皆さんは、パークボランティア関係者や箱根湿生花園の方々です。この皆さんは植物調査の経験が豊富なので、少人数でしたが手早く調査が実施出来ました。蒸し暑い最中、本当に頭が下がります。
調査に参加した感想は、日当たりが良い場所ではしっかりと「ノハナショウブ」の開花数が増え、「カキラン」は日向でも日陰部でも咲いているといった印象でした。広くはない湿原の中で、植物たちは自らに適した環境を求めて生育している様子に驚きます。
【カキランとノハナショウブ(どちらも神奈川県絶滅危惧ⅠB類)】
「ミズチドリ」は至る所で咲いており、少しヨシが伸びている場所でも元気に咲くようでした。
【ミズチドリ(神奈川県絶滅危惧ⅠB類)】
更に今回は、調査対象種以外の植物ではありますが、ヨシ刈りの効果で元気に咲く湿地性植物を目にすることが出来ました。「モウセンゴケ」の花です!
【モウセンゴケ(神奈川県絶滅危惧ⅠB類)とその花 】
「モウセンゴケ」に、このように可愛らしい花が咲くのは意外でした。ヨシ刈り後の方形区内は一部ではありますがモウセンゴケのお花畑となっていました。太陽の光が好きな植物であり、ヨシ刈りによって好環境がそろった結果と思われます。
今回紹介した植物たちは、全国的には一般的に観察できる植物ですが、神奈川県では希少種のカテゴリー「絶滅危惧ⅠB類」に指定されています。
【希少種って何?と思われた方は以下サイトを確認下さい。希少種カテゴリーを調べるのにも便利です。】
★生物情報収集・提供システム・生きものログ⇒https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/
仙石原湿原は、「ヨシ刈り」という人の手による管理で、湿地性植物を維持していた歴史があります。その昔は、馬を放牧して下草を食べさせ、また民家の屋根の材料としてヨシが刈られることを繰り返して、仙石原湿原にはノハナショウブが咲き誇ったとも言われています。このサイクルが残念ながら失われている今、現存する生物多様性を守る為にも、「ヨシ刈り」が保全活動に有用であろうことは、今回の「開花調査」への同行で実感できました。「開花調査」の結果自体は、その年の天候によっても変化があるので、今後も継続して観察していくことが重要です。何もしなければ、乾燥が進んで湿地は消えてしまいますので、アクティブ・レンジャーとしては、仙石原湿原の保全活動3本柱「火入れ」「ヨシ刈り」「開花調査」の繰り返しを、今後も協力、応援できればと考えています。
【おまけ】
仙石原湿原では、湿地性植物以外にも、箱根の山で観察できるユニークな植物に出会えました。
「オオナンバンギセル」です。こちらは全国で、一般的に観察しやすい植物です。
【オオナンバンギセル】
ススキの根元に出る寄生植物ですので、ハイキング中にススキを見かけたときには、
是非探してみてください。
2021年07月14日【富士山編】開山前から出来る装備の状態とルールの確認
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
AR日記をご覧の皆さま、こんにちは。
箱根事務所の高木です。
富士山の開山時期になり、2年ぶりに富士山にも登山客が戻りつつあります。
梅雨でなかなか外に出ることが出来ない今だからこそ、快適な富士登山に向けて装備の状態を確認してみてはいかがでしょうか。
- ●装備の状態をチェック
昨年は開山されることがなかったため、今年を楽しみに富士登山を計画されている方も多いかもしれません。
是非今年は例年以上にしっかりと準備をして、感染症対策も行い、事故無く楽しく富士登山を終えましょう。
<登山靴>
まずは登山靴から。
富士登山では、ハイカットの靴を選ぶと良いでしょう。スコリアが靴の中に入るのを防ぎ、また足首を固定する役割もあります。特に「砂走り」や「大砂走り」はゆっくり歩いても靴が数センチ沈みこむところもあるため、さらにゲイター(スパッツ)などを装備することも推奨されます。
靴の底などもはがれている場合がないように、今のうちに状態をしっかりチェックしておきましょう。状態に不安が残る場合には買い替えも検討した方がいいですが、試着はしっかりしておきましょう。
▲富士山は過酷な環境です。「これくらい良いか」と放置しないようにしましょう。
<ストック>
ストックは、特に下山時の膝への負担を軽減する際に有効です。
伸縮タイプのものは長さを調節するストッパーなどに異変がないか確認しましょう。また、登山道や植生の保護の為、キャップは必ずつけてください。
<ザック>
登山中に使い物にならなくなってしまわないよう、ザックに破れなどの破損がないか確認を。ウエストベルトの差し込みバックルなども耐久力があるかチェックしておきましょう。
▲差し込みバックル
<防水スプレー>
防水機能のあるザックや登山靴、レインウェアも使用を重ねていると、機能が低下することがあります。急な悪天候で雨に濡れてしまい、体力の低下やザックの中を水浸しにしない為にも今のうちに防水スプレーで対策を行っておくと安心です。
※防水スプレー・防水スプレーを使用する物品の、使用方法や取扱説明書を必ずご確認のうえご使用ください。
<感染症対策>
消毒ジェルや不織布マスク、密閉袋など感染症対策用の装備は個人で用意を。また、登山前の計画段階から体調管理を行って、症状がある場合には冷静な判断で中止・延期の決断をしましょう。
そして個人的なおすすめ装備として、軍手を持っていくと安心です。
登山技術・経験や歩き方にもよると思いますが、軍手(グローブ)は、例えば富士宮ルートの一部では岩がせり出しているような場所もあるので、手を守ってくれます。また、他のルートでも急な転倒の際には手のすりむきなどを防いでくれるでしょう。リーズナブルな価格もポイントです。ただし、保温の効果は低く、雨が降ると冷たい水分を含んでしまうので注意しましょう。
- ●ルール
富士山は国立公園と特別名勝及び史跡に指定されているため、自然公園法と文化財保護法によって、法律により禁止されている行為があります。
必ず下記のページを確認しておきましょう。
<富士箱根伊豆国立公園特別保護地区>
五合目より高い地域は国立公園特別保護地区に指定され、自然保護のため厳しい規制がかけられています。
また、世界文化遺産にも登録され、他にも溶岩樹形等の自然的・歴史的価値のある天然記念物がありますので、マナーを守った行動を心がけましょう。
最後になりますが改めて「withコロナ時代の新しいマナー」をよく確認して感染拡大防止に努めましょう。
Withコロナ時代の新しい富士登山マナー(PDF:278KB)
2021年06月29日芦ノ湖水門を訪ねて2021(箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
5月に予定していたパークボランティア主催の行事「芦ノ湖水門と歴史を訪ねて」は、まん延防止措置対策のため中止されましたが、今回も次年度に向けての研修が実施され、アクティブレンジャーが同行しています。
このコースは、箱根の「歴史」と「ジオ(大地のパワー)」に触れられるコースです。
【 箱根ビジターセンターで配布しているコースマップです 】
【湖尻水門】
このコースでは「湖尻水門」「深良水門」2つの水門を通ります。
上部写真の「湖尻水門」は、大雨等で芦ノ湖の水が増えすぎた際に解放される水門です。今の姿は平成2年に立て替えられた新しいものです。それ以前は手動の水門だったそうです。パークボランティアさんの中には、以前の古い湖尻水門を実際に手動で締めて、芦ノ湖の水量を管理した経験者がいます。経験者が語る、リアルな水門管理のお話は、聞き応えがあることでしょう。
【移築され残されている古い湖尻水門】
「深良水門」周辺からは、登りのコースです。芦ノ湖周辺の標高700m前後から、1000m前後まで1時間程度かけて登っていきます。一部古い石畳が残されていますが、滑りやすいため注意して歩く必要があります。
【深良水門 (2020年3月撮影)】
途中に現れる、箱根スカイライン(車道)を歩いて渡ると、ここから景観が変わります。富士山から吹く風が、冷たく強く吹くことで、育つ植物が限られてくる地帯「風衝地」です。箱根外輪山らしい景色が広がります。
【 箱根の風衝地はササの草原です 】
そして振り返ると、そこには絶景が。
【 芦ノ湖と箱根内輪山 】
箱根の名所を一度に見渡せる景観が広がります。箱根には火山活動と人の暮らしが両立してきた歴史が有り、「ジオサイト」と呼ばれる、大地が動いている軌跡が各所にあります。この風景を眺めながらパークボランティアさんのガイドを聞くことで、「ジオサイト」の点と点をつないだ線が見え、箱根ジオパークの全体像が感じられました。スタート地点の箱根ビジターセンターも見えて、歩いた距離の実感も湧きますよ。
また、それ以外にも、駿河湾や富士山が見える展望があり、実際にその目で見て欲しい!と感じる景観抜群のハイキングコースでした。写真撮影のベストスポットは、パークボランティアさんが知っています!是非、教えてもらいましょう。
季節の植物としては、「ツチアケビ」を目にすることが出来ました。5月下旬の姿はアスパラガスのようです。夏の姿はまた激変しますので、夏期以降でこのコースを歩くときには楽しみに探してみて下さい。
【ツチアケビ 春の姿はアスパラガス?】
来年は、お客様をご案内できますように。コロナ禍の終息を、切に願います。
2021年06月23日野生動物との共生
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
AR日記をご覧の皆さま、こんにちは。
箱根の高木です。
最近、巡視をしている最中に珍しい光景に出会うことがありました。
こちらの写真に何が写っているかわかりますでしょうか。
ヒガシニホントカゲの幼体同士が接近しています。
左の個体の方が体長が小さいようです。
その小さい個体が大きい個体をじっと見つめています。
この後どうなるのか気になり観察を続けることにしました。
その後じりじりと小さい個体の方が近寄り、、、
そしてちょっかいを出し、消えていきました。
近すぎて連なっているようにも見えますね。
ちょっかいを出された個体と言えば、、、動じない個体なのでしょうか、
接触されてもほとんど動きはありませんでした。
そんな彼(オスでしょうか?)が気になり、私ももう少しだけ近寄って撮影してみることにしました。
、、、逃げません。
警戒心が強ければとっくに逃げている距離ですが、どのような経験をしてきた個体なのでしょうか。
近づいてしまった手にも逃げることはありませんでした。
野生動物との距離が近くなった、束の間の楽しく緊張の瞬間でした。
しかし、全ての動物に対してこの瞬間が訪れるとは限りません。
最近、箱根地域でツキノワグマの目撃情報がありました。
実は、調査により箱根には少ないながら恒常的にクマが生息している可能性が高いと過去に論文で発表されています。
当たり前ですが、クマとの間では先ほど私が行ったトカゲとの接触のように不必要な接近は起こすべきではありません。
今のところ、被害が出ている情報はありませんが、様々な野生動物と上手な付き合い方をしていきたいと改めて感じるきっかけになった出来事でした。
仙石原地域でのツキノワグマの出没情報について(箱根町)
http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/6,24602,16,115,html
2021年05月31日箱根で見つける春の花
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
AR日記をご覧の皆さま、こんにちは。
箱根事務所の高木です。
最近は地域によって早い梅雨が始まっているようですが、箱根も雨が降りながらも暖かい日が続いています。
外に出てみると、実を付けていたり花が咲いていたり、植物の様々な「色」を目にすることが出来ます。
今回は巡視で見つけたそんな春の花たちをご紹介します。
▲和名:サクラスミレ (学名:Viola hirtipes)
スミレ科スミレ属 花期4~6月 花径25~30mm
見つけられる場所:日の当たる山地帯の草原
花が大きく美しいので「スミレの女王」の異名があるそうです(王はいるのでしょうか?)。
確かに他のスミレとは違い、スミレ初心者の私でも「これは大きい」と感じるほど存在感がありました。
▲和名:シャガ (学名:Iris japonica)
アヤメ科アヤメ属 花期4~5月 花径30~60mm
見つけられる場所:スギ林周辺などのやや湿っている木陰
箱根ジオパークのジオサイトの一つである堂ヶ島(島と言っても、海に浮かぶ島ではなく箱根の地名です)付近で観察しました。
こちらも大きな花が印象的です。
(※由来については諸説あり、帰化植物として扱われる場合もあります。)
▲和名:サンショウバラ (学名:Rosa hirtula)
バラ科バラ属 花期6月 花径60mm
見つけられる場所:林縁や草原(富士山に近い富士箱根地域のみ)
日本固有種かつ、富士山や箱根地域のみに分布する希少な植物です。
名前の由来は、独特の香りを持つサンショウに葉が似ていることから。
こちらはビジターセンターの近くで観察しました。
開花は夏とされていますが、今年は暖かいからでしょうか、6月に入る一週間前でも開花しているようでした。
今回は春に観察した植物を3種、ご紹介しました。
木本と草本どちらもありましたが、自然の中を歩くと上から下まで、よく見てみると様々な色を持つ花があることに気付かされました。
今後もよく見て、じっくり理解を深めていきたいと思います。
2021年05月28日スミレを探して2021 (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
令和3年度の箱根地域親しむ運動「スミレを探して春の仙石原を歩く」は、神奈川県の蔓延防止対策等措置の実施を受けて中止となりましたが、次年度に向けて対象地区外在住の少数精鋭のパークボランティアのみで研修を実施し、ARも同行しました。
当日のコース「仙石原探勝歩道」は、約8㎞の道のりを歩く長めのハイキングです。
【 仙石原自然探勝歩道 コースマップ 】
箱根ビジターセンターを出発し、箱根湿生花園まで昼休憩をはさんで、ゆっくりと約6時間を歩きます。高低差は少なめですので歩きやすいコースですが、体力はやや必要です。
今回はガイドマイク計5台を使用し、パークボランティアの皆さんに、解説時の使い心地を試してもらいました。もちろん、ソーシャルディスタンスを維持できることが最大のメリットですが、過去にお客様から「良い解説だが、声が聞き取りにくかった」という感想を頂いたことがあり、今回ガイドマイクを使用することによりそれが改善できることを実感しました。お客様とパークボランティアさん、それぞれの安全と安心の為にも、今後ガイドマイクは自然解説時の必須アイテムとなっていくでしょう。
【 ガイド中のパークボランティアさん 】
今回メインの観察対象「スミレ」は、なんと13種類を観察しました。1つの探勝歩道で見られるスミレの種類が、そんなにあることに驚きです。一人で歩いていたら、見分けがつきません。パークボランティアさんたちの解説の価値を強く感じました。観察できる植物はスミレ以外にもたくさんあり、それぞれに楽しい解説を聞くことが出来ました。
【ほんの一部のスミレたちです】
【スミレ以外の植物はもちろん、金時山と早川の美しい景観も臨めます】
また、仙石原探勝歩道には、今年ならではの話題の場所がありました。「耕牧舎」跡です。
【 耕牧舎跡の石碑 】
NHK大河ドラマで取り上げられている「渋沢栄一」は、箱根にも関わりが深い人物です。この「渋沢栄一」が箱根の人たちと共に、明治12年箱根仙石原に創設して沼津の御用邸に乳製品を納めていた牧場が「耕牧舎」です。この日は耕牧舎跡でランチ休憩を取りました。静かな木陰で、箱根の歴史を感じながら、ゆっくりと気持ちの良い時間が過ごせます。これからドラマに、箱根や耕牧舎の名が登場する日が楽しみになりました。
終日を通して、見どころ満載の仙石原探勝歩道でした。本当に良いコースです。次年度には、パークボランティアの皆さんと一緒に、お客様を案内できることを心待ちにしたいと心から感じる研修同行でした。そのためにも、コロナ禍が早く過ぎ去ることを祈るばかりです。
AR日記をご覧の皆さま、こんにちは。
箱根の高木です。
最近は繁殖期のシカの鳴き声を耳にすることが増えました。
どうやら、箱根事務所近くの仙石原などの地域から聞こえるようです。
さて、夏の間は富士山のことばかりでしたが、今回は箱根の姥子という地域を紹介したいと思います。
姥子(うばこ)は、当事務所の北側にあり、箱根ロープウェイ「姥子駅」や姥子温泉があるエリアとして知られています。
箱根の温泉と言えば、江戸時代初期から知られていた「箱根七湯」が有名です。姥子温泉も同時期からあったようですが、主要な街道から大きく外れていて訪れる人が少なく、そのためあまり親しまれることがなく、七湯には選ばれなかったようです。
▲周辺概略図(ピンクのエリアが姥子地域)
簡単ながら上の図のように姥子周辺の地図を作成してみました。
緑の線は、ハイキングコース(県の自然探勝歩道になっています)となっており、自然散策を楽しむことも出来ます。
※芦ノ湖から姥子までは通行可能ですが、姥子から大涌谷は火山活動の影響で通行不可となっています
コースは緑に包まれた日陰の道ですので、夏でも強烈な直射日光に見舞われることはありません。今の時期も涼しくてオススメです。
▲姥子付近のコース
ただし、坂道で石が滑りやすくゴツゴツしているため、足をひねったり転んでケガをしたりしてしまう可能性がありますので、サンダルや底の薄いシューズ等は避けましょう。
また、姥子駅周辺まで来ると富士山が見えることがあります。
▲箱根ロープウェイ姥子駅周辺からの富士山(10月11日撮影)
ちょうど駅舎の間から富士山が見えていますね。
姥子駅周辺は、「富士山がある風景100選」にも選定されています。箱根の他にも色々な地域から選ばれていますので、詳しくはこちらからご覧下さい。
富士箱根伊豆国立公園「富士山がある風景100選」http://www.env.go.jp/park/fujihakone/topics/100.html
また、すぐ近くには船見岩という小高くなっているポイントがあり、こちらからは大涌谷を望むことも出来ます。
▲箱根ロープウェイ ▲船見岩からの大涌谷眺望
噴煙の状況や大涌谷駅に向かうロープウェイの様子が楽しめます。
大涌谷の方を見ると、手前には緑が広がっているのですが奥側噴煙の近くは木々が茶色く見えます。火山性ガスの影響で枯れていて、景観に独特の変化を与えてくれています。
また今の時期、周辺の植物はリンドウやヤマラッキョウなどを観察することが出来ますので、足下にも目を向けてみるのも楽しいです。
なお、大涌谷の様子は以下のリンクから画像で確認することが出来ます。
インターネット自然研究所「箱根・大涌谷」https://www.sizenken.biodic.go.jp/view_new.php?no=48
さて今回、姥子を歩くうちに「派手ではないものの、ゆっくりと自然散策や大涌谷などを楽しめる良いところ」という印象を持つようになりました。
また、地名について調べてみると「金太郎の眼の病気を山姥が温泉で治した場所」という金太郎伝説からついたものということがわかりました。
普段と違った目線でその土地について理解を深めてみることも新鮮ですので、是非皆さんも試してみて下さい。