富士箱根伊豆国立公園 箱根
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2020年06月25日箱根地域のシカ調査 前編
富士箱根伊豆国立公園 高木俊哉
AR日記をご覧の皆様、こんにちは。
梅雨の肌寒さと合間の焼けるような日照りに翻弄されている、箱根事務所の高木です。
実は先日、帰り際にイノシシの幼獣を見かけ、
人生初めての野生のイノシシかつ箱根での目撃でしたので、テンションが上がってしまいました(一瞬でしたが...)。
しかしやはり、大型の野生動物と人の生活の営みが交錯するような状況はあまり思わしくはありません。
適度な距離感を保ってより良い共生が望まれますが、今日、各地でイノシシやシカによる多方面への被害が発生しており、ここ箱根地域も例に漏れずです。
今回は、そんな箱根地域でのシカ対策の一環、センサーカメラによる調査について触れたいと思います。
まず、センサーカメラとは
このような野生動物の調査にはよく使われている設置型のカメラです。
前方で動くものを感知すると、勝手に撮影を行ってくれる優れもの!
そのセンサーカメラは、箱根地域の調査では芦ノ湖周辺及び仙石原湿原に設置されています。
仙石原湿原は、一部が国の天然記念物にも指定されている希少な神奈川県唯一の湿原です。
希少な植物が生育しているため、シカなどの動物に踏み荒らされてしまう等の影響から守り、
生態系の多様性を維持しようと周りには侵入防止策も設置しています。
さて、そんな24時間稼働してくれているセンサーカメラの稼働確認、記録されているSDカードの交換の為、作業に向かいました。
こちらは、仙石原湿原の中(一般には立ち入り禁止です)。
道は無く1、2mの藪で生い茂っており足下は見えず、
おまけにところどころにイノシシが掘ったと思われる穴(まさしく落とし穴でした)で足を取られ、
何度も声にならない声を上げました。。。
こちらは芦ノ湖の西部に位置する、三国山という山です。
登山道から外れた急斜面の中にも設置してあるので、気をつけながら作業を行います。
このような一見道なき道でも、動物にとってはけもの道にもなります。
そうやって、人知れず(知られている?)生息しているシカ達の状況を調査する為、このようにセンサーカメラを仕掛け現状把握を行っているのです。
今回は、実際の現場の雰囲気をお伝えしました。
次回に続きます。
2020年06月22日「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
今回は今年で12回目となる、箱根ならではの自然を守る特別な作業「箱根仙石原湿原植物群落」ヨシ刈りを紹介します。普段は人の立ち入りが禁止されている特別区での活動ですが、環境省へ作業参加依頼があり、箱根町教育委員会生涯学習課の皆さん、そして箱根湿生花園の職員皆さんと、一緒に作業させていただきました。
昭和9年、箱根仙石原湿原はノハナショウブの群生地として、国の特別天然記念物に指定されました。80年ほど前の箱根では、地元の人たちがヨシやススキを刈り取って、日常生活の中でかやぶき屋根に使ったり、家畜の餌にして、野焼きや草刈り作業が盛んに実施されていました。それが自然に、湿原の維持管理に繋がっていたのです。
ですが、昭和45年以降、生活様式が変化して草刈りや野焼きが行われなくなると、残されていた湿原では「植生遷移」が進みました。驚くべきことに、人の利用がなくなった湿原は約50年で、ノハナショウブの群落や貴重な湿原性植物が消えて、ハンノキの森に変化し始めたのです。実は箱根仙石原湿原は、人との関係性があって今に残されてきた、貴重な湿原だったというわけです。
【野焼きしない実験区はハンノキが成長し、森に変化している/説明者は箱根湿生花園スタッフ様】
これではいけないと、箱根町では平成元年から野焼きを再開しました。しかし野焼きを繰り返すうちに、野焼きだけでは成長の早いススキやヨシが先に繁茂して、背丈の低い湿原性植物は成長が難しいことがわかってきます。
【左:2020年3月の野焼き様子 右:ヨシ刈り前6月の様子】
そこで平成21年から、有識者との相談も経て、以前は生活の中に根付いていた「ヨシ刈り」を再実施することが実験的に開始されました。それが今回私たちが関わった作業です。
【刈り取り作業の様子/写真は箱根町職員様より提供1】
作業前に10m四方の方形区を5箇所設置し、その中で刈り取り作業を行いました。
背丈の高いヨシを30本1束にまとめ、刈り取っていきます。
最終的には、刈り取った本数と、その重量を記録し、これまでのデータと比較します。
草刈り中は、むやみやたらに足跡をつけないように、気を遣います。
足元には、実際に湿原生植物が生きています。
【足元に観察されたモウセンゴケ(絶滅危惧Ⅰ類)】
【方形区外で観察された、可憐なトキソウ(絶滅危惧Ⅰ類)】
刈り取り後の方形区はこのような状態です。
【青い枠内にはヨシが無くなる/写真は箱根町職員様より提供2】
本来の自然の景観「箱根仙石原湿原植物群落」を後生に残す為に、このような活動が箱根では実施されています。7月には更に開花調査も予定され、箱根町の人たちによってこれからも継続されていきます。いつか、ノハナショウブの群落が再び日常に戻る日が来ることを目指して。大変ながらも、素敵な活動でした。アクティブレンジャーとしてこの活動に、今後も関わって行きたいです。
今回は普通では立ち入れない仙石原湿原の様子を紹介しましたが、「箱根湿生花園」に足を運ぶと、湿原の植物たち、そしてそこに暮らす生き物たちに出会え、学ぶことが出来ます。是非こちらにも足を運んでみて下さい。
箱根湿生花園HP ⇒ http://hakone-shisseikaen.com/
湖尻にある箱根ビジターセンターは、6月1日より開館しました。
駐車場も使えるようになっています。
ただし、状況が変わった際には変更がありえます。
箱根を訪れる際には情報を確認してお越し下さい。
「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/
今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html
県境をまたいだ移動が徐々に再開されています。ただし、まだ油断は禁物です。
新たな感染者増加の無いように、各自の安全対策実施がこれからは重要です。
ソーシャルディスタンスと手洗いうがいは再度心掛けていきましょう。
2020年06月11日石仏群と千条の滝 (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
5月下旬になり、神奈川県の緊急事態宣言が解除されました。
箱根館内の登山自粛願いも解除となり、梅雨の時期を目前に、少しずつですがハイカーが戻ってきています。
実際の状況把握も兼ねて、巡視を行いました。
【「石仏群と歴史館」⇒「鷹巣山」⇒「小涌谷駅」 片道約6km程度のルート】
このコースの見どころは、鎌倉時代の遺跡「石仏群」です。
元箱根石仏群として国重要文化財にも指定されています。
富士箱根伊豆国立公園の中でも、箱根独特の景観です。
【磨崖仏二十五菩薩(西側)】
この石仏群周辺は、箱根を通過する国道1号線(旧東海道)沿いで最も標高が高く、寒くて風が強い場所です。そして、700年ほど前の鎌倉時代から旅人が往来する旅路でありながら、当時は周囲から噴煙が上がり、噴石も転がる荒野でした。箱根越えで最も過酷な場所「地獄」と呼ばれたそうです。その地獄を、旅人が無事通り抜けられるようにと、祈りを込めて噴石に石仏が彫られ、今もその姿を眺めることが出来ています。
ありがたい石仏です。
コロナ禍の中で、早くこの混乱が治まりますようにと、ついお祈りしてしまいました。
実は国道沿いにもあるのですが、意外と気が付かず皆さん通過しています。
【国道1号線沿いからも見える、磨崖仏二十五菩薩(東側)】
巡視は平日だった為、まだ人出は少なかったですが、途中数組のハイカーさんたちとすれ違いました。
それぞれ少人数で、皆さん気を使いながらのハイキングを心掛けているようです。
少しお話をした、よく箱根を訪れるというハイカーさん。
写真をとってもいいよ!と言われ、背中をパシャリ。
緑が本当に気持ちよさそうでした。
【鷹巣山山頂付近】
このコースのもう一つの見どころが「千条の滝」です。
【千条の滝】
昨年の台風被害で壊れた部分は修復され、今はとてもきれいです。
滝も美しいのですが、その上に大きなイタヤカエデの木が立派に育っていて、これがまた素敵。
【コゴメウツギ】
道中はコゴメウツギのかわいらしい花も、至るところで咲いていました。
まもなく梅雨、そして夏の盛りがやってきます。
箱根の山々は新たな季節に向けて、また変化をしていくのでしょう。
楽しみですね。
湖尻にある箱根ビジターセンターは、6月1日より開館しました。
駐車場も使えるようになっています。
ただし、状況が変わった際には変更がありえます。
まだまだ安心せずに、ソーシャルディスタンスと手洗いうがいを心掛けていきましょう。
箱根を訪れる際には情報を確認してからお越し下さい。
「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/
今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html
2020年06月08日箱根の動物発見(5月)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
AR日記をご覧の皆様、こんにちは。
箱根事務所の高木です。
最近は雨が降ることも多くなり、春が明けて季節の変わり目を感じるような日が続いていますね。
今回は、最近行った巡視の中で出会った動物たちをご紹介したいと思います。
【ヒガシニホントカゲ】
歩いていると道の脇をカサカサッと動く影を見つけました。
よーく目を凝らしてみると、いました。
まだ幼体で尾が青いですね。
同じ爬虫類のヤモリと間違われてしまうこともありますが、トカゲは体に光沢があるのでそこが一番の見分け方のポイントになるかと思います。
【ハンミョウ】
青赤緑の美しい色に白の斑点、長い肢と大きな顎。
肉食で2㎝前後のオサムシ科、春過ぎから10月頃まで見ることが出来るようです。
よく地面を歩いていて、人が近づくと飛んで少し先に逃げる習性から「ミチオシエ」や「ミチシルベ」の異名があります。
この時も、少しばかり道案内をして頂きました。。。
いかつい顔をしてますね。
【オオセンチコガネ】
こちらも登山道の目立つところを歩いていました。
2㎝前後のセンチコガネ科、観察時期はハンミョウと同じのようです。
背面は光沢のあるブドウ色、近畿では青や緑の個体もいるようですが、
写真では色が完全に伝わらないのが残念です。
糞に集まるいわゆる糞虫なので、動物の糞を探している途中だったのでしょうか。。。
【ニホンジカ】
休んでいたのか、反芻をしながら座っていました。
カメラの撮影音に驚き、この後すぐに走って逃げてしまいました。
実は箱根にもシカがいます。
個体数増加による影響も出てきているようで、当事務所でも神奈川県唯一の湿原
仙石原湿原などを守るための対策を地域と協力して行っています。
このお話については、また次回の更新でお話しできればと思っています。
皆さんも身の回りの動物たちに思いを馳せて頂く機会になればと思います。
<ご注意>
緊急事態宣言が解除され、地域の公共の駐車場も開放されるようになってきましたが、
未だ感染症の収束にもなっておらず感染拡大の第2波も懸念されています。
県外からの来訪自粛やマスクの装着などは怠らず、一刻も早い感染症蔓延の収束と皆様
が自然に触れ楽しめることを願っております。
2020年05月22日箱根GW明け5月の植物② (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
前回に引き続き、今回も箱根でこの時期見頃の植物を紹介します。
コロナ禍は、少し落ち着いてきたようにも見えますが油断は禁物です。
何より箱根のある神奈川県は、まだ緊急事態宣言の解除が行われていません。
駐車場が閉まっているところも多いので、もう少しご自宅でお楽しみください。
今回の紹介はこちら。
【ブナの新緑】
ブナの木が一斉に芽吹いています。実は箱根周辺には、貴重なブナ林が残っているのです。
戦後の復興時、日本では木材の需要が増えました。その時ブナの木は、木材使用には適さない(腐りやすく、曲がりやすい)と伐採され、代わりにヒノキやスギが日本の山野には多く植林されました。ブナ林とヒノキ林の違いは、時間がたった今、顕著に現れています。
【台風災害後のヒノキ林地帯】
【同じ散策路のブナ林地帯】
材木としては役に立たないといわれたブナですが、今は「森の女王」と呼ばれます。大量の落ち葉で豊かな土壌を作り、そこに植物が多く根を張ることで土砂崩れを防止したり、ブナ林全体が高い保水力を持って森のダムとなり、山全体の環境を守っていたりもします。
5月という芽吹きの季節に、ブナ林での森林浴は最高に気持ちが良いですよ。
【ブナ林】
頭上だけでなく、足元にも目を向けると。
素敵な花たちもこの季節、箱根で咲いています。
【コイワザクラ】
【チゴユリ】
ぜひ来年にはブナの新緑やこの花たちを五感で味わってもらえますように。
今はSTAYHOME、写真で癒されてください。
箱根では現在も、公共の駐車場がほぼ閉鎖されています。
期間は5月31日までですが、場合によっては延長もありえます。
ご注意下さい。
「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/
今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html
2020年05月14日公時の宿石
富士箱根伊豆国立公園 高木俊哉
AR日記をご覧の皆様、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園箱根地域の高木です。
今回は、前回の記事でも少し触れた金時山の、ある不思議な岩についてご紹介したいと思います。
金時山は箱根外輪山の最高峰でもありますが、麓には公時神社がありこちらは登山をせずに参拝することが出来ます。
『まーさかり担いだ金太郎』
でおなじみの金太郎のモデルであり、
平安時代後期の武士、源頼光(みなもとのよりみつ)に仕えた四天王の1人でもある、
坂田公時(さかたのきんとき)が、祭神として祀られています。
その神社を通り過ぎ登山道を進むと、途中で少し道から逸れたところに大岩があります。
金時蹴落石(きんときけおとしいし)です。
突然目の前に直径2mほどの大きな岩が現れるので最初は少し驚きましたが、迫力のある岩を身近で感じることが出来ます。
冒頭でも触れた金太郎にまつわる伝説のある大岩で、金太郎が山頂から蹴落としたと言われています。
さらに登山道を進んでいくと、
真っ二つに割れた巨大な岩が現れました。
先ほどの金時蹴落石が小さく見えてしまうほどの大きさで直径10m以上はあるでしょうか。
赤丸で囲んだ部分が先ほどの写真とほとんど同じサイズの標識で、高さは1.2mほどです。
この巨大な岩が、タイトルにもあった公時の宿石(きんときのやどりいし)です。
金太郎が育ての親の山姥と一緒に住んだと言われていますが、
昭和6年に轟音を響かせ突如割れてしまったようで、今は反対側の景色も見えてしまいます。
植物が生い茂り、樹木が岩に根付いている様子と、金太郎伝説が相まってとっても神秘的に見えますね。
自然の偉大さと不思議な伝説について触れられる、そんな場所のご紹介でした。
<ご注意>
感染症対策の為の自粛要請に伴い、現在金時山頂の山小屋および公衆トイレは閉鎖されています。
これまでの生活が制限され、自粛疲れも出てくる頃ではありますが、一刻も早い感染症蔓延の収束と皆様が自然に触れ楽しめることを願っております。
2020年05月12日5月GW明けの箱根植物 (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
STAYHOMEが徹底されたGWを終えて、箱根に初夏が訪れ始めました。
緑が輝いて、芦ノ湖がまぶしいです。
【芦ノ湖】
そんな中、見頃の植物も変わってきました。
今回はこの時期見頃の植物を一部紹介します。
来年の為の下勉強として、ご自宅でお楽しみ下さい!
はじめはこちら。
【ハナイカダ】
この植物は、なんと葉の真ん中に花が咲きます。
イカダに乗った様に見えるお花が、なんとも可愛らしいです。
【ハナイカダ アップ】
実は雄花と雌花があります。
複数の花が付いているこの木は、雄です!
雌花は、通常花は1つ。
夏期には結実し、黒い実がイカダに乗ります。
次はこちら。
【ギンリョウソウ】
箱根でも見られます。この時期には少し早めですが。
先日、うっかりビニールゴミを拾おうと手を伸ばしたら、ギンリョウソウでした。
自分でもびっくりしました!
腐生植物といって、葉緑素を持たずに菌類と共生することで栄養をもらう為、暗い森でも成長できるという、白く輝いて見えるツツジ科植物です。
ちなみにツツジと言えば、こちら。
【ミツバツツジ】
この時期美しい山の花の代表です。ギンリョウソウが、ツツジ科とは不思議ですね。
最後にこちら。
【ズミ】
別名、コリンゴ、コナシとも言うそうです。
蜜が甘いのでしょうね、ハナムグリや他の虫たちが沢山食事に集まっていました。
更にその虫たちを食べに、キビタキが現れたりと、木の周りはたいへん賑やかです。
さて現在も箱根がある神奈川県は、コロナ感染症の影響によりまだまだ外出は自粛継続中。ですので、公共の駐車場が5月31日までほぼ閉鎖されています。近隣の静岡県は自粛がやや緩和されつつありますが、お客さんに「来て下さい」と大きな声で呼べる状況ではまだまだありません。
今はこのAR日記を通して、ご自宅で箱根の初夏を楽しんで頂ければと思います。
STAYHOME、もう少し続けていきましょう。
「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/
今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html
2020年05月01日スミレを探して (箱根地域)
富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
今回は、本来であれば4/25(土)に開催を予定していた"箱根地域自然に親しむ運動「スミレを探して春の仙石原を歩く」"というハイキングイベント報告の予定でしたが、コロナ禍の影響を受けイベントは中止となっています。ですが、箱根のスミレたちは元気に咲いています!紹介せずにはいられません。
▲タチツボスミレ4種、ケマルバスミレ、エイザンスミレ、アカネスミレ、ツボスミレ
様々なすみれ色が美しいですね。個人的には、エイザンスミレのピンクがかったすみれ色が好きです。これだけではなく、他のスミレも咲いています。
▲ナガバノスミレサイシン。葉の形が特徴的です。
▲タチツボスミレ群生
タチツボスミレは各所で華やかに咲き誇っています。
▲ビジターセンター周辺芝生のスミレ群生
お昼のお弁当をここで食べると幸せですよ。
スミレは、日本に50種以上も自生し、変種を含めると100種にもなるという私たちの身近に普通に咲く花です。この花は、春早くに咲くことでハナバチたちを集めて受粉を助けてもらい、また種子に付いているエライオソームという甘みでアリたちを引き寄せ、種子を遠くに運んで生息域を拡大するという、実はいろいろな動物たちとも関わりあって生きる植物です。箱根の湖尻地域には毎年たくさんのスミレが咲きますが、それはスミレがこれだけ繁茂できる生態系が残されているということかもしれません。スミレは普通の花ですが、いつまでも普通種であるように、周囲の虫たちも含めて自然全体を大切にしたいですね。
箱根を彩るのはスミレだけではありません。
▲クロモジ(緑)、ボケ(朱)、キランソウ(青)、モミジイチゴ(白)
すみれ色以外にもたくさんの花色が、箱根の春を華やかにしています。今年は、AR日記を通して、皆さんにこの花たちを楽しんで頂けると嬉しいです。花たちにパワーをもらって、次の春こそ安心して楽しめるように、今はしっかりSTAYHOME!GWを乗り切りましょう。
※4/29-5/13の期間、箱根ビジターセンター駐車場は閉鎖しています。状況によっては期間を延長する場合もあります。詳しくは箱根ビジターセンターHPにてご確認下さい。
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今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html
2020年04月27日明神ヶ岳の山頂でみえたもの
富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉
アクティブレンジャー(AR)日記をご覧の皆さま、はじめまして。
今年度より富士箱根伊豆国立公園にアクティブレンジャーとして着任致しました、高木と申します。
前職では、動物の飼育管理に携わっていましたが、より自然環境に近い場所で人と自然環境の
共生のことを考えたいと思い、この自然豊かな箱根で仕事をさせて頂くことになりました。
さて、まだまだ箱根の魅力を知っていく途中の段階ですが、付近の山に巡視にも行き始めています。
今回はその中でも明神ヶ岳(みょうじんがたけ)を歩いた時の様子をご紹介したいと思います。
▲明神ヶ岳とフジザクラ
明神ヶ岳は、箱根の観光名所でもある大涌谷などを含む箱根山、
それをさらに取り囲む箱根外輪山の一部です。
箱根外輪山では、麓に公時(きんとき)神社があり金太郎ゆかりの地でもある金時山が有名ですが、
そこから南東へと続く明神ヶ岳は、山頂が開けていて天気が良ければ大涌谷や富士山も良く見える気持ちのいいところです。
4月上旬の明神ヶ岳から南に下るルート上では日当たりの良いところでタチツボスミレが咲いていたり、
▲タチツボスミレ
岩の上など目立つところにテンのものと思われる糞が点在していたり、
生き物が活動的になってきていることを実感しました。
山頂は開けていて気持ちが良く、東側には相模湾が望めました。個人的には最高のロケーションです。
また、土砂の流出がある一帯では植生復元の為の作業地(立ち入り禁止です)があるのですが、そこではゴミが多数見受けられました。
半分地面に埋まっているような状態でしたが、手に取ってみると空き缶はぼろぼろでデザイン的にも恐らく昭和のもの(もう令和ですので、2世代も前ですね...)です。
▲山頂の植生復元作業地
▲山頂から相模湾への眺望
山を歩いていると時たま出会う残念な光景ですが、土砂からゴミが出てくる景色には驚きますし、山積した人間の行動1つ1つが与える影響について思い知りました。
この日は回収の為のゴミ袋等を準備していなかった為、ゴミの撤去は出来ませんでしたが
感染症が少し落ち着いた頃にでも回収作業が行えればと思います。
何十年後にこの山を登るであろう人達の為にも、ゴミのない綺麗な景色を作っていきたいですね。
初めての投稿で少し暗いお話になってしまいましたが、今後も箱根の魅力や現状を伝えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
AR日記をご覧の皆様、こんにちは。
箱根事務所の高木です。
前回の記事では、センサーカメラの設置等を紹介しました。
今回も、後編として引き続きシカ調査について紹介します。
さて、前回までは藪の中をがさがさと入り道なき道を進み、クモの巣や泥を浴びながらデータ回収したところまでをお伝えしたと思います。
まさしく野生動物の気持ちになったつもりで、急斜面のけもの道をじっくりと歩きました。
そんな苦労を乗り越え、実際に撮影できた画像がこちらです。
カメラ目線ですね。。。
こちらは角が生えています。
やや小さく見えるので、少し若いオス個体でしょうか。
シカ以外にも様々な動物が撮影されていました。
イノシシです。
ずんぐりとしていて迫力があります。
キジのつがいです。
私はペアでいるところをあまり見たことがありませんでした。
このように様々な動物が撮影できていましたが、実は全てがうまく記録できているわけではありません。
霧や風で動く植物に反応して撮影してしまうこともしばしば...
シカだけが写っているようなことは自然ではありそうもないですね。。。
これらの得られた情報を基に箱根地域でシカの害が減り、より良い共生が出来る未来があることを望むばかりです。