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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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南アルプス国立公園 南アルプス

189件の記事があります。

2019年02月26日南アルプスで暮らす動物たち

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

南アルプスは山深く原生的な森林が残されており、ほ乳類は種類数も個体数も多く、ツキノワグマ、ホンドキツネ、ホンドオコジョなど30種類以上が確認されています。自然の豊かさを反映して昆虫類も豊富であり、高山性のチョウ類も多く生息しています。今回は、南アルプスで暮らす動物たちについてみなさんにご紹介したいと思います。

ライチョウ親子

△ライチョウ親子

多くの方がご存知ではないでしょうか?南アルプスが生息地の最南限になっており、北端の甲斐駒ヶ岳から南端のイザルガ岳に生息しています。身体はハトよりも大きく、すんぐりしていて、冬の寒い時期にも耐えられるよう、足はふわふわの毛で覆われています。国指定の特別天然記念物、国内希少野生動植物種として法律および条例によって保護されています。きっと今頃は、真っ白な毛で覆われて雪の中でぬくぬくしていることでしょう...♪

こちらをじっと見つめるカモシカ

△こちらをじっと見つめるカモシカ

カモシカは名前に「シカ」とついていますが、実はウシ科です。ニホンジカはオスだけに角が生えますが、カモシカはオスメス両方に角が生えます。南アルプスでは山麓から亜高山帯の広い範囲で生息しているため、登山道でも頻繁に目撃されます。群れで行動することはなく、1年のほとんどを1頭で行動しています。写真には1頭しか写っていませんが、この尾根の下に子どもが2頭!貴重な瞬間でした。

木の実を探しているホシガラス

△木の実を探しているホシガラス

亜高山帯から高山帯までのハイマツなどの針葉樹の茂った場所に生息しています。街でよく見かけるカラスは全身真っ黒ですが、ホシガラスは全身茶褐色気味で、白い斑点が散らばった羽色をしています。標高が高いところでは頻繁に見ることができます。土の中や木の洞など森のあちこちに木の実を隠して貯めておく習性をもっています。そのまま埋められた木の実がやがて芽を出して新しく実を付ける木が育つことから「森を再生する鳥」としても知られています。

このほかにもコウモリやモグラ、ネズミなどの小型ほ乳類やヤマトイワナも生息しています。いかに南アルプスが豊かな自然であるかが分かります。南アルプスで動物を見かけた際は、ぜひ、いきものログを活用してみてください。 → https://ikilog.biodic.go.jp/

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2019年02月19日夜叉神峠でバードウォッチング!

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

昨日、夜叉神峠へ巡視に行ってきました。

夜叉神峠は鳳凰三山縦走路の通過点になっており、頂上では日本第2の高峰である北岳をはじめとする白峰三山を眺めることができるスポットです。登山口から約1時間で登ることができて、アクセスがいいこと、眺めがよいことから1年を通して多くの方が登られます。

今回は、わたしが発見した生きものをみなさんに紹介しようと思います。

夜叉神峠にはアカゲラやメジロなどの鳥類が数多く生息しています。この時期は木々が葉を落としているため、森や林の見通しが良く、バードウォッチングがしやすくなります。樹林帯を歩いていると、くちばしで木をたたいている音やせわしく飛び回る羽の音が聞こえました。

ルリビタキ メス

△ルリビタキ メス

オスはルリ色で綺麗な色をしていますが、メスは全体的に茶色っぽい色で尾はほんのりルリ色、わき腹がオレンジ色をしています。鳥類はオスが派手な色でメスが地味な色ですね。この色の違いは、メスがオスを選ぶときの信号として、オスの外見の派手さが機能しています。少しそっぽを向いているようで顔を正面から撮影できなかったのが心残りです。

コガラ

△コガラ

木をトントンたたいていました。木の中に餌となる虫がいるか探していたのでしょうか?木に止まってくれる時間が短く、見つけるだけでも一苦労でした。この子の周りにも数羽いたようで、同じような鳴き声が複数箇所から聞こえ、みんなで会話をしているようでした。

冬鳥が見られる時期でもあり、今しか見ることができない鳥もいます。頂上まで行かずとも、暖かい格好をしてバードウォッチングを楽しんでみてはいかがでしょうか?

夜叉神峠の登山道では春の訪れを見つけました。アセビは1年中緑の葉を付けているので目に付きやすいと思います。

つぼみを付けるアセビ

△つぼみを付けるアセビ

アセビは漢字で「馬酔木」と表記し、馬が食べると神経が麻痺し、酔ったような状態になるとことに由来しています。開花は2月から始まりますので、もう少し経てば夜叉神峠でも花が見られる季節になりますね。

■夜叉神峠、夜叉神峠から鳳凰三山の登山計画をされている方へ

夜叉神峠までの登山道は標高が高い・低い、日が当たる・当たらないに関わらず、凍っている部分が多くあります。落ち葉の下が凍っている場所もありました。雪道の歩行に不安がある方は軽アイゼン等があると歩きやすいかと思います。夜叉神峠までの登山道でも、風が吹いたり、立ち止まると寒さを感じますので防寒対策をしっかりするようにしてください。

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2019年02月12日ニホンジカ対策ワーキンググループ会議が行われました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

1月31日(木)に南アルプス市内にて「南アルプス自然環境保全活用連携協議会 ニホンジカ対策ワーキンググループ会議」が開催されました。関係市町村、県、国、研究機関、地権者等を交えて南アルプス国立公園とその周辺のニホンジカ対策に関する意見交換を行いました。       

会議のようす

△会議のようす

南アルプスでは、高山の生態系を保全するために高山植物に悪影響を与えるニホンジカへの対策が実施されています。国や県、市町村が役割分担しながら、モニタリング、植生保護、シカ捕獲、普及啓発等に取り組んできました。この会議は、各機関で情報を共有することによって、効率的・効果的な取り組みを実施するために開催されています。

南アルプス周辺におけるニホンジカ対策の流れは以下のようになっています。

ニホンジカ対策ワーキンググループ設置及び南アルプスニホンジカ対策方針策定の経緯

△ニホンジカ対策ワーキンググループ設置及び南アルプスニホンジカ対策方針策定の経緯

(クリックしていただくと大きな画像で見ることができます)

現在、南アルプス周辺で実施されているニホンジカ対策は、南アルプスニホンジカ対策方針のもとに位置づけられています。ニホンジカ対策方針は平成29年5月に南アルプス自然環境保全活用連携協議会(南アルプスユネスコエコパークの管理運営組織)において策定され、ニホンジカ対策ワーキンググループにおいて情報共有、方針の更新が行われます。

現在、環境省で行っているニホンジカ対策は、1.防鹿柵の設置、2.土壌流出防止のための伏工、3.南アルプス国立公園内での捕獲です。2.土壌流出防止のための伏工は主に塩見岳で行われており、今年度の作業時には昨年度設置したマットから植物が生育しているのが確認できました!!

昨年度設置した伏工マットから植物が!

△昨年度設置したマットから植物が!(色が濃いマットは今年度設置したもの)

伏工したからといってすぐに成果が出るわけではありません。時間がかかる地道な作業ではありますが、徐々に元の姿へ回復して欲しいと願っています。

高山のニホンジカ問題は遠くの問題としてとらえられがちですが、人の暮らす町が里山、そして高山へつながっているように、ニホンジカも農村から低山、そして高山へと広がっていきます。増えすぎたニホンジカが日本全国で生態系や農林業、わたしたちの生活にまで深刻な影響を及ぼしています。皆さんも、ニホンジカを見かけたとき、山に登ったとき、ふとしたときに南アルプスのお花畑とニホンジカを思い出してみてください。

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2019年02月05日あなたも南アルプスライチョウサポーターになってみませんか?

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

事務所がある芦安は1月31日18時ごろから降った雪によって、あたり一面真っ白になりました。事務所前にある大きな木についた雪が綺麗でした。

太陽に照らされてきらきら輝く雪(2月1日撮影)

△太陽に照らされてきらきら輝く雪(2月1日撮影)

今は先日の雨によってほぼ完全に雪が溶けてしまったので、残念ながら雪化粧を楽しむことができません。道路上も凍っている場所はほとんどなく、安全に走行できます。積雪時は山の神ゲートから通行止めになってしまい、夜叉神峠までの道路が通行止めになっていましたが、昨日(4日)に解除されたので、通行は可能ですが、落石などには十分お気を付けください。

さて、2月24日(日)に山梨県北杜市で「南アルプスイチョウサポーター養成講座」を行われます。

ライチョウの特徴などが描かれたチラシ

クリックすると大きな画像で見ることができます

「南アルプスライチョウサポーター養成講座」

日 時:平成31年2月24日(日) 13:30から16:00

会 場:甲斐駒センターせせらぎ(住所:山梨県北杜市武川町牧原1243)

受講料:無料

※受講される場合は申し込みが必要です。申し込み締め切りは2月12日までです!

 詳しくはこちらをご覧ください。 → https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/docs/5289.html

信州大学名誉教授である中村浩志先生による「南アルプスのライチョウの現状について」や横浜国立大学研究員である若松伸彦先生による「ユネスコエコパークの取り組みについて」、受講後の取り組みについての講座が行われます。養成講座受講者には南アルプスライチョウサポーターハンドブックとピンバッチが配布されます。また、ライチョウに関する情報をメールで受け取ることもできますよ!

ライチョウ親子の後ろ姿

△ライチョウ親子の後ろ姿

南アルプスが最南限であるライチョウは1980年代には約3,000羽と推定されていましたが、2000年には約1,700羽まで減ってしまっています。天敵による捕食の危険性や生息環境の変化によって絶滅が心配されています。

これまで年に何カ所かの会場で行われてきた南アルプスライチョウサポーター養成講座ですが、今回の講座が最後だそうです。あなたも南アルプスのライチョウを見守るライチョウサポーターになってみませんか?

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2019年01月29日南アルプス林道のビュースポット

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

南アルプスの山々へ行く道中にはたくさんの林道があります。例えば、早川町から奈良田に続く南アルプス公園線、大鹿村から塩見岳登山口に続く鳥倉林道、畑薙第一ダムから赤石岳や荒川岳に続く東俣林道など。同じ山でも違う林道からアクセスできるという山もあります。数ある林道の中で今回は芦安から広河原、北沢峠、そして長谷に続く南アルプス林道にスポットライトを当てて、いくつかのビュースポットを紹介したいと思います。

■御野立所(おのだちしょ)から見る北岳、間ノ岳

北岳と間ノ岳が一望できる

夜叉神ゲートから2つ目のトンネルの先にあります。御野立所は、1957(昭和32)年7月、昭和天皇・皇后が野呂川林道を視察された際にご休憩された場所です。写真には写っていませんが、当初作られた記念碑が立っています。この場所からは白峰三山の一部である、標高日本第2位の北岳(右側)と第3位の間ノ岳(左側)を見ることができます。また、鞍部には小さく北岳山荘も見えます。


■不老の滝付近から見える仙丈ヶ岳

南アルプスの女王、仙丈ヶ岳を望む

広河原から北沢峠行きバスに乗り換え、しばらくすると『不老の滝』と書かれた看板が見えてきます。北岳を水源とし、落差約400mある滝です。1年中、水が涸れることなく流れていることから不老の滝と呼ばれています。この滝の近くからは仙丈ヶ岳を見ることができます。左奥に見えるのは大仙丈ヶ岳と仙塩尾根です。大きくなだらかな山容が美しいですね。

■北沢峠付近から見る甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳と摩利支天

野呂川出合というバス停を過ぎて、しばらくすると見えてくるのが甲斐駒ヶ岳です。甲斐駒ヶ岳は山全体が花崗岩に覆われているため、夏でも白く輝いています。右に見えるのは摩利支天です。摩利支天の下に見える木が無い場所は仙水峠にある岩塊流(がんかいりゅう)と呼ばれる岩です。北沢峠から仙水峠までは往復3時間ほどで行くことができますよ♪

ほかにも、白鳳渓谷から見る秋の紅葉や夜叉神ゲートから広河原間にある夫婦滝や小滝などの滝も見どころです。夜叉神ゲートから広河原までは山梨交通のバス停がところどころにあるので、気になる場所で下車するのもいいですね!現在、夜叉神ゲートから先は車両や自転車等の乗り入れが禁止となっています。来シーズンのバス運行情報等は、来年度以降、各機関から発表される情報をご確認ください。

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2019年01月22日夜叉神峠の1年

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

夜叉神峠は標高1,770m、夜叉神峠登山口から1時間ほどにあり、南アルプス国立公園の中でも1年を通して登山口へのアクセスが楽にできる場所です。鳳凰三山の縦走路になっていることもあり、冬季でも多くの方が登られます。今回はこの夜叉神峠の春夏秋冬をみなさんに紹介しようと思います。

【冬:1月から3月】

夜叉神峠から残雪が残る白峰三山を望む

△夜叉神峠から残雪が残る白峰三山を望む

車道や登山口には雪はありませんが、白峰三山にはたくさんの雪が残っています。場合によっては、3月あたりでも夜叉神峠に雪が残っているときがあります。標高が低いところでは春が訪れている場所もある時期ですが、標高が高い山ではまだまだ冬山のように感じられます。雪で白くなった白峰三山はとても雄大でいつ見ても圧倒されます。この時期は登山道が凍っていることもありますので、雪道歩きが不慣れな方はアイゼンなどを携帯してくださいね。

【春 4月から6月】

新緑が鮮やかな夜叉神峠

△新緑が鮮やかな夜叉神峠

春に比べ、木々が葉を付け始め、新緑が鮮やかになります。写真は晴れていませんが、スッキリと晴れているときは、新緑の鮮やかさが増します。降雪量が多い年では4月、5月でも雪を被っている白峰三山を見ることができます。登山道沿いでは、ミツバツツジやシロバナノヘビイチゴやキバナノコマノツメなどの高山植物が咲き始めます。

【夏 7月から9月】

夏の陽気が感じられる夜叉神峠

△夏の陽気が感じられる夜叉神峠

山へ若干、ガスがかかってしまっていますが、後ろにうっすら見えるのが北岳と間ノ岳です。春よりも全体的に緑が多く、夜叉神峠でも様々な種類の高山植物を多く見ることができます。また、夏期シーズンは夜叉神峠小屋の営業も始まり、小屋に泊まることもできます。(営業については要確認)小屋付近には幕営地もあるので、テント装備を背負って夏の星空を眺めるのもいいですね!

【秋 10月から12月】

葉が色付き秋らしさを感じられる夜叉神峠

△葉が色付き秋らしさを感じられる夜叉神峠

夜叉神峠の紅葉のピークは時期によって多少の変動はありますが、例年は10月初旬くらいです。この写真は10月末に撮影したので、ほぼ紅葉は終わり気味でしたが、夜叉神峠までの登山道は綺麗に色付いていました。写真の白峰三山は秋の山という感じがしますが、この時期くらいから高山では雪が降り始めるので、運が良いと白くなった白峰三山と紅葉の夜叉神峠を見ることができるかもしれません。

同じ山でも登る時期によって見ることができる景色が変わります。1年の中であなたのお気に入りの景色を探してみてはいかがでしょうか?

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2019年01月15日南アルプスとユネスコエコパーク

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは「ユネスコエコパーク」をご存じでしょうか。「ユネスコ」と言えば、ナマハゲなどの「来訪神」がユネスコ無形文化遺産に登録され話題になりましたね。ユネスコエコパークとは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的として、1976年にユネスコが開始したものです。地域の豊かな生態系や生物多様性を保全し、自然に学ぶとともに文化的にも経済、社会的にも持続可能な発展を目指す取り組みです。日本国内には現在、志賀高原や白山など9カ所が登録されています。「南アルプスユネスコエコパーク」は、2014年9月に登録決定されました。

南アルプスユネスコエコパークは山梨県、静岡県、長野県の3県にまたがっており、韮崎市、南アルプス市、北杜市、早川町、飯田市、伊那市、大鹿村、富士見町、静岡市、川根本町の10市町村によって構成されています。

ユネスコエコパークは役割の異なった3つの地域に構成されています。

【移行地域】

棚田(飯田市)

△棚田(飯田市)

 

人が暮らしを営んでいる地域を指し、さまざまな社会活動や持続可能な地域社会の発展を目指す地域です。面積としては最も大きい部分です。写真の他に、大鹿村の大鹿農村歌舞伎や川根本町のカヤックツーリングが挙げられます。

【緩衝地域】

尾白川渓谷(北杜市)  椹池(甘利山・韮崎市)

△尾白川渓谷(北杜市)             △椹池(甘利山・韮崎市)

環境教育、野外活動、調査研究活動や観光、レジャーに利用できる地域です。緩衝地域の中には南アルプス国立公園に指定されているエリアがあります。写真の他に、韮崎市甘利山に咲くレンゲツツジや南アルプス市が行っているユネスコスクールが挙げられます。

【核心地域】

北岳にしか咲かないキタダケソウ  仙丈ヶ岳

△北岳にしか咲かないキタダケソウ        △仙丈ヶ岳

このエリアは主に南アルプス国立公園や大井川源流部原生自然環境保全地域等になります。写真の他に、氷河期の遺存種であるライチョウ、山稜部は氷河地形(カール地形)が多く残されています。

自然環境の他に文化面では、南アルプスの急峻な地形が交流の障壁となり、富士川水系、大井川水系などの流域ごとに伝統的な食文化、民俗芸能など個性的な文化圏が発展し、現在にも受け継がれています。

ユネスコエコパークに登録されてから今年で5周年を迎えます。南アルプスの山岳環境を後世へ残していくためにも、保全していく体制作りや豊かな自然環境を守り伝えていくことが大切ですね。

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2019年01月08日地蔵ヶ岳で初日の出

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、あけましておめでとうございます。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。今年もよろしくお願いいたします。

年末年始に1泊2日の行程で鳳凰三山へ行ってきました。鳳凰三山は地蔵ヶ岳(2,764m)、観音岳(2,841m)、薬師岳(2,780m)の総称です。1日目は韮崎市にある御座石温泉登山口から鳳凰小屋まで。2日目は稜線へ上がり、南アルプス市にある夜叉神峠登山口まで下りてきました。樹林帯では気温が低く、稜線では風が強かったものの、2日間とも快晴でした。今回は稜線で見ることができた絶景をみなさんにお伝えしたいと思います。

日の出前に小屋を出発。地蔵ヶ岳で初日の出を見るためです。辺りは真っ暗でしたが、ヘッドライトで照らしながら歩きます。樹林帯を抜けると、ザレ場になります。夏は砂浜のようですが、冬は雪が積もるため、多少歩きやすくなります。登り切り、オベリスクの直下で日の出を待ちます。

2019年初日の出

2019年初日の出

上がってきました!初日の出!日の出が上がるまで10分ほど待ちましたが、その10分が非常に長く感じられました...。ですが、素晴らしい景色を見ることができたので、頑張って登って、待って良かったと心から思いました。今年も安全に楽しく過ごせますようにと手を合わせ、地蔵ヶ岳を後にしました。

地蔵ヶ岳から10分ほど登ると赤抜沢ノ頭に着きます。赤抜沢ノ頭からは仙丈ヶ岳や八ヶ岳、白峰三山などの山々を一望することができます。

雪が付いて白く染まった北岳

△雪が付いて白く染まった北岳

北岳山頂は朝日に照らされて赤く染まっていました。左俣ルート(一直線に真っ白なルート)は真っ白ですね。左に見えるのは間ノ岳です。北岳同様、間ノ岳も白くなっていますね。

地蔵ヶ岳から薬師岳までのルートは樹林帯に入ることなく、ずっと稜線になるため風がダイレクトに当たります。冬山装備を万全にして入山しましたが、やはり寒いです。赤抜沢ノ頭から観音岳を経て、2時間ほど歩くと薬師岳に着きます。薬師岳からは日本高標高第2位の北岳、第3位の間ノ岳、農鳥岳を見ることができます。反対側を向くと、日本高標高第1位の富士山も見ることができます。

白峰三山

△白峰三山

10月に巡視で鳳凰三山へ行きましたが、約2ヶ月の間であっという間に冬の姿に変わりました。(参考:201811月7日更新「鳳凰三山巡視(後編)」)白く染まった白峰三山はとても雄大で、何度見ても圧倒されます。

年末年始は鳳凰三山ルート上にある山小屋がいくつか営業をしてくださるので、多くの方が登られていました。年末年始営業も終わると、再び、閉山したあとのような静かな南アルプスに戻ります。入山される計画を立てている方は事前の準備をしっかり行い、無理のない登山を行ってください。

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2018年12月25日南アルプスから見る富士山

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、メリークリスマス!

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは山と言えばどの山を思い浮かべますか?中部山岳や北海道各地などさまざまな意見が出てくるかと思います。山に登られる方、そうでない方も多くは『富士山』とお答えになるでしょう。そこで今回は南アルプス山域から見る富士山特集をみなさんにお伝えしたいと思います。

1.中岳から荒川小屋間

富士山と白峰南嶺間に広がる雲海

△富士山と白峰南嶺間に広がる雲海

こちらは南アルプス南部の荒川三山の1つ、中岳から荒川小屋の間で見た富士山です。水平に広がる雲海がとても綺麗ですね。富士山の前にある稜線は白峰南嶺です。広河内岳や黒河内岳(笹山)が含まれます。右から2番目にある2つのとんがりは笊ヶ岳と呼ばれる山で、南アルプス南部の360度大パノラマを楽しむことができます。

2.仙丈ヶ岳

仙丈ヶ岳から日本TOP3を眺める

△仙丈ヶ岳から日本TOP3を眺める

左から富士山、北岳、間ノ岳。そうです、仙丈ヶ岳からは日本のTOP3を眺めることができるのです。この構図を綺麗に見ることができるのは仙丈ヶ岳だけです!!!写真ですと、北岳のほうがなんだか大きく見えますが、富士山と北岳の標高差は583m。意外とあるんです。未だに南アルプスが隆起し続けていると言っても、追いつくことは随分先になりそうです。

3.鳳凰三山 観音岳

薬師岳と富士山

△薬師岳と富士山

こちらは鳳凰三山の1つ、観音岳から見た富士山です。残雪期に撮影したので、富士山の頭は白くなっています。稜線にも若干、雪が残っていますね。富士山の右下に見えるのが薬師岳です。他の鳳凰三山である地蔵ヶ岳や薬師岳からも富士山を眺めることができますが、私は観音岳から見る富士山が1番好きです。

4.北岳肩ノ小屋

日の出と富士山

△日の出と富士山

こちらは北岳肩ノ小屋から見た日の出と富士山です。早起きして下界から見る富士山と日の出もとても美しいですが、山から見るとさらに綺麗さを増す気がします。撮影時期が10月だったので、6時頃でも空はまだ暗いです。同じ場所からの景色でも季節や時間によって見え方が変わってきます。登る時期を変えて撮影するのもいいですね。

南アルプスからはほとんどの場所で山頂から富士山を見ることができます。場所によっては登山道や小屋から見ることもできます。自分だけのお気に入りの場所、時間、季節を探してみてはいかがでしょうか?

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2018年12月18日夜叉神峠巡視

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

13日に夜叉神峠の巡視へ行ってきました。

夜叉神峠は標高1,770m、夜叉神峠登山口から1時間ほど歩くと着きます。アクセスが良く、白峰三山の展望や季節の花を楽しむことができるトレッキングコースとして多くの方に親しまれています。

落ち葉で茶一色になった登山道で一際目立つ緑色。スギゴケでしょうか。

△登山道脇で見つけたスギゴケ

△登山道脇で見つけたスギゴケ

最近降った雨によって潤っていました。太陽の光を浴びて、さらに綺麗に見えます。ガスで真っ白になっていたり、樹林帯で展望がない場所では足元に目を向けてコケや植物を観察しながら歩くのもいいですね。コケに詳しくない私ですが、コケに興味が湧きました!

しばらく歩くと、『夜叉神峠まで15分』と書かれた看板が出てきます。この付近から登山道上に雪が出始めます。

登山道上に積もる雪

△登山道上に積もる雪

雨が降って固まったような雪質でしたが、つるつる凍っているところはほぼなく、むしろ歩きやすさを感じました。雪が降った登山道でわたしが楽しみにしていることは雪上についた動物の足跡を観察することです。夜叉神峠はさまざまな生きものが生息しているのでいろいろな種類の足跡を見ることができます。今回はニホンジカ、鳥類、タヌキの足跡が見られました。夏でも見つけることはできますが、冬のほうが断然分かりやすいです。山や森へ入られた際はぜひ、探してみてください。

15分ほど歩くと夜叉神峠山頂に着きます。この日は生憎の曇り空。

ガスガス三山

△ガスガス三山

ガスガスで何も見えませんでした。お昼ご飯を食べながらガスが取れるのを待つことに。日差しが差したり差さなかったり。着込んでいるものの、指先が徐々に冷え込んできました。ガスが取れそうにないので、帰り支度を始めると少しだけガスが取れ、中白根山が見えました!

中白根山がひょっこり

△中白根山がひょっこり

シャッターチャンスは逃してしまったもののほんの少しの間、北岳や間ノ岳も顔を出してくれました。昨年と同じくらいの日も夜叉神峠の巡視へ来ましたが、昨年よりもだいぶ雪が少ないように感じられます。(昨年の記事はこちら)今後、さらに冷え込む季節になりますので、これからの積雪に期待します。

夜叉神峠までの登山道では、まだ軽アイゼンが必要な場所は特にありませんが心配な方や雪道の歩行に不安がある方は携帯するようにしてください。

◆南アルプスの冬山登山を計画されている方へ

平成301020日から、山梨県内の山域で登山する際は、登山計画書の提出に努めなければなりません。また、平成3112月から3月の厳冬期は富士山、八ヶ岳、南アルプス(白峰三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、鋸岳、笹山、笊ヶ岳など)にて登山計画書の提出が義務化になる予定です。夜叉神峠登山口の東屋にも登山計画書を提出する場所があります。電子メールやFAX、オンライン登山計画書「コンパス」での提出も可能です。安全確保のためにも提出するようにしてくださいね。

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