南アルプス国立公園 南アルプス
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2019年05月14日やまぶき祭、大盛況でした
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
5月12日(日)に南アルプス市芦安で「新緑・やまぶき祭」が開催されました。とても天気が良く、たくさんの方がお越しくださいました!
△力強い演奏です!
お祭りのオープニングを飾るのは、夜叉神太鼓保存会のみなさんによる夜叉神太鼓の演奏です。夜叉神太鼓は1986(昭和61)年に山梨県で国民体育大会(別名:かいじ国体)が開催される際に、大会に参加する選手や役員のみなさんを太鼓で歓迎しようと、芦安村民から募集し、発足しました。南アルプス自然保護官事務所のテントから少し距離があったものの、迫力のある演奏でした!
会場では今、流行のタピオカジュースやゆるキャン△コラボ企画、山菜料理、芦安郷土料理「しょうゆの実」、手打ちそばなどが販売されました。手打ちそばは毎年大人気です!過去2回参加していますが、実は、まだ一度も食べることができていません。今年こそ!と思っていましたが、今年もかなり早い時間帯に完売してしまい、食べられませんでした...。来年こそは食べられるようにしたいです。他にも、クライミング体験やステージでのミニライブや芦安小中学生の合唱など、大人も子どももめいっぱい楽しめる内容でした!
△どんどん登っていく子どもたち △綺麗な歌声でした!
南アルプス自然保護官事務所では、昨年に引き続き、芦安産の木を使用した焼印コースターの無料配布と南アルプス国立公園についての展示・解説を行いました。今年も焼印コースターは大盛況で、時には列を作るほどの人気でした!! 木によって断面に特徴があり、みなさん、自分好みの木を一生懸命選んでいました。
中でも人気だったのが、断図がきれいな樹木です。左からフサザクラ、リョウブ、ウリハダカエデです。手にとって「きれいな面をしているね」や「年輪を楽しみたいから焼印しなくてもいい?」とおっしゃる方も多くいらっしゃいました。カエデやサクラは身近な樹木ですが、このような形で見ることは滅多にないと思います。コースターを通して、身近な樹木、自然にも関心を持っていただけたようでよかったです。
今年もとても楽しいお祭りでした!足を運んでくださったみなさま、ありがとうございました!!
2019年05月07日5月12日、新緑・やまぶき祭が開催されます!
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
5月12日(日)に南アルプス市芦安で「新緑・やまぶき祭」が開催されます。
★ 「第9回 芦安新緑・やまぶき祭」
主催:南アルプス市芦安新緑やまぶき祭実行委員会
日時:2019年5月12日(日)午前9時30分から午後1時30分まで
会場:南アルプス市立芦安小学校校庭 ※雨天:芦安小学校体育館
◎お問い合わせ 芦安窓口サービスセンター(TEL:055-282-5577)
入場料無料
会場では、夜叉神太鼓の演奏や芦安郷土料理のしょうゆの実や手打ちそばの販売のほか、お子さんが楽しめるクライミング体験ブース、やまぶきツアーとして瀬戸千段の滝トレッキングなどがあります。お祭りの終盤には、大抽選会も行われます!南アルプス自然保護官事務所では、焼印コースターの無料配布と南アルプス国立公園の自然についての展示を行います。
先日、コースターとして使う芦安産の木のスライスを行いました。
△スライスされた木たち
左から真ん中が黒っぽいカキノキ、真ん中ウリハダカエデ、右はリョウブです。他にもシラカバやハンノキなどもあります。マークは「キタダケソウ」、「ライチョウ」、「ヤマトイワナ」、「南アルプス国立公園シンボルマーク」の4種類です。お好きなコースターにお好きな印を選んでいただきます。毎年、多くの方がブースにお越しくださいます。お気に入りの木、印を選んで、自分だけのオリジナルコースターを作ってみてはいかがでしょうか?他にもブース内では南アルプス国立公園限定グッズの配布もしていますよ♪
事務所がある芦安では新緑が色鮮やかになりました。事務所の前を流れる御勅使(みだい)川にはこいのぼりがかけられ、元気よく泳いでいます!
△色とりどりのこいのぼり
みなさんのお越しをお待ちしています!!
2019年04月23日夜叉神峠巡視
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
標高が高い芦安では、まだサクラが咲いています。菜の花やミツバツツジも咲き始め、春らしさが感じられます。落葉していた木々も少しずつ葉をつけ、山が色鮮やかになりつつあります。
△芦安に咲くサクラ
春の陽気に誘われて、19日に夜叉神峠へ巡視に行ってきました。登山口ではすっきりとした青空でしたが、標高を上げていくにつれて徐々に雲が湧いてきてしまい、雲で隠れて真っ白かな?と思いましたが、思ったよりもきれいに白峰三山を見ることができました!
△白さを増した白峰三山
4月上旬に降った雪によって、一気に白さが増しました。ゴールデンウィーク中でも白い白峰三山を楽しむことができそうです!
登山道を歩いていると鳥の鳴き声がひっきりなしに聞こえました。もうじき、婚活が始まる個体もいるので、オスがアピールしていたのでしょうか?撮影することができた野鳥を紹介します。
△ゴジュウカラ
ゴジュウカラは木の幹に対して、縦に止まり、幹や太い枝を動き回って餌を探します。頭を下にして下りてくるとこもできます。写真を撮影している際も、幹の周りを下からくるくる回りながら上へ向かっている最中でした。登るスピードがとても速くて驚きました。繁殖期は3月から6月で、他の鳥の古巣を使って巣を作ります。これからはもっと盛んに飛び回ることでしょう。
△ヒガラ
細い枝や葉先で活発に行動します。細い枝の先にいたので動くたびに枝がぐらぐら揺れていて、見ているこっちがひやひやするほどでした。バランスを崩してしまったでしょうか?慌てている姿が可愛らしかったです。ヒガラはスズメよりも一回り小さく、シジュウカラ科の中では1番小さいです。黒い蝶ネクタイと帽子を被っているような姿が特徴です。
これからの時期は繁殖期を迎える個体が多いため、野鳥の姿を頻繁に見かけることができます。風が吹くと肌寒く感じることもあるので、暖かい格好をして登るようにしてください。いよいよ今週末からゴールデンウィークが始まりますね!南アルプスの高山帯はまだまだ冬山です。登山される方は自分の技量や体力に見合った山に登るようにしてくださいね。
■ 夜叉神峠から鳳凰三山の登山計画を立てている方へ
夜叉神登山口から夜叉神峠までの登山道間にはほぼ雪はなく、アイゼンを持っていなくても登ることができます。ですが、夜叉神峠から鳳凰三山へ向かう登山道は積雪及び凍結している箇所があります。また、積雪量もかなり多いです。アイゼン等の冬山装備を忘れずに準備してください。
2019年04月16日南アルプスに咲く花(稜線編)
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
関東平野部でも雪の予報があった先週10日、芦安では朝から雪が降り続きました。4月だというのに、冬らしさを感じました。
△辺り一面が真っ白になった芦安
この日は山の神ゲートから上の道路は積雪のため、通行止めになりました。現在は通行止めも解除され、芦安は雪の白さのかけらもないですが、夜叉神峠までの登山道および鳳凰三山へ向かう登山道には雪がありますので、アイゼン等の冬装備を持って行くようにしてくださいね。
さて、前回の「南アルプスに咲く花(亜高山帯編)」、前々回の「南アルプスの咲く花(低山帯編)」に引き続き、今回が最後です。稜線(2,700mから3,100m)で見ることができる高山植物をご紹介します。
【タカネビランジ】
南アルプス固有種の1つです。主に北岳、鳳凰三山、荒川岳などの広い範囲で咲いています。北岳や荒川岳で見られるタカネビランジは左の写真のような淡いピンクまたは白っぽい色のものが多いです。対して、鳳凰三山や北岳の一部では右の写真のような淡いピンクが多く咲きます。地域によって色の濃淡が違うので、南アルプス各地で探してみるのもいいですね。
【イブキジャコウソウ】
伊吹山で発見されたことからイブキジャコウソウという名がつきました。岩の周囲に密集しており、小さい花をたくさん付けます。冬は葉をつけた状態で雪の中で越冬します。花は濃いピンク色をしていますが、実になると鮮やかな赤色になります。また、植物全体からはハッカの香りがするそうです。
【キンロバイ】
キンロバイはバラ科の低木です。イメージとしてはノバラを黄色くしたもので、花そのものは2センチほどで小さく可愛らしい花です。漢字で表記すると「金露梅」と書きます。字の通り、梅の花に似ていますよね。キンロバイは黄色ですが、色違いで白い花もあり、ギンロバイやハクロバイと呼ばれています。盗掘により個体数を減らしており、現在では環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
【シコタンソウ】
名前の由来は千島列島の色丹島で発見されたからですが、中部以北から北海道の高山帯に生育しています。大株を作り、稜線のあちこちで見かけます。白く似たような花がいくつかありますが、シコタンソウの特徴は間近で花をよく見てみると茶色と赤色の小さな斑点が付いていること、花弁は5枚になっていることです。
今回は稜線(2,700mから3,100m)で見られる花をお送りしました。このあたりは相応の体力が必要となってきます。3,000mの稜線を縦走しながら、高山植物の観察をじっくりするのもいいですね。
3回に渡りお届けした南アルプスに咲く高山植物はいかがでしたでしょうか?私自身、まだ見つけることができていない花がたくさんあります。種類が多すぎて、覚えきれていない花もあります。今年の夏はたくさん南アルプスの山々に行き、いろんな花を見つけて、何種類も覚えて、勉強していこうと思います。
2019年04月09日南アルプスに咲く花(亜高山帯編)
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
さて、前回の「南アルプスに咲く花(低山編)」に引き続き、今回は亜高山帯(2,400mから2,700m)にスポットライトを当てていこうと思います。
【ミヤマクロユリ】
登山をされない方でも名前を耳にしたことがあるという方もいらっしゃるかと思います。独特な色と黄色い斑点模様が特徴的です。「クロユリ」という種類もありますが、クロユリは低地草原に生育し、花を3個以上付けます。対して、ミヤマクロユリは亜高山帯や高山帯に生育し1個から2個ほどつけます。花の個数、生育している場所で見分けることができます。花言葉は「恋」と可愛らしいですが、香りは臭いようです。
【ミネザクラ】
山梨の市街地では葉桜になってきていますが、事務所がある芦安は標高が高いため桜が見ごろを迎えています。街でよく見られるソメイヨシノやエドヒガン等の花期は3月から5月くらいまでですが、標高が高い場所に咲くミネザクラの花期は6月です。街の桜が散った後でも、桜を楽しむことができます。街でお花見するタイミングを逃してしまった方は、山に登ってミネザクラでお花見をしてみてはいかがでしょうか?
【シナノキンバイ】
このお花、見たことある!という方も多いのではないでしょうか。シナノキンバイは北海道、中部地方以北と広い範囲で見ることができる大変ポピュラーな花です。花がとても大きいため、1個でもかなり目立ちます。単体で咲いているというより、大群落で咲いているというイメージが強いです。
【ハクサンイチゲ】
ハクサンイチゲは、本州の中部地方以北の範囲で見ることができます。亜高山帯にも高山帯にも咲き、生育地の範囲もかなり広いです。キタダケソウの生育地にも咲いており、形が似ているため見分けるのが難しい、と耳にします。見分けるポイントは葉の形です。ハクサンイチゲは先端が尖って大きく裂けていますが、キタダケソウは先端が丸み帯びていてさほど裂けていません。間違えないようにじっくり観察してくださいね。
上の写真は荒川岳のお花畑です。黄色の点はシナノキンバイ、白の点はハクサンイチゲです。画像をクリックして大きくすると1つ1つの花がよく見えます。手前に見えるのも奥に見えるのも全て高山植物です。このお花畑を横切るように登山道があるので、間近で大大大群落楽しむことができます!このお花畑に来るまでにはかなりの時間を要しますが、この素晴らしいお花畑を見たら疲れも吹き飛びますね!
今回は亜高山帯(2,400mから2,700m)編をお送りしました。主に北岳では白根御池小屋から小太郎尾根分岐、二俣から八本歯のコル、荒川岳では駒鳥池付近から千枚小屋付近、荒川小屋付近から前岳南東斜面付近のお花畑、茶臼岳では易老岳から茶臼岳などが今回の亜高山帯の標高にあたります。このあたりは登山装備と体力が必要となってきます。時間に余裕を持って、小屋泊等を利用して高山植物を観賞するものいいですね。
次回は稜線(2,700mから3,100m)編をお送りします。お楽しみに♪
2019年04月02日南アルプスに咲く花(低山編)
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。今年度もよろしくお願いいたします。
連日、サクラの開花が報道されていますね。場所によっては散り始めているという地域もあるかと思います。街では春が訪れていますが、南アルプスの標高の高い山々は依然として白く、冬らしさが抜けていません。
冬らしさが抜けていない南アルプスではありますが、雪の下では新しい命が生まれていることでしょう。南アルプスではどのような花が見られるのでしょうか。低山帯(1,500mから2,400m)、亜高山帯(2,400mから2,700m)、稜線(2,700mから3,100m)の3つに分けて、南アルプスの山々で見られる高山植物を紹介したいと思います。今回は低山帯(1,500mから2,400m)編です。
【イワオトギリ】
オトギリソウの名前の由来は、昔、この植物が薬草であることを秘密にしていた兄が、秘密を漏らした弟を斬り殺したことから「オトギリソウ」という名前が付けられたそうです。花のところどころにある赤い部分は切りつけたときに飛び散った血といわれており、花言葉の 「秘密」や「恨み」もこの話が元となっているようです。エピソードがかなり濃いですが、赤い斑点がアクセントになっていて綺麗な花です。
【ホタルブクロ】
下向きに大きな釣り鐘状の花を咲かせます。上向きになることはありません。写真のホタルブクロはやや紫色がっていますが、ピンクなどの淡い色もあります。ホタルブクロが咲く時期はホタルの舞う時期と重なり、子どもたちがホタルを捕まえてこの花の中に入れて遊んでいたことからホタルブクロと名付けられたという説があります。名前の由来とリンクさせると覚えやすいですね。北岳では大樺沢沿いで多く見られます。
【レイジンソウ】
白と薄い紫色をしたスリムな形が特徴的です。花の形が舞楽の「伶人」がかぶる冠に似ていることからこの名が付けられたそうです。レイジンソウはトリカブトの仲間です。花期は7月中旬から9月頃までなので、芦安・奈良田から広河原までのバスが開通してからでも見つけることができます。
【ギンリョウソウ】
右側の白い物体がギンリョウソウです。ギンリョウソウは葉緑素がない腐生植物のため、白色をしています。昆虫や小動物の死骸の上に咲くことが多く、別名「ユウレイソウ」とも呼ばれています。開花後、熟してくると白い花の中が黒っぽくなり、目玉があるように見えます。白い花の部分はとても柔らかく、踏みつけてしまうとつぶれてしまうので、歩行の際は足やストックでつぶさないように気をつけてくださいね。
今回は低山帯(1,500mから2,400m)編をお送りしました。主に、北岳では広河原から二俣・白根御池小屋付近、鳳凰三山では夜叉神峠登山口から夜叉神峠、御座石温泉登山口から燕頭山、塩見岳では鳥倉林道ゲートから三伏峠付近までが今回の低山帯の標高にあたります。南アルプスの山々には至る所に花があるので高標高域に行かずとも、花を楽しむことができます。
南アルプスの開山まで3ヶ月を切りました!今年はどんなお花に出会えるのか、楽しみです。
2019年03月26日南アルプスの四季(秋・冬)
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
先日の「南アルプスの四季 (春・夏)」に続きまして、今回は「南アルプスの四季 (秋・冬)」をお届けします。
【秋 9月から11月】
△仙丈ヶ岳 藪沢ルートの紅葉
高標高域では街よりも1ヶ月ほど早く色づき始めます。南アルプス各地で見られる紅葉はとても綺麗です。赤が多い場所、黄色が多い場所とさまざまです。高標高域では、この時期から日中でも時折寒さが感じられます。暖かい格好をして高山での紅葉狩りを楽しみましょう♪
△冠雪した北岳と紅葉の広河原
標高3,193mの北岳は早ければ10月中旬に雪が降ります。10月中旬は、広河原周辺の紅葉真っ盛りの時でもありますので、写真のような冠雪した北岳と紅葉の広河原を見ることができます。この時期は登山者だけでなく、紅葉を目的として来られる方も多くいらっしゃいます。寒いですが、気温が下がり空気が澄んでいるため、白くなった北岳の綺麗な景色を見ることができますよ!
△荒川岳カールの紅葉
9月下旬に荒川岳に設置している防鹿柵撤去作業をします。撤去作業中にふと顔を上げてみると、そこには美しい紅葉が!思わずパシャリ!夏は高山植物がたくさんのカールですが、秋には紅葉が綺麗なカールに大変身です!
【冬 12月から2月】
△閑散とした登山道
冬の夜叉神峠までの登山道は緑がほぼなくなり、静けさを感じます。そのおかげもあり、日が差し、遠くの山や甲府の街、櫛形山方面からは富士山もひょっこり見えます。登山道上の雪にはニホンジカやキツネなどの動物たちの足跡が残っていることがあります。足跡探しをしながら登るのも、楽しみ方の1つですね♪
△白銀の白峰三山
写真は薬師岳から見た白峰三山です。雄大な山並みに雪がつき、いつにも増して大きく感じられますね。薬師岳までとなると、どの登山口からも歩行時間がかなり長くなってしまいます。しかし、見える角度が少し変わってしまいますが、約1時間歩けば夜叉神峠からも白く輝く白峰三山を楽しむことができます。
△冬のオベリスク
朝日に照らされほんのり赤く染まっているオベリスクです。この写真は赤抜沢の頭から撮影しました。赤抜沢の頭からですと、オベリスクの全体を見ることができます。春の暖かさが感じられたオベリスクとはまた印象が違うように見えませんか?
他にも南アルプスの四季の魅力はたくさんあります!また、山に登らずとも山麓からも南アルプスの四季を眺めることができます。自分にあったスタイルで自然や山の魅力、そして、南アルプスの魅力を感じてみてはいかがでしょうか?
2019年03月12日野呂川広河原インフォメーションセンターってどんなところ?
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
日記に何度も登場している¨広河原¨という地名。南アルプス北部の玄関口にもなっており、登山シーズンには多くの登山者で賑わいます。広河原には「野呂川広河原インフォメーションセンター」という環境省直轄施設があります。1度も足を運んだことがない方のために、「野呂川広河原インフォメーションセンター」をご紹介したいと思います。
この建物の住所は『〒400-0241 山梨県南アルプス市芦安芦倉野呂川入1685番地』です。この住所をナビに入力すればいつでも行けるんだね。と思われた方!残念ながら自家用車でいつでも行ける場所ではありません。
6月下旬から11月上旬までの限られた期間のみ夜叉神峠登山口、奈良田、戸台口から広河原までのバスやジャンボタクシーの通行が可能です。終日マイカー規制の区間に指定されており、一般車両の通行ができません。野呂川広河原インフォメーションセンターにお越しになるには、限られた期間内に交通機関を利用しなければなりません。
野呂川広河原インフォメーションセンターは1階にトイレやロッカーコーナー、バスチケット売り場があり、2階には登山届けポスト、売店、山や自然についての文庫、南アルプスについての展示があります。
△野呂川広河原インフォメーションセンターでの展示
ライチョウ保護やニホンジカ対策の取り組み、クマに出会ったときの対策、アクティブ・レンジャーが見た南アルプスの景色の展示を行っています。バスの待ち時間や2階に立ち寄った際は、ぜひご覧ください。
広河原からは日本で2番目に高い北岳を近くで見ることができます!野呂川広河原インフォメーションセンターから北岳登山口の吊り橋に向かう途中で見ることができるので、登山をされない方でも北岳を見ることができます。新緑の時期と紅葉の時期では見え方ががらりと変わります。
△左:5月の北岳 右:10月の北岳
年によって雪の付き方や紅葉の色づき方は異なるので、何度来ても楽しむことができます。
野呂川広河原インフォメーションセンターの川の向こうには広河原園地と呼ばれる場所があります。木道もあるので、歩きやすいです。園地にある大きなカツラの木はやまなしの森林100選に「広河原のカツラ」として選出されています。花のシーズンには標高1,500m付近で咲く花を楽しむこともできます。
△左:シモツケソウ 右:ニリンソウ
他にも黄色や紫色の花が咲きます。広河原散策をしながら探してみてはいかがでしょうか。
夜叉神峠登山口、奈良田、戸台口のどの場所からでも広河原までは最低1時間ほど。時間はかかってしまいますが、都会で感じることのできない豊かな自然を楽しむことができます。来シーズン、ぜひ野呂川広河原インフォメーションセンターへお越しください!
2019年03月05日南アルプスに残る氷河期の遺存種
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
みなさんは南アルプスと氷河期に深い関わりがあることをご存じでしょうか?およそ200万年前から1万年前の間に、地球上で寒い時代があったと考えられています。これを「氷河期」と呼んでいます。最終氷河期は今の日本の年平均気温が7℃から9℃低く、南アルプス周辺は大陸と陸続きでした。この時代に寒冷な気候に生育していた植物が南下しました。気温が上がり、間氷期になるとこれらの植物は寒冷な気候を求めて、高緯度の北極近くに戻り、一部は標高の高いところに生育地を移しました。このような経緯をたどり、現在も生育している高山植物のことを『氷河期の遺存種』と呼ばれています。
参考:「南アルプス概論 山梨県版 -南アルプスの自然と人々の関わり-」南アルプス世界自然遺産登録山梨県連絡協議会
今回は『氷河期の遺存種』にスポットライトを当てていこうと思います。
【キタダケソウ】
南アルプスを代表する『氷河時代の遺存種』であるキタダケソウ。6月中旬から7月上旬に白い花を咲かせます。北岳のみ生育している固有種です。世界中のどこを探してもここ北岳にしか咲いていません。1931年清水・諏訪氏が北岳で最初の発見をし、1934年に中井・原が清水・諏訪氏が採取した標本をもとに学名を付けたそうです。
【タカネマンテマ】
一度見たら忘れないこのフォルム。国内では南アルプスのみ生育しています。スイカのようなしましま部分は萼筒(がくとう)で、この萼筒の先端からピンク色の花弁がわずかに出ます。花をつけている時は萼筒が下を向いていますが、種子になり始めるとだんだん上を向いてきます。
【チョウノスケソウ】
7月から8月に白い花を付ける落葉小低木です。「チョウノスケソウ」という名前はロシアの植物学者マキシモビッチの助手である「須川長之助」が発見したことがきっかけで名付けられました。似ている花がいくつかありますが、チョウノスケソウはしわが多く楕円形の葉を付けています。
南アルプスの高山は冬の低温と季節風にさらされる大変厳しい環境です。近年問題となっている温暖化が『氷河期の遺存種』へどのような影響を与えてしまうのか、とても心配です。また、盗掘や踏み込みなどの人的要因も問題視されています。今回紹介した植物の採取は禁止されています。採ったり、傷つけることのないよう、観察するようにしてくださいね。
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
4月下旬に鳳凰三山へ行ってきました。鳳凰三山は地蔵ヶ岳(2,764m)、観音岳(2,841m)、薬師岳(2,780m)の総称です。1泊2日で御座石温泉登山口のピストンコースです。4月上旬降雪があり、この時期にしてはかなり雪の多い山行となりました。日中も気温が低く、下山時には雪が舞い始めるほどでしたが、稜線ではとても素敵な景色を見ることができました。山行のようすを紹介したいと思います。
御座石温泉登山口から本日のお宿、鳳凰小屋まではおよそ6時間。道中は急登やアップダウンが多くあります。小屋までは樹林帯が続きます。道中では北アルプスやお隣の甲斐駒ヶ岳がお出迎えしてくれます。
無積雪期の地蔵ヶ岳の直下は砂地になっており、アリ地獄のようになります。積雪のおかげで少しは歩きやすいですが、傾斜が強すぎてオベリスクの頭も見えません...。
△ストックがあると登りやすいです
午後に登ったので、雪質はかなりぐずぐずになっていましたが、何度か立ち止まりながらも無事、地蔵ヶ岳山頂に着きました!!この日は「環水平アーク」という珍しい気象現象が見ることができました。(残念ながら写真はありません。)稜線からは南アルプス北部・南部や八ヶ岳、富士山はもちろんのこと、北アルプスや谷川岳などの山域も見ることができました!
別角度からになっていますが、昨年度と同じ時期の比較です。どれだけ雪が多いか、一目瞭然ですね。今年は山梨百名山の記載がある標柱が途中まで埋まっていました。雪があるとないとでは雰囲気が違いますね!
△「子授け地蔵」と南アルプスの名峰たち
地蔵ヶ岳山頂直下にある「子授け地蔵」のみなさんです。足元が少し埋もれているお地蔵さんもあり、少し寒そうでした。後ろに見えるのは左が北岳、右が甲斐駒ヶ岳です。どちら雪で白いですね。北岳の真っ白な部分は大樺沢の左俣ルート方面です。毎年開山してからもしばらく雪が残る場所です。これだけ雪が多いので、今年は夏場でも雪を見ることができるかもしれませんね!
雪がまだまだ残っている南アルプスの山々ですが、積雪のない登山道では春らしさを感じました。
△咲き始めのニリンソウ
ニリンソウです。5月上旬に咲く綺麗なお花です。ミツバツツジやダンコウバイが咲いていました。夏季には御座石温泉ルートにもたくさんの花が咲きます。急登続きのルートではありますが、お花を見ながらゆっくり登るのもいいですね。
■ 鳳凰三山の登山計画をされている方へ
4月下旬のようすのため、現在では若干雪解けが進んでいると思われます。御座石温泉登山口、夜叉神峠登山口のいずれにしても、長く樹林帯が続き、樹林帯では凍結している場所があります。軽アイゼンもしくはチェーンスパイクを携帯し、下山時は十分に気をつけてください。鳳凰山系の山小屋は6月下旬までの間は変則営業となっています。小屋に宿泊しての登山をお考えの方は、必ず各山小屋へ確認するようにしてください。街では夏日になったり、時折暑さも感じられますが、南アルプスではまだ積雪もあり、寒いです。標高が高い場所に適した準備をしっかりして登山してください。