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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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富士箱根伊豆国立公園

353件の記事があります。

2019年09月27日八丈富士ハイキングコース 八丈島(伊豆諸島地域)

富士箱根伊豆国立公園 竹下実生

こんにちは。伊豆諸島管理官事務所の竹下です。

今回は、八丈島の八丈富士について紹介します。

底土港沖から眺めた八丈富士 八丈富士登山口

▲左:底土港沖から眺めた八丈富士 右:八丈富士登山口

八丈富士は八丈島の北側にそびえる山で、標高は854.3m、伊豆諸島の最高峰です。富士山と同じ成層火山で、円錐形の美しい形をしています。

八丈富士の山頂部分には直径約500mの火口があり、火口内は特別保護地区に指定されています。火口の内側には低木林が広がり、湿原や数個の池が点在する独特の景観の中に、浅間神社が建っています。火口の縁には、お鉢巡りの道が一周しており、360度の眺望の中、歩くことができます。

登山口には、八丈島中心部から車で約10分、徒歩約2時間40分でアクセスできます。登山口から山頂のお鉢までは1時間弱、ひたすら階段を登ります。

ハチジョウオトギリの黄色い花 動物進入防止柵

▲左:ハチジョウオトギリ 右:動物進入防止柵

道の脇にはハチジョウオトギリなど、初秋の花が咲いていました。

山頂に近くの道上には、動物進入防止柵が設置されていました。山頂部は貴重な植物の生育地であるため、ノヤギなど、食害の可能性のある動物の侵入を防止しているのです。通行した後は、必ず扉を閉めるようにします。

霧に覆われたお鉢巡りの道。道沿いにはハチジョウギボウシが一面に開花している。

▲お鉢巡りの道。左側が火口。

階段を上りきると、八丈富士の火口の縁、お鉢巡りの道の上へ出ます。

残念ながら、山頂部は霧に覆われ、360度の眺望は楽しめませんでしたが、道沿いや斜面ではハチジョウギボウシが一面に開花しており、綺麗でした。

・・・せっかくなので、晴れた時の景色も紹介します!

晴れた日のお鉢巡りの道からの眺望

▲晴れた時の景色

・・・とっても気持ちよさそうです。今度は晴れているときにリベンジしたいと思います。

火口の縁の一番高いところ(山頂)まで歩くと20分、お鉢を一周すると60分ほどかかるようです。当日は強風と濃霧のため、お鉢巡りは断念して、火口内の浅間神社へ向かいました。

浅間神社へ続く道。鬱蒼とした低木林に囲まれている。 道沿いには湿原や池が点在する
▲浅間神社へ続く道。道沿いには湿原や池が点在する。

火口の縁(お鉢巡りの道)から、草木に覆われた足場の悪い坂道を火口の中へ下っていきます。火口内にはヒメユズリハ、ヤマグルマなどの低木林が広がり、林床はシダやコケに覆われていました。鬱蒼としていて、別の世界へもぐり込んだようでした。

草木に埋もれるようにして建つ浅間神社の鳥居

▲浅間神社

10分ほど歩くと、草木に埋もれるようにして建つ浅間神社の鳥居が現れます。

八丈島では、昔、子どもが元服すると、神社に玉石をお供えする習わしがあったそうです。現在は、島の幼稚園生が運び上げてきたという沢山の玉石が供えられています。

八丈島に住む人たちにとって大切な場であることが感じられました。

ガクアジサイの両生花 コケに覆われた林床で活動するカタツムリ

▲左:ガクアジサイ。小さな両生花が沢山集まって咲いていた。右:カタツムリ。火口内は湿度が高く、快適そうに活動していた。

浅間神社に参拝した後は、道迷いに気をつけながら、元来た道を引き返します。神社から登山口まで、帰りは1時間弱で到着することができました。

海も山も楽しむことができる八丈島へ、皆さんもぜひ一度、訪れてみてください。

八丈島観光協会作成 八丈富士ハイキングマップ

▲八丈島観光協会 八丈富士山頂ハイキングmapより抜粋

※お鉢巡りの道は細く、左右が切り立っています。穴や亀裂、ゴツゴツした溶岩で足場の悪い箇所も複数あり、強風や濃霧の際は十分に気をつける必要があります。

【八丈島の観光情報】

八丈島観光協会 http://www.hachijo.gr.jp/

【伊豆諸島の台風被害について】

台風15号による被害は復旧しつつありますが、観光で伊豆諸島を訪問される予定の方は、念のため宿泊先や訪問予定の施設が復旧しているかどうかご確認ください。支援・被害・復旧などに関する情報は、各島の役場や観光協会のホームページで見ることができます。

大島町  https://town.oshima.tokyo.jp/

利島村  http://www.toshimamura.org/tourism

神津島村 https://vill.kouzushima.tokyo.jp/

新島村  https://www.niijima.com/

式根島観光協会 https://shikinejima.tokyo/

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2019年09月27日「天城山自然観察会」を開催しました!

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさま、こんにちは。食欲の秋を免罪符に、体重計を押し入れへ放り込んだ齋田です。

朝夕日毎に涼しくなり、秋刀魚やさつまいも、きのこにかぼちゃが美味しい季節が近づいてきましたね!

今年も秋の味覚を余すことなく堪能して寒い冬に備えようと思います。

さて、以前の日記でも告知させて頂いた、令和元年度山の日環境教育プログラム「天城山自然観察会」を9月15日(日)に皮子平にて開催しました。

当日は天城自然ガイドクラブさんによる楽しい解説により、総勢40名の参加者が大いに盛り上がりました!

今回の日記では、簡単ではありますが観察会の様子をご紹介します。

皮子平は入口へのアクセスが悪く、天城の秘境とも言われる場所で、原生的な自然が濃縮されたとっておきの場所です。

今回の観察会では、一般車両は通行することの出来ない筏場林道をマイクロバスにて移動し、上井屋歩道入口から歩き始めました。

一行が最初に辿り着いたのは、300万年前に噴火した火口跡である西皮子平です。

直径1km程の草地が広がりますが、防鹿柵が設置されているため中には入れません。

ここでは天城山の歴史や成り立ち、防鹿柵内外の植生の違いについてガイドを行いました。

写真は赤色立体地図を用いて西皮子平周辺の地形について解説を行う様子です。


東皮子平にてブナに囲まれながらお昼休憩をとった後には、パネルを用いて山の役割について講義を行いました。

挙手制で回答して答えの書かれたシールを捲っていくクイズ形式での講義であったためか、みなさま童心に返って和気藹々と楽しんでおられました。

その後も動植物の解説を交えながら、苔に覆われた溶岩の森を抜け、溶岩流上に続く歩道を下り、終点の戸塚歩道入口まで辿り着きました。

道中の美しい自然の様子は山田アクティブ・レンジャーの日記をご覧下さい。

あたり一面が苔に包まれた林内や、巨大な杉の木がそびえ立つ光景はまるで異世界です!

今回の観察会は募集定員がすぐに埋まってしまい、参加することができなかった方も多いかと思いますが、富士箱根伊豆国立公園管内では、各事務所で様々なイベントが開催されています。

他事務所のアクティブ・レンジャー日記も要チェックです!

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2019年09月18日富士山の植物(吉田ルート編)

富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒

あっという間に9月になったかと思ったら、富士山が閉山してもう1週間です。
本当に時が過ぎるのは早いです。

沼津管理官事務所の山田アクティブ・レンジャーが静岡県側の富士山の植物紹介をしていましたので、山梨側の紹介もしたいと思います。

富士山というと岩ばかりであまり植物の印象がない方も多いかと思いますが、すでに静岡県側でも紹介したように、様々な植物たちが過酷な環境で生きています。

■吉田ルート■

吉田ルートは全体の6割の登山者が登るルートです。スタート地点のスバルライン五合目の標高は2,305mです。階段を登ったりするだけで息が切れ、空気が薄いことを感じます。

~吉田ルートの植物~

【フジハタザオ】

ハタザオは地方変異が多い種だそうですが、フジハタザオは富士山の砂礫地に自生する固有種です。シーズンの最初の頃に花を咲かせています。背丈は小さいですが(10~25cm)、背丈の割に大きい花びらは登山道を歩いてもよく目立ちます。六合目~八合目でよく見かけますが、白い清楚な花がいつも疲れをいやしてくれます。富士山でしか見られないと思うと、なおさら見ると嬉しくなりますね。


【ベニイタドリ】

前回の富士宮編で紹介した「オンタデ」と同じくらい富士山でよく見かけるのが「イタドリ」です。オンタデと見た目もよく似ています。薬や食材としても利用される植物です(ただし、富士山では採取禁止です!)その中でも本変種の赤いものを「ベニイタドリ」と言いますが、風流な「メイゲツソウ」という別名もあります。
長いものでは3mに達する根を持ち、水分に乏しい荒原に適応しています。見えない地中に根を延ばして一生懸命生きていると思うと、応援したくなりますね。小さな赤い花が集まってとてもかわいらしいです。吉田ルート五合目の御中道でよく見ることができます。


【タカネバラ】

「高嶺薔薇」。高山に自生するバラです。7月下旬頃に、それほど数は多くはありませんが、五合目から六合目の間の登山道脇で見ることができます。鮮やかなピンク色をした4~5cmの花が目を引きます。園芸種の派手さはないですが、清楚で感じがとても素敵な花です。秋には赤い実をつけます。かすかな甘い匂いがしますので、見かけたら是非嗅いでみてください。

【ヤナギラン】

「柳蘭」。葉が柳に、花が蘭に似て鮮やかなことから名が来ているそうです。七合目の日ノ出館に登る階段の山側に咲いています。長い茎についた鮮やかなピンクの花が風に揺れる姿は思わず見入ってしまいます。登山シーズンの後半になると咲いてくるので、私はこの花を見ると登山シーズンの終わりが近づいてきている事と秋の訪れを感じます。


【フジアザミ】

富士山周辺に多く分布していることから、名前にフジを冠しています。夏の終わりにスバルライン沿いや砂礫地で見かけます。地域によっては根を食用にするそうです(富士山では採取しないでくださいね!)。大きな(10cmほど)の紫色の花を重そうにして下を向いている姿がとても目立ちます。ころんとして形状もかわいらしいです。私にとってはヤナギラン同様、登山シーズンの終わりを感じる植物です。


今回は須走ルート編、富士宮ルート編で紹介しなかった植物を取り上げましたが、静岡県側で紹介した花も吉田ルート側でも見ることができます。

登ることに一生懸命になってしまって、なかなか花を見る余裕はないかもしれませんが、富士登山の成功のコツの1つは「ゆっくり登ること」です。そのためにも、足元や登山道脇に目を向け、立ち止まって花を楽しむことはとてもいい方法だと思います。

今シーズンは本日で閉山ですが、来シーズン登られる方は富士山という過酷な環境に生きている植物もぜひ楽しんでいただけたら、と思います。

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2019年09月17日ウミガメの泳ぐ海 八丈島(伊豆諸島地域)

富士箱根伊豆国立公園 竹下実生

こんにちは。伊豆諸島管理官事務所の竹下です。

先日の台風15号による被害に遭われた方に、お見舞い申し上げます。

報道されているように、伊豆諸島でも大きな被害が出ています。

当事務所のある大島では、家屋損壊が多数、一部地域で停電や断水が続き、倒木や土砂崩れによる通行止めが数カ所あるような状況です。停電については、今日から大島全域で復旧したようです。

観光で伊豆諸島を訪問される予定の方は、宿泊先や訪問予定の施設が復旧しているかどうかご確認ください。

被害・復旧・支援などに関する情報を確認できる、各島の役場や観光協会のホームページのリンクを紹介します。

大島町  https://town.oshima.tokyo.jp/

利島村  http://www.toshimamura.org/tourism

神津島村 https://vill.kouzushima.tokyo.jp/

新島村  https://www.niijima.com/

式根島観光協会 https://shikinejima.tokyo/

さて、台風の襲来する前週に、八丈島へ行って参りました。

八丈島は、東京から南へ約287km、羽田空港から約55分、竹芝港から約10時間20分の場所にあり、面積は約69.11平方キロメートルと、伊豆諸島では伊豆大島の次に大きい島です。島はひょうたん型をしていて、北に八丈富士、南に三原山の二つの山がそびえています。

登龍園地から見渡せる八丈島中心部、八丈富士、八丈小島の景色

▲登龍園地からの景色。三原山中腹にある登龍峠からは、八丈島の中心部、八丈富士、八丈小島を見渡せる。

八丈島の海はとても綺麗で、シュノーケルで泳いでいける範囲でもサンゴやウミガメを見ることができます。

また、冬期にはザトウクジラも訪れます。

今回は、国立公園の海域調査のため、島の東側にある底土海水浴場へ行きました。

底土海水浴場の景色。海岸には砂浜があり、海へ入りやすい。

▲底土海水浴場。

テーブルサンゴの広がる底土海水浴場で海藻を食べるウミガメ

▲海藻を食べるアオウミガメ

テーブルサンゴの広がる底土海水浴場で泳ぐウミガメ

▲テーブルサンゴが広がる

海の透明度は高く、砂浜から数mの場所には、なんとテーブルサンゴが広がっています・・・。

サンゴの間には様々な魚、そして、ウミガメが泳いでいます・・・!!

周辺には複数頭のアオウミガメが生息しているようで、1時間程度で2回遭遇することができました。ゆったりと泳いで海藻を食べるウミガメの姿を見ていると、なんだか幸せな気持ちになります。

アオウミガメ(学名:Chelonia mydas mydas)は、環境省のレッドデータブックに絶滅危惧Ⅱ類として掲載されている種です。インド洋~太平洋、大西洋、地中海と、世界の広い範囲に分布していますが、日本は北縁の産卵海域であり、大切な餌場でもあります。

底土海水浴場では、観光客がウミガメに触れたり、ウミガメの行動を妨げたりする行為も見受けられるようです。ほどよい距離を保ち、ウミガメに出会える環境を大切にしていきたいです。

八丈島は、海だけでなく、八丈富士や三原山のトレッキングコースも魅力的です。

次回は、八丈富士山頂のトレッキングコースについて紹介したいと思います。

底土港沖から眺めた八丈富士

▲底土港沖から見た八丈富士

※八丈島へのアクセス、観光情報はこちらです。

八丈島観光協会 http://www.hachijo.gr.jp/

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2019年09月13日【報告】子どもパークレンジャー第3弾!「第4回箱根町子ども体験教室(自然体験)」(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎

こんにちは。富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。

先日からご報告しております当事務所が行っております「子どもパークレンジャー」のラストを飾る第3弾をご報告いたします。

今回の第3弾「第4回箱根町子ども体験教室(自然体験)」では、箱根町教育委員会生涯学習課が箱根町内の小学生を対象とした夏休みのイベント企画の一つで、子どもパークレンジャー事業とタイアップして活動したものです。

 テーマは「富士箱根伊豆国立公園の成り立ちを知ろう!」です。

第1回目や第2回目は火山噴火の仕組みやその歴史、箱根地域の動植物について学びました。

第3回目の今回は、富士箱根伊豆国立公園の成り立ちを地図で地形を学び、岩石を使った実験で地質や歴史を学びました。

【(左)巨大な赤色立体地図/(右)箱根みいつけた!】

神奈川県と静岡県が描かれた赤色立体地図。陸地の他にも海の地形が書かれていて、富士山、箱根、伊豆半島、伊豆諸島が海底で一つの山のような尾根で繋がっている事や南海トラフ、相模トラフの場所なども教えてくださいました。

【(左)国立公園の紹介/(右)箱根地域のシカ問題の紹介】

岩田 国立公園管理官より、国立公園についてどの場所が特別保護地区なのか、箱根のシカ問題について箱根ビジターセンターの展示を使って教えていただきました。

 地元の子ども達なので、ジオラマを使うことで実際に見える山の形で金時山の特別保護地区や仙石原湿原の特別保護地区の場所を理解していただく事が出来ました。

【地質パズルから学ぶ地層年齢】

国立公園内の富士山、箱根、伊豆はそれぞれ誕生の仕方が異なるため、地質パズルを使ってどの地域の地層が古いかパズルに当てはめながら学びました。

ちなみに同国立公園内一番古いのは太平洋沖で誕生した伊豆半島地域。伊豆半島が地殻変動によって本州と合体したときに箱根火山が誕生し、その後に富士山が噴火し完成しました。意外にも南のほうが地質が古いんですね。

【(左)岩石調べ/(中央)標本板作り/(左)岩石標本板】

 富士山は玄武岩、箱根は安山岩、伊豆半島は凝灰岩とそれぞれの地域では特長のある岩石が見ることが出来ます。その岩石を学ぶため、その岩石の特長にあった実験を行い、岩石を見分けました。

 また、箱根のお隣にある丹沢山地は伊豆半島と同じく太平洋沖で誕生したことや、同県内にあるため、その岩石(石灰岩)を一緒に調べることになりました。

 実験では鉄分を多く含む玄武岩、安山岩を調べるため、磁石がくっつくかの実験(安山岩、玄武岩はこれで分かる)、塩酸を垂らして反応するかの実験(石灰岩はシュワシュワと音を立てて溶ける)をしました。

 分類できたところで、岩石をハンマーで細かく砕き、板に貼り付けて「岩石標本板」を作成しました。これで夏休みの宿題は完成かな?

本イベントはこれにて終了。今年も子どもパークレンジャーを通じて、箱根ジオについて、国立公園について少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

 来年も開催を検討中!ぜひご参加ください!

〈今回のイチオシ写真〉

【雨宿り・・・?】

箱根ビジターセンター周辺の園地で出会ったアカガエル。実際雨は降っておらず「蛇に睨まれた蛙」の如く、自分のカメラに睨まれて身動き出来ない様子でした。怖がらせてごめんね。

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2019年09月08日富士山から見える雲海

富士箱根伊豆国立公園 箱根 池田興平

こんにちは!富士山の開山シーズンは残り数日となりました、少し寂しいですね。

今年度の富士山の開山シーズン中に私が登った中で、感動した富士山の風景を共有できればと思います。

私は富士山から見る雲海の風景がとても好きなのですが、富士山は日本で一番標高が高い山ということで条件さえ揃えばとても素晴らしい雲海に出会えることができます。

雲海とは、高い場所から見下ろしたときに層状の雲が海のように広がって見えることを指します。雲の種類は様々ありますが、最も低い位置にできる雲は層雲や層積雲です。これらの雲は約2000m以下で発生するので、一応の目安で各ルートの吉田六合目(2,390m)、須走新六合目(2,420m)、富士宮口五合目(2,380m)、御殿場新六合目(2,590m)などの標高からとても綺麗に雲海を見る事ができます。

私が今年度の富士登山で目にした美しい雲海の一つ目ですが、吉田ルートの五合目から六合目にかけての登山道を歩いていて東からの朝日がグングン上がる時間帯に雲海を見たときでした。その瞬間を人も背景の一部の構図として写真を撮ると朝日の逆光で人の影がくっきりと表れるのでとても絵になりました。

【8月17日5時28分 吉田ルート六合目付近】

吉田ルートの本七合目にある鳥居ですが、雲海が見られる条件で撮影をすると鳥居と雲海のセットが美しく映えて幻想的な写真を撮ることができました。

【8月17日8時54分 吉田ルート本七合目】

最後に下りの八合目ですが、斜面を見下ろす様な視点になるため、登山道を見通した先に雲海が広がっている景色は、陸から見える広大な雲の海そのものだなと感じました。

【8月17日12時48分 吉田ルート下山道八合目】

いかがだったでしょうか。素敵な雲海に出会えるタイミングを予想するには、天気予報で前日に濃霧注意報と発表されていれば雲海を見られる可能性が高いです。ぜひ富士山に行く際の参考にしてみてください。

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2019年09月06日【報告】子どもパークレンジャー第2弾!「箱根ジオパーク2019 国立公園を守る子どもパークレンジャーになろう!」(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎

こんにちは。富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。

今年は残暑が少なく、気温が20℃を下回る日もあります。涼しいを通り越して、肌寒いです・・・。

さて、★2019年08月01日 【報告】子どもパークレンジャー第1弾!「サマースクール」(箱根地域)でもご報告しました毎年当事務所では「子どもパークレンジャー」のイベントを無事、全3回を終えることが出来ました!

今回は第2弾「箱根ジオパーク2019 国立公園を守る子どもパークレンジャーになろう!」をご紹介します。

このイベントは環境省主催で「箱根ジオパーク」「国立公園」「箱根の自然」の3つのテーマで、それぞれの講師の方に箱根の自然や火山、国立公園について学び、体験する終日イベントです。

〈箱根火山と水槽実験(講師:箱根町企画課 箱根ジオパーク推進室 笠間 先生)〉

箱根火山の歴史や現在の火山活動の様子をご紹介していただき、野外で実際に火山が噴火するとどのような現象が起きるのか、水槽を使った疑似噴火実験をしていただきました。

【箱根火山の特長をご説明してくださる笠間先生】

【水槽実験の様子】

 水槽に濃い食塩水と真水を交わらないように入れて、2層にすることで、水槽内に大気層(塩水:地上の空気、真水は大気圏などの高層域)を再現。

 そこに食塩水より比重が軽い液体(チョーク1本分を溶いた液体:緑色)と比重の重い液体(チョーク3本分の液体:黄色)をチューブへ流し込むと、実際に火山が噴火したような現象が起きました。

 緑色の液体は火山灰を表現しており、比重が軽いため真水(高層域)まで到達するのだそうです。

 一方、黄色の液体は火砕流を表現しており、高温の溶岩片、火山灰、火山ガスなどが一体となるため、空気より重く、高速で地表を這うように降りてくるのだそうです。

 雲仙普賢岳の噴火(1991年)では実際にこの現象が起き、1000℃以上にもなる火砕流が時速100kmで数十km先まで噴火口から下り、周囲の建物が倒壊し、森林地帯は火災が発生したそうです。

 準備が大変でしたが、それ以上に分かりやすい実験に参加した子ども達もとても驚いたと共に噴火の違いとその恐ろしさを体験できる良い実験でした。

〈噴火実験と岩石観察(講師:NPO法人ホールアース研究所 津田氏)〉

【コーラで噴火実験(左)/岩石観察(右)】

毎度おなじみになってきましたね。コーラをマグマに見立て、振る(地震が起きる)とどんなふうに中身が噴出するのか実験し、噴火のメカニズムを学びます。どうしても良い写真を撮りたい自分は、この位置に立つことによって素敵な写真を撮影することが出来ましたが、その代償に身体中ベトベトです・・・笑。

岩石観察では、金太郎岩周辺を訪れ、火山岩の一種である安山岩に含まれる鉄分を紹介するため、磁石がくっつくか実験しました。

〈箱根の自然の紹介(講師:箱根地区パークボランティア(以下:PV))〉

【観察会の様子(左)/ソーセージみたいな種子が生るツチアケビの観察(右)】

 今回は植物に詳しいPVに対応していただき、カルデラ地形と箱根特有の多湿による植生について、多雨地域の屋久島と似た植物が生息するなどをお話ししていただきました。

〈国立公園の紹介(講師:環境省富士箱根伊豆国立公園管理事務所 岩田 国立公園管理官)〉

当所の岩田 国立公園管理官より富士箱根伊豆国立公園の説明や箱根地域の特長、保全地域やその取り組みについてお話ししていただきました。

他にも火山灰の観察や、岩を割る際に穴を開けた「矢穴跡」の観察、流山の紹介、マグマケーキ作りなど内容が盛りだくさんで紹介しきれませんが、各方面で活躍される方々より貴重なお話や実験をしていただき、参加した子ども達にも良い刺激になったのではと思っております。

 次回の日記では子どもパークレンジャー第3弾をお知らせします!

〈今回のイチオシ写真〉

【秋雲のぞむ鷹巣山】

明日開催予定の自然観察会「初秋の湯坂路と石仏石塔群を訪ねて」のコース下見会での風景。

当日も晴れますように。

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2019年09月05日8月末の富士山の様子

富士箱根伊豆国立公園 沼津 松岡宏明

皆さまこんにちは!

沼津管理官事務所の松岡宏明でございます。

 富士山閉山も間近に迫ってきました(閉山は9月10日です)。開山からあっという間に二ヶ月が過ぎ去っていった気がします。

 さて、先週8月29日に富士山巡視へ行ってきました。富士宮口五合目に到着し、山頂を見上げてみると、その付近の雲がとても早く移動していて、猛烈な強風が山頂付近に吹き荒れていることを示唆していました。五合目から標高を上げるにつれて、風速もどんどん上がり、八合目に差し掛かる頃には立っているのがやっとなほどの強風に加えて、スコリアが飛ばされてバチバチと身体にめがけて飛んでくるような状況でした。さらに、上空には異様な形をした雲が現れていました。(どうやらこの雲は吊るし雲というものらしいです)

▲上空に現れた異様な形をした雲(吊るし雲)

 状況をみて、身の危険を感じたので、山頂までは行かずに八合目で引き返して、下山しました。

 皆さんもご存知だと思いますが、富士山は標高3776mの日本で一番高い山です。そして、独立峰なので遠方の気象状況の影響も受けやすいことから、非常に雲の動きや天候等が非常に読みづらい場所です。なので、事前準備や下調べはもちろん必要ですが、現場での咄嗟の判断も必要になってきます。

 また、登山等で自然の中に入っていくことは、とても楽しいことですが、リスクがあるということも忘れてはいけません。リスクを感じたら、引き返す・下山するという選択肢もあることを認識しておいてください。

 登山時には風に吹かれてしんどい思いをしましたが、下山時に通った宝永山の風景がとても綺麗で癒されました。

▲宝永山の風景

 このように、富士山の側火山や山麓にも素晴らしい風景があるので、無理に登頂しようとはせずに、登山途中で身の危険を感じたら計画を変更してみてください。

 閉山まであと少しとなりました。最後まで登山者の皆さまが無事に下山出来ることを願っております。

沼津管理官事務所 松岡宏明(まつおか・ひろあき)

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2019年08月30日【報告】富士山五合目の自然を満喫しました

富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒

12日に山の日の記念全国大会の甲府市での開催を記念して、自然観察会を実施しました。

当日は山梨県立富士山科学研究所の中野 隆志先生(植物)、吉本 充弘先生(火山、防災)のお二方をお招きして、吉田ルートの五合目にある御中道を、30人の参加者の皆さんと歩きました。

麓からは富士山が見えていたので、ワクワクしながらバスで上がっていくと、、、、、、雲の中。
本当に富士山の天気は分かりません。

当日のスタート地点であるスバルライン五合目は、観光客や下山客、これから登ろうとしている登山客でまさにごった返していました。

国立公園と聞くと「手つかずの自然」をイメージする方が多いかと思いますが、ここもれっきとした国立公園内です。
(よく見ると、建物や看板、自動販売機は茶色で統一されているのがわかるかと思います。)


まずは、五合目にある小御嶽神社に行き、富士山の誕生について解説してもらいます。

スバルライン五合目が、他の3登山道の五合目と比べ、いくつもの大きな建物、駐車場を作ることができたのは、富士山の成り立ちに関係しているんです。

富士山は1つの山としてできたわけではなく、下にもっと以前の火山活動で誕生した複数の山が隠れています。それらの火山を覆うように「新富士火山」が現在の富士山を形作っているそうです。
スバルライン五合目の広い平らな部分は、小御岳火山という火山が現在の富士山の横腹に頭を出している部分なんだそうです。

【山中湖からみた富士山】

普段あまり火山であることを意識しませんが、何十万年も前からの様々な火山活動により、大きく形を変えて来た中(現在進行中ですね)で、均整の取れた美しい富士山を目にしていると思うと、今この時代に富士山と出会えていることをありがたく感じます。


御中道に入ると五合目の喧騒が嘘のようです。歩き始めて早々に樹の上に気になるものが・・・・

皆さんの視線の先にあるのは、、、、、、、、、、、、、

サルオガセでした。樹にまとわりつく姿は少し不気味にも見えますが、樹の栄養を奪っているわけではなく、光合成をおこないながら、空気中の水蒸気から水分を得ています。富士山ではそれほど多くは見かけませんが、霧がよく発生する五合目付近ということで、納得です。

進んでいくと、通常この時期だともう終わっているハクサンシャクナゲが、今年は開花が遅れていたお陰で、お出迎えしてくれました。

【御中道を華やかに彩るハクサンシャクナゲ】

自分だけで歩いていたら何気なく通り過ぎてしまいそうな場所でも、両先生からどんどんと
「へ~!」
となる説明が飛び出してきます。

皆さん熱心に写真を撮ったり、メモをとったりしながら聴いていました。

【冬の雪の重みで大きく湾曲したダケカンバ】

【南側(山側)が年齢が太い落葉広葉樹(左)と北側(谷側)が太い針葉樹(右)の切り株】

樹の種類によって成長の仕方も違うそうで、切り株を見るとわかってしまうのです。

落葉広葉樹は、自分の体を山側の葉で支えるために南側(山側)の年輪が太くなっていて、針葉樹は根元で体を支えるため、北側(谷側)の年輪が太くなってるそうです。

実際、すぐ隣にある切り株同士なのに違っていて、驚きました。

【2018年11月3日撮影】

この大きな窪みは火口です。このような火口が列になっている箇所(火口列)が数か所あります。
何気なく見ているだけではまさか火口だとは思わないですよね。先生のお話しを聞きながら、改めて富士山が火山であることを実感しました。

上の写真では西側(写真の右側)だけにしか植物が生えていないですよね。これにも理由があるんです!
知りたい方は、富士山科学研究所でも年に数回五合目観察会を行っていますので(今年度分は終了しています)、ぜひ参加してみてください。

あいにくのお天気で富士山頂も麓も見ることができませんでしたが、富士山が火山であること、独立峰であること、地質、標高など様々な要因が重なってこの美しい景色を一つ一つ形作ってくることを再認識する1日になりました。

来年の山の日イベントもお楽しみに!

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2019年08月26日真夏の三原山の景色 大島(伊豆諸島地域)

富士箱根伊豆国立公園 竹下実生

皆さまこんにちは。伊豆諸島ARの竹下です。

あっという間に8月も終わりに近づいてきましたね。

今回は、真夏の三原山の景色を紹介したいと思います。

真夏の大島は、さぞ天気が良くて暑かろう・・・とお思いかもしれませんが、

海沿いは晴れていても、三原山の山頂付近には雲がかかっていることが多いのです。

海から吹き上げる風が湿気を運び、霧や雲になって溜まるのですね。

海水浴客でにぎわう海沿いは青空でも、三原山は雲の中。

▲海水浴客でにぎわう海沿いは青空でも、三原山は雲の中

※濃霧の中、お鉢巡りや砂漠を歩くことは大変危険ですので天候によってはお止めください。

霧の晴れ間にカルデラ内を歩くと、サクユリの白い花を目にすることが出来ます。

皆さんは、「サクユリ」を知っていますか?

サクユリ(Lilium auratum var. platyphyllum)は、本州に分布するヤマユリ(Lilium auratum)の変種であり、伊豆諸島の固有種です。

ヤマユリと比べて、葉の幅が広く、葉脈の本数が約7本(ヤマユリは約5本)あるのが特徴です。花びらには赤い斑点が少なく、花の中が真っ黄色のものもあります。

三原山では、7月後半から8月にかけて開花します。

サクユリの花。花びらに赤い斑点が多いもの。

▲サクユリの花(赤い斑点が多いもの)

サクユリの花。花びらに赤い斑点の少ないもの。

▲サクユリの花(赤い斑点が少ないもの)

サクユリの花。花びらに赤い斑点が無いもの。

▲サクユリの花(赤い斑点が無いもの)

東京都のレッドリストには、絶滅危惧Ⅱ類(VU)として掲載されています。

絶滅危惧Ⅱ類というのは、

現在の状況に追い込んだ要因がこのまま続くと、近い将来、野生での存続が難しくなることが確実だとされている種、ということです。

大島のサクユリの場合は、園芸や販売目的の盗掘、外来生物キョンによる食害、ウイルスなどが要因になっていると考えられています。

カルデラ内に点々と咲く、サクユリの白い花

▲サクユリが点々と咲く景色

サクユリが点々と咲く景色を今後も楽しむためには、今、何が出来るのでしょうか。

皆さんも、サクユリを見に行くことがあったら、手折ったりせずに見守ってくださいね。

もし盗掘を見かけたら、伊豆諸島管理官事務所に連絡していただけると幸いです。

カルデラ内に咲く、ハマナデシコの花。

▲ハマナデシコ (Dianthus japonicus)

8月の三原山表砂漠には、ハマナデシコも咲いています。

海岸沿いに生育する植物ですが、海から吹き上げる風に乗って、種が飛んできたようです。

三原山山頂付近からカルデラの縁を望む。(カルデラの縁では、海から吹き上げる風によって雲が作られている)

▲三原山山頂付近からカルデラの縁を望む(カルデラの縁では、海から上がってきた風によって雲が作られている。)

真夏は雲や霧の多い三原山ですが、これからの季節は空気が澄んできて、景色も良くなってくるはずです。

皆さんも、景色や地形、植物を楽しみながら、三原山を歩いてみませんか?

○島へのアクセス・島内の観光情報はこちら

伊豆大島ナビ https://oshima-navi.com/

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